福袋、買ってから見るか? 買う前にちょっと覗くか?
月次レポート研究所です。研究所メンバーの吉田さんの記事です。
アクティブファンドの月次レポートにおいて、投資先をどこまで開示、報告するのか、という問題です。
そこで思い起こされたのが「福袋」。多くの場合、買ってみるまでその中身が分からない。買ってみて袋を開けたら中身が分かる。こんな感じだと思います。
「福袋」って、お正月とか年に一、二度、あるいは衝動的に買うものでしょう。ですから、「福袋」と、毎月買い足していく、長ーいお付き合いになる(かもしれない)アクティブファンドとでは、その性質は随分違うものと思います。
ただ、アクティブファンドの場合、ほとんどの場合、その中に何が入っているのか全てがわかりません。「福袋」との大きな違いがあります、それは、ファンドを買った後でさえも中身の全てがタイムリーには分からない、ってことです。
僕たち月次レポート研究所で取り上げている、ファンドの月次レポート。ほぼ全てのレポートは、ファンドを持っている(買っている)人だけではなくファンドを持っていない人も閲覧できます。
まだ買っていない人に「中身の一部はこんな感じですよ」というのは、「福袋」もアクティブファンドも同じ。しかし、「福袋」は買って袋を開けたら中身が分かるのですが、アクティブファンドは買ったその後でも中身の全てを知ることができないのが普通です。アクティブファンドの場合、年に1回以上決算があります。その決算期末ごとに運用報告書(全体版)が決算日から約2ヶ月経ったところで閲覧できるようになります。運用報告書(全体版)には、投資先の全てが掲載されています。したがって、この運用報告書(全体版)をもってファンドの中身を全て確認することができるわけです。ただし、運用報告書(全体版)に掲載されている投資先の一覧は決算日当日、その一日の”スナップショット”です。実際にはその中身は営業日ごとに変化しています。が、その頻度で中身を明らかにしているアクティブファンドは知りません(ちなみに、ETFの場合、毎営業日? ポートフォリオを示しているものもあるようです)。
毎営業日はさすがに、ねぇ、そこまでは。ということになりますよね(それを晒す、発信するというのは一つのアイデアだとは思ったりします)。
毎日はアレでも月に一度なら、、、
ほぼ全てのアクティブファンドは月次レポートを発信しているはずです。ほとんどは直近の月末時点の組入比率上位10社を紹介しています(冒頭の吉田さんとの対話で取り上げたファンドの場合、上位5社ですが、これはファンド全体の投資先が14社ということも大きいかと思います)。
なんで上位10社なのか、5社なのか、その理由、ファンドの考え方が示されていると面白いかもしれない、って思いますけど、わざわざ説明したりしないかな。
毎月末の投資先を全て開示しているファンド
毎月末の投資先を全て、月次レポートで開示しているファンドもあります。
たとえば、このファンドです。
https://www.am.mufg.jp/pdf/geppou/119901/119901_202207.pdf
この月次レポートは、ファンドを持っていない人でも閲覧することが出来ます。「福袋」の喩えを使うと、買う前に中身が分かっている、に近い状態だと言えます(このレポートが開示されたのは8月の前半ですから、そのタイミングでは中身が変わっています。投資先の入替、追加、異動も十分にあり得ます)。
この「35ファンド」。毎月末、全部の中身が報告されている姿勢、行動そのものは素晴らしい、拍手!って思うのですが、その一方で、このファンドを買ってみたいか、というと、うーん、、、というのが率直なところです(個人の感想です)。中身の多く(もしくはその全て)を知りたい、という興味、関心はあるものの、それそのものが「このファンドの仲間になりたい!」って思わせる要素のほんの一部でしかない(個人の感想です)。
「35ファンド」の月次レポートには投資先各社についてコメントが付されています。たとえば・・・
という具合に、ファンドの期待する要素がいくつか記載されており、事実を淡々と述べているファンドに比べれば「意志」が感じられます。でも、投資先をそれなりに絞り込んでいるわけですから、もっと暑苦しく一つ、一つの会社について語れるんじゃない?って思ったりするわけです。
投資決定に至るまで、何を調べ、どんな仮説を立てて何を検証してその判断に至ったのか、それが知りたい。つまり、「仲間になりたい!」って僕に思わせるのは、投資先がどこなのか、ってことよりも、どうしてどうやってその投資先を選んだのよ、何に注視して観察しているのよ、という「プロセス」にあるんですね。
投資先の一部(場合によってはかなりの部分)がタイムリーに分からないとしても構わない。買ってもその中身の一部が分からなくたってOK。
ファンドの信託報酬。何に対する対価なんだろうか。
僕たちがアクティブファンドを買うとそのお金と交換に手に入れるのは、煎じ詰めると投資先の会社の株式等です。それに加えて、ファンドを運営してくださっている皆さん、投信会社や販売会社、信託銀行への報酬も支払っています。ファンド運営の関係者への報酬は、「プロセス」に対する対価。そう考えています。
では「プロセス」の中で最も大事なことは何でしょう。どの会社に投資するのか、どの会社に投資しないのか。投資する会社には資産のどのくらいを配分するのか。それを判断する「プロセス」です。調査や分析、メンバーの洞察をぶつけあって決断する、その「プロセス」が最も大事だと思います。そこにアクティブファンドの「価値」が存在しているのだと思っています。どこの会社にどれだけ投資するか、いくら配分するか、は確かに「成果物」でそれこそが基準価額を決めているのですが、中身、ここでいう「成果物」よりも、それがつくられる「プロセス」が、対価・信託報酬の納得性につながっています(個人の感想です)。
スパークスさんのファンド、とりわけ「厳選投資」ですね、このファンドは非常にしっかりと「プロセス」を発信してくれている代表格です。
月次レポート の内容、これ、ファンドを持っていない人でも読めるんです。見方によっては「大盤振る舞い」「大サービス」だよなあ、と感じる一方、こうした中身の濃い月次レポートを発信することは、ファンドの投資先を全部開示することよりも遥かに明瞭にファンドの姿、哲学を示しているようにも思えます(個人の感想です)。
同じく「プロセス」を非常にしっかりと発信している代表格の一つ、おおぶねシリーズ。おおぶねシリーズは今年に入って、月次レポートのメインディッシュを受益者(ファンドを保有している人たち)限定のWebページで更新されるようになりました。
時間をかけた調査、分析やさまざまな角度からの検討で投資判断する「プロセス」が、アクティブファンドの信託報酬の対象であるとすれば、NVICさんの考え方、姿勢も理解できます。
それ=「プロセス」について、ほとんどのアクティブファンドが、受益者でなくても読むことのできる月次レポートでロクに説明しないのも、もしかしたら筋が通っているのかもしれません。お客さんでもない人になんで「プロセス」を説明する必要ある? 投資先の上位10社を見て中身を想像してくださいよ、って。
ただ、その場合、問題となるのは、月次レポートで「プロセス」を何も語らないその種のファンドを持っている人、そんなファンドの受益者です。ファンドを買っていても「プロセス」はロクに説明されない、月次で開示される投資先・業種は上位10社、10業種まで。
そうそう、よく月次レポートで「運用の状況」について書かれていますが、注意が必要だと思います。「運用の状況」には2つの要素が含まれていることがほとんどです。一つは、組入資産の時価の増減、A社の株価が騰って、B社は下がった、とかです。もう一つは、C社を買って、D社を売りました、という報告です。このうち、前者は「プロセス」と呼べるかいな?ということです。その期間中に対象資産の売買もある場合は別でしょうけど、それが無ければ、”騰った、下がった”は能動的な行動、行為を示したものではなく市場の評価、周りの変化に過ぎないように思われます。
月次レポートで何が報告されるべきか、語られるべきなのか「WHAT」の話になります。これは次回以降の #月次レポート研究所のポッドキャスト で実際の月次レポートを読みながら吉田さんとお話してみようと考えています。お楽しみに。
福袋って買いますか?
実は、僕自身はあんまり興味がなくて、買いません。というのも、「こんな商品が入っています」的な紹介を見ても、売れ残りを詰め合わせただけじゃないのかしら、という疑問。そして「これは、いらんわあ」という商品が混じっているかもしれないし、ということで、よほどのことが無いと買わないです。
中身を何にするのか、袋に何を入れるのか、吟味に吟味を重ねた。
そんな福袋ってあるのかしら。
その吟味の中身、「プロセス」がしっかりと語られていて、それに関心が向くような福袋があったら、買うかもしれませんね。やっぱり、中身が分かる、分からないよりも「プロセス」かな、って思います。
ここまで記事をつくってみて「それかも?」と思ったサービスが思い浮かびました。
選書サービスです。
アクティブファンドは「福袋」ではなく「選書サービス」に近いのかもしれない、そんなところにたどり着きました笑
月次レポート研究所、研究テーマがまだまだたっぷりです。
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