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鋼のお面

 私は、悩みや本音、心の奥底にある扉に誰にも触れられたくない。秘密主義と言うと響きはいいが,これは臆病な私なりの結界である。

おそらく多くの人が心の奥に隠してあるものを暴かれたくないと考えている。しかし、次第にそれを親密になった者に少しずつ見せてゆく。そしてそれらを共有できる仲になると深い絆ができる。絆は人と人を線で結んでゆくようなものと思ってる。

しかし、私は誰かと深い絆ができた人はいない。心の底まで曝け出すことができないでいる。だからと言ってずーっと孤独な学生生活を過ごしてきたわけではない。中高と少ないなりに休日に遊んだりする友達はいた。けど,結界を壊すのが怖くてあと一歩及ばなかった。舐められたり、自分が不利になる気がするからだ。

そもそも自分に自信があれば、顔に傷がつかない自信があれば鋼のお面なんかつけてない。赤ん坊の時はついていなかった。幼稚園の頃はお転婆で快活でお遊戯会の主役をかってでるタイプだった。けど、小学校に入ってからは苦難の連続で,個性より協調性が求められる学校生活に馴染めず大変だった。足の速さと学力で評価され始め、両方できない私はすっかり根暗になってしまった。中学は敢えて遠い学校にして心機一転友達を作ろうとするも何度も裏切られたり、私の好きな男の子が好きだった子にない噂を流されたりして少しずつがお面ができあがってしまった。

高校ではお面が頑丈に仕上がっていたため、人から何を言われようとびくともしなかった。けどお面には弱点がある。お面を着けると外との関わりが減る(距離がおける)=自分1人で解決しなくてはならない。人の助けがないので年に数回メンタルブレイクが起こり、私の場合家族にむしゃくしゃした気持ちをぶち撒け家族にも本音や悩みについて打ち明けられなかった。母は心配していたが半ば成長してしまった私を見てこの子の人生と割り切っていた。この時代は人間関係のいざこざに巻きこまれなかったが、心はボロボロで1人で傷を舐めることしかできなかった。

流石にこのままでは危ないと思い大学生を境に一度取ってみようと試みた。しかし,いざ外すそうとすると長年着けていたせいか、顔にぴったりくっついて取れなかった。

いろんなことを実践した結果、少しずつ剥がれてきた。1番効果的だったことは、荒療治だったが結界の濃度を下げることだった。

ある程度親しくなった友達に少しずつ本音や悩み、実はこんな人間なんだよってことを伝えていくこと。(あくまで結界を緩めるのは信頼できると思った者だけでその他は通常通りでいい。)そのため伝える機会を作ることが大事だ。ご飯に誘ってみたり過ごす時間を増やし少しずつ本音を話してみる。

簡単じゃんと思うかもしれないけどなかなか難しい。どう思われるか考えてしまうからだ。ポイントは焦らず少しずつという点。一気に結界を弱めて自分の闇を明かすと引かれてしまうからだ。

かれこれもう2年が経つ。大学生活中盤を超えた今も取り除けていない。けどだいぶ剥がれてきていると思う。高校生の時は本音を語れず周りに優しい人たちがいたにも関わらず自分で何とかしようともがいていたが,今は少し本音を語れる人ができて病む回数が格段に減った。

仮面は必ずしも悪いものではない。社会の荒波に揉まれる際自分の顔を守ってくれる。大切なのは外すタイミング。



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