新田にぶっ刺さりエンタメ (2023)

師走ですね!
みなさん、走ってますか?

今回は新田の振り返り記事です。小説に限らず、アニメや映画にも手を伸ばして一気にエンタメを紹介していきます。とはいえ良かったものを全て紹介するのは無理なので、もゅっと絞ります。

まあ今年はあまりエンタメに触れられませんでしたけどね。小説は50冊も読めていません。アニメは色々と手を出しましたが、完走できたのは現時点で4~5本です。映画に至っては全然観ていませんね。アニメ映画を除けば金ローのワイスピしか観ていない。

~完~

「じゃあなんの記事なんだよ」や「作家としてインプット不足だろ」と心ない言葉が飛んできそうですが「そんなに言うなら新田を養って時間を作ってくれ」と声を荒げたい。朝剃った髭が夕方には生えてくる成人男性を養う覚悟があるんですか。覚悟が無いくせに武器を向けるな。

※相互フォロワーの書籍は紹介しません。まだ読めていないものが沢山ありますし、なかよしバイアス(かわいい)が掛かっちゃいそうだからです。また、独断と偏見を交えつつ若干のネタバレもしちゃうので、気になる作品がある場合は注意してください。

①書籍

成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈

今年は成瀬を抜きに語れねえ。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

まず凄いのは冒頭。小説を書く上で最初の一行は誰しもが全力投球すると思いますが、これは個人的に完璧。西武に夏を捧げるなんて意味がわからないから。しかも西武ライオンズではなく、西部大津店という名のデパートです。もしかすると関西圏にお住まいの方々は、西武大津店が四十四年間の歴史に幕を下ろすニュースくらいは見かけたかもしれません。が、それにしたって攻めの姿勢が強すぎる。大事な冒頭にいきなり滋賀を置ける胆力はヤバい。

他にも西川貴教やら架空のローカル番組、イオンモール草津などの滋賀要素がこれでもかと押し寄せてくる。琵琶湖から水を貰っている立場で言うのもなんですが、人生において滋賀を摂取する機会なんてあまり無いのでビックリしますよね。ここまで一気に浴びると滋賀のアナフィラキシーショックが出るのではと不安になる。

それでもこの書籍が10万部以上売れた理由は至極単純、バッッッチクソに面白い。これはローカル色が随所で利いているからだと思います。

主人公の成瀬がまとう強烈な個性は、ともすれば「こんな奴いねえよ」と興ざめされる可能性がある味付けです。貴重な夏休みを西武大津店に捧げるのもそうだし、狂言回しの島崎が語る成瀬のエピソードも現実離れしている。話し方もなんだか堅苦しい。そもそも成瀬が多才ゆえに孤立するタイプなので、キャラクター造形からして読者との距離が遠いんですよね。ライトノベル~キャラ文芸あたりのジャンルだと珍しくないですが、文芸ではあまり見かけないタイプだと思います。

しかし、この物語の舞台は滋賀。西武大津店や平和堂、西川貴教などの滋賀色が強い場所や単語を忍ばせることで、どこか作り物めいた成瀬のキャラクターが一気に現実味を帯びてきます。

もし舞台が架空の都市で、登場するデパートが『西武大津店』ではなく『横島屋』のような存在しない屋号だった場合、どこまでいっても成瀬はフィクションの中で生きるキャラクターでしかありません。

でも、実在する地名や単語でディテールを細かく補強してあげれば、読者と物語の距離は近くなります。それも大都市ではなく地方都市なのが妙にリアル。読み進めるにつれ「滋賀には成瀬みたいな女の子がいたのかもしれない」と親近感が芽生えてきます。

つまりこの物語は、冒頭の「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」という成瀬の台詞だけで、舞台の現実性と成瀬の虚構性が絶妙なバランスで溢れ出しているんですよね。西武大津店は実在しましたが、そこに夏を捧げた中学二年生なんて実在しないはずなので。

このあたりのバランスは森見登美彦先生や万城目学先生の作品に通ずるものがあると思いまが、なんでもアリの京都より滋賀の方がより庶民的。だからこそ成瀬のキャラクターが際立ち、物語終盤に垣間見せる等身大の人間臭さも相まって、広く愛される主人公になったのだと思います。狂言回しである島崎もまた庶民的でいい味を出しています。

夏そのものが希薄になったコロナ禍。この青春に甘酸っぱさなんて無いけれど、西部大津店の前で中継に映り続ける成瀬と島崎の夏はめちゃくちゃ輝いていました。

収録された話はぜんぶ面白かったですし、来年には続編も出るみたいなので、未読の方は是非とも読んでみてください!

 八月の御所グラウンド/万城目学

新田は万城目学先生と森見登美彦先生の京都大学出身コンビが大好きなのですが、なんと前述した『成瀬は天下を取りにいく』の宮島未奈先生も京都大学出身らしく、とんでもねえなと震え上がりました。文章を少し読んだだけで一生追いかけたいと思える作家、あまり居ないんですけどね。

そんな話はさておき、今作は京都を舞台にした物語がふたつ収録されています。個人的には表題作よりも『十二月の都大路上下ル』が好きでした。超絶方向音痴の駅伝ランナーという人物設定だけでもそそられますよね。

万城目学先生の作品は壮大な法螺話を展開するトンチキエンタメのイメージが強いですが、今作は優しく、それでいて泣ける物語。話の盛り上げ方を熟知されているからこそ『ここは抑えても成立する』というバランスも把握されているのでしょう。

また、今作は過去と現在が交錯する場面があるのですが、京都は彼岸と此岸の境界線が曖昧というか、すぐそばに違う世界があります。冥土への道とされる六道の辻だったり、小野篁が地獄へ行くために使っていた井戸がある六道珍皇寺だったり、そういった生命の境界線が住宅地にいきなり現れる。だからこそ、人智を超えた存在が起こすちょっとした奇跡も受け入れやすく感じる土地ですよね。新田もよく利用している要素です。先人が築き上げた京都のイメージ、マジでありがとう。

あと『べろべろばあ』が出てくるのもファンには嬉しいサプライズでした。

直木賞に選ばれてほしい!

真夜中のたずねびと/恒川光太郎

美しさの定義は人それぞれなので、論じるつもりは無いのですが、恒川光太郎先生は美しさの境地に立つ作家だと思っています。

とにかく無駄がない。過剰な装飾がない。それどころか、小説を書く上で誰もが目にしたであろう『文末を~した。~した。で続けないというアドバイスを嘲笑うような『~した。』の嵐なのに、決して単調ではない。むしろ奥行きに満ち溢れている。平易な言葉選びと淡白な文体でこの味を出す方法が新田にはわからない。そもそも世界を見るフィルターが違う。

そんな恒川光太郎先生が書く世界もまた、新田を逆さに振っても出てこないものばかり。今までの作品は幻想小説としての趣が強かったのですが『真夜中のたずねびと』はぐっと世界が身近になりました。だからこそ、よりフィルターの違いが際立つんですよ。現実世界を舞台にしているのに、なぜこんなにも御伽噺のようになるのか。なかでも一編目の『ずっと昔、あなたと二人で』がとんでもなく良かった。

空き家を渡り歩いて生活していた震災孤児のアキが、とある老婆の元で暮らす話なんですけど、老婆の過去と正体が明かされるにつれて得体の知れない仄暗さに包みこまれていく。切なさとやるせなさが漂う。ただ、アキの成長記録でもあるのでネガティブ一辺倒な読み味ではありません。

……いや、ダメだ。恒川光太郎先生の魅力は語れば語るほど薄まってしまう。新田がそれっぽい単語を並べても何の意味もない。ダサい。無力。しゃしゃんな。髭でも剃ってろ。

ちなみに他の恒川作品だと『秋の牢獄』に収録されている『神家没落』や、『竜が最後に帰る場所』の『夜行の冬』あたりがめちゃくちゃ好きです。

名場面でわかる 刺さる小説の技術/三宅香帆

世間一般で「傑作」と賞賛されている小説、ぶっちゃけピンとこない。なんか周りは騒いでいるけど自分にとっては刺さらない。一文が長い。読点が多い。言い回しがくどい。主語さえわからん文章もある。というか「わかってる風を装って『センスある側』に立ちたいだけだろ? あぁ?」と憤ったことありませんか。

新田はあります。高校一年生の頃にヴィレヴァンで買った『砂の女』の魅力とか全然わかんなかったし。なんかザラザラしてんなぁ。同じシチュエーションに陥るなら本田翼と一緒がいいなあ。くらいの感想だった。アホすぎる。

でも、そういう小説も読み方の手ほどきがあればぐっと身近になること請け合いです。

この『名場面でわかる 刺さる小説の技術』は名作には名場面が必ずあるという定義のもと、心理描写・関係性の変化・場所の描写等の項目ごとに優れた場面をそれぞれ集め、なぜ凄いのかを解説してくれています。 

「好き」という言葉を書かずに好意を表現している名場面、友人同士にしかわからない会話で関係性の厚みを持たせている名場面、女子高生の一人称における上手い情景描写などなど、文章で創作している人間であれば目からウロコの情報がこれでもかと詰め込まれています。しかも平易な文章で解説してくれているので、非常に読みやすいんですよね。

創作術が学べる書籍って本筋と関係がないアメリカンジョークで前置きが長かったり、思考が感覚的すぎたり、強い口調で断言しすぎたりと、合う・合わないが大きく分かれますよね。

この書籍も引用した作品への誘導が巧みとはいえ、本質としては名作の美味しいところだけを抜き出して解説する書籍なので、もしかすると人によっては地雷かもしれません。「文学をダイジェストにして説明するな」とお叱りの声が聞こえてくる。でも、勉強用・良い物語と出会うきっかけ作りの書籍だと割り切れる人であれば、かなり有用だと思います。新田はこの書籍で『最愛の子ども』という素晴らしい物語に出会えましたから。

もちろん、この書籍に書かれているものが全てが正解とは限りません。文芸においては大正解の描写でも、ライトノベルでは迂遠すぎて伝わらないケースが多々ありますし、求められる情報の密度は媒体で変わってきます。でも、表現の引き出しは絶対に多い方がいい。いま使わなくてもいつか使う日があると思う。片付けられない人間の思考すぎる。

ちなみに、同著者の『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』もかなり参考になりました。これもまた人によっては拒否反応を起こして泡吹いて倒れそうなタイトルですが、中身はかなり実用的。

小説・エッセイ・ブログ等の文章を集め、なぜ良いのか、なぜ読みやすいのかを丁寧に解説してくれています。文章に自信がある方も、復習がてら読んでみてはいかがでしょうか。

②アニメ

星屑テレパス

正直に言うと去年放送された『ぼっち・ざ・ろっく!』が強すぎるので、今年も語りたいんですけどね。でも2022年の話ばかりしていると“成長”できないじゃないですか。

現状維持に甘んじるクリエイターなんて死んだも同然。厳しい世界で生き残るためには、意識を常に高く持っておく必要がありますからね。

だから、ただの感想ではなく、あくまでも理論的に『星屑テレパス』について述べていくつもりです。

ンオオオオオオオオオオンッ
お、お、お、おでこぱしー! 
あばんちゅーる百合百合狂い咲き!!!!!! 

う、海果チャンは引っ込み思案で庇護欲マシマシかわいいねぇ。日常パートではぴよぴよ汗マークつけてるのに、唇ツヤツヤで色気ある作画がまた堪らないねぇ。ユウチャンとの身長差もまた好ハオ。お互いの骨格からして運命。惹かれ合うディスティニー。星空のディスタンス。ンーーーー!! 百合の銀河に星屑がボナヴーしちゃったのカナ!? 


えー、真面目に語ると、きらら系のアニメってここまでガチガチに三幕構成で固めてましたっけ。

去年の『ぼっち・ざ・ろっく!』もそうだったんですけど、構成がしっかりしているので飽きずに追いかけられるし、いつの間にか女子高生にオッサンの趣味をやらせるだけのゆるゆる日常系じゃなくなっている。本誌は読んでいないので偉そうに語れませんが、アニメ化される作品に限っては変化しつつあるのではないでしょうか。いや『がっこうぐらし』みたいな変化球も前からあったし知らんけど。

星屑テレパスの主人公である海果は内気で吃音症の女の子です。これだけだと『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとりを彷彿とさせますが、海果に関しては描き方がガチ。きらら系なのでゆるいコメディで味付けしている部分もあるとはいえ、基本的には重い。海果はそんな自分に嫌気が差して『この星に居場所が無いから宇宙に行きたい』とまで思っていますからね。モノローグが多めなのも、海果が自分の中にある世界で生きているからでしょう。

そんな海果が宇宙人のユウと出会い、物語は『ロケットで宇宙を目指す青春』に発展していくのですが、一般人の高校生が宇宙に行くのは資金的にも技術的にもまず不可能。前澤社長と付き合うしかない。しかもきらら系という媒体である以上、モラトリアムからの脱出が難しく、肉体的な成長は描きづらい。ユウが宇宙人設定なので現実的な問題はカバーできるっちゃできるんですけど、彼女たちが積み上げた過程を不思議なパワーで解決するとも思えないんですよね。タコピーじゃあるまいし。

だからこの物語における宇宙とは頭上に広がる空間だけじゃなく、海果たちが目を背けていた現実でもあると考えています。そう仮定すると、再会した景に憧れを抱き海果に変化が訪れる6話、少し成長したはずの海果が現実に打ちのめされる9話などが、宇宙すなわち未知の世界に飛び出して居場所を見つける物語として綺麗に機能しています。

(余談ですが『ぼっち・ざ・ろっく!』の6話も出会いを経た内面の変化を描く回でしたね)

あと主要人物である雷門瞬がいい味を出している。このキャラ、アニメの範囲だけで言えば嫌いです。デレる場面もあるとはいえ、基本的には居るだけで空気がギスギスする。プライドの高さからくる思い込みでワンマンプレーに走った挙句、上手くいかずにキレ散らかす場面なんてバイト先に居たクソ社員を思い出した

でも雷門瞬が放つ棘が、海果たちが抱える悩みや未熟な人間性を容赦なく剥き出しにしていくので、青春モノとしての解像度が高まっているんですよね。

雷門瞬が居なければ11話の感動は絶対に訪れなかったし、そもそも視聴を続けていなかったかもしれない。物語を面白くするために好感度を犠牲にするキャラクター造形は、かなりの技術と勇気が必要だと思います。それをきらら系、しかも主人公サイドのメインキャラクターでやってのけるのは英断としか言えません。

ゆるい青春だけじゃない。成長やぶつかり合い、各々が現実と向き合うリアルな人間関係も見応えたっぷりな星屑テレパス。強く推せます。

転生王女と天才令嬢の魔法革命

「ファンタジア文庫に媚びてるんじゃねえよ」や「百合で加点すんな!」などと罵声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。たしかにアニスとユフィの関係性はてぇてぇし、新田はファンタジア文庫の飼い犬として靴でもケツでもペロペロ舐めるつもりですが、忖度抜きで本当に面白かったです。

新田は異世界モノというか『転生』や『婚約破棄』を盛り込んだアニメって1話で切っちゃいがちなんですよね。暇つぶしには最適なんですけど、個人的には見ても見なくても良いポジションですし。でもこの物語には惹き込まれた。なぜなら1話の時点で主人公であるアニスの魅力が大爆発していたから。

アニスの魔法に対する価値観とズレ、自由奔放な性格がはっきり描かれているので、タイトルにある『魔法革命』へ至る物語がすぐに予感させられる。つまり初速が凄まじい。そして何より、アニスじゃなければ成立しない痛快なシーンの数々。明らかにただの転生モノとは一線を画しています。弟の花嫁であるユフィを攫って夜空へ飛んでいく引きも抜群でしたね。もはやテンプレとして定着した婚約破棄をここまで印象的なシーンにできるのかと。

で、そのままエンドロールで脚本家をチェックして腑に落ちました。俺ガイルの渡航先生ですよ。2話は変猫のさがら総先生だし。最強の布陣。禁止カード。遊戯が千年パズルを床に叩きつけてブチギレするレベル。

もちろん素晴らしい原作があってこそのクオリティですが、既視感がある食材でも調理次第で一流料理に仕上がるという好例だと思います。というか『万人を楽しませるエンタメ』のお手本のような作品でした。

2期マジで待ってます!!

神無き世界のカミサマ活動

異世界モノ、1話で切ってないじゃん。

いや、そうなんですけどね。なんかこのアニメはずっっっっっと変なことしてたんですよ。卒業制作みたいなクオリティのモンスター。ドット絵の多用。異世界農作業コンバイン。完全アウトの下ネタ。あとOP映像も凄かった。アニメーションがかなり少ないので、サビの手前までは本編で使用するカットで尺を稼いでいるのですが、どの感情を与えたいのかが伝わらないシーンを多用するので不気味。平成深夜アニメの残り香が強すぎる楽曲と相まってシュールすぎる。

限られた手札をフル活用して、緻密な計算のもとアニメを作っているはずなのに「どや、オタクこんなん好きやろ?」という日清のCMみたいな作り手の思惑が透けていなかったのも、本当に本当に怖かったです。

物語自体もテンプレを上手く外しているというか、踏襲する部分と裏切る部分の取捨選択が非常に巧みで、海外に間違った形で伝わった異世界コメディみたいな面白さでした。それでいて、油断したところに衝撃的な展開をぶっ込んでくるんですよね。とにかくエンタメ精神に満ち溢れた良作だと思います。榎木淳弥さんが楽しそうでなにより。

スキップとローファー

これはかなり話題になっていましたね。

いや、本当に良かった。青春のきらめきとか、みつみと志摩の微笑ましい関係性も然ることながら、あとひと押しすればストレスフルの展開に転げ落ちそうなバランス感覚が秀逸でした。 

みつみのキャラクターって、良くも悪くも目立ちます。当然ながらミカみたいな女の子が出てくる。ミカにとってみつみは『好きな男の子となぜか仲良しな芋女』ですからね。自分のほうが志摩と釣り合うはずなのに。

でもミカも実は自分に自信なんてなくて、天然美人の結月に引け目を感じています。そんな結月もまたレッテルについて悩んでいて……という流れで、各々が悩みやコンプレックスを抱えています。実際、若い頃の友人関係ってこんな感じでしたよね。クラスメイトはもちろん、大親友であっても劣等感やコンプレックスで認められない部分は少なからずありました。何がモーニングルーティン動画だ。嘘をつくな。トイレもちゃんと映せ。

物語の序盤はそんなデリケートな部分を刺激する展開が続くので本当にハラハラします。ともすれば不快な方向へ転がる。「これは修復できるのか」と不安になる。その一歩手前で、みつみのキャラクターが活きてきます。結局、世間知らずでズレまくった彼女に絆されちゃうんですよ、作中人物も視聴者も。

あとどうでもいいですが、みつみの出身地の田舎っぽさがガチすぎて笑います。アニメなのに彩度が低すぎる風景は必見。

今回は紹介できませんでしたが『もういっぽん!』『SHY』『江戸前エルフ』も良かったです!

③映画

アリスとテレスのまぼろし工場

壊したのは世界じゃなくて観客の情緒です。

えらく辛気臭い予告映像が公開されてから一年以上待ち続けた作品。監督が監督だし、一筋縄ではいかないだろうと身構えていましたが、新田の予想なんて軽く飛び越えるほど湿り気のある物語でした。

とある理由で変化を禁じられ、時間がとまった町では、恋愛感情を持つことさえ許されない。そんな環境下で芽生えたイレギュラーな恋心が爽やな結末を迎えるはずもなく……いーーーーーやもうなんてものを見せてきやがる。こんなグロテスクな生理的嫌悪感を剥き出しの豪速球でぶつけてくんなよと。映画館なのに絶叫しそうになりましたからね。あとアニメ映画にしてはキスシーンが異様に長かった。カラオケボックスにいる高校生カップルばりに長い。DAMチャンネルに出てくるアーティストは「カラオケをお楽しみ中の皆様」じゃなくて、その辺もちゃんと指摘しろ。

さて、視聴された皆様はラストのアレで伝わると思うのですが、あの場面であんな台詞思いつきますか。新田は無理。仮に思いついても理性が押さえつける。そもそも凡人が下手に真似すると、気色の悪さが溢れ出ます。号泣する五実を花火で彩る演出がまた露悪的だし。でも愛憎含めて睦美の感情も理解はできるんですよ。共感はできなかったですが。

正直に言うと、構成面は粗が多かったです。変化の定義がご都合主義だし、登場人物が多すぎて機能していないキャラクターが何人か居た。ただ、ここで減点するのはもったいない。忘れ去られた幻の中で生きる人間の祝福と呪いを、是非とも味わってみてください。

④漫画

鵺の陰陽師

忘れろビーム先輩一択。

終わりに

というわけで、ざっくりと2023年を新田目線で振り返ってみました。面白いものが多すぎて追いつけませんね。「昔は良かった」なんて口が裂けても言えないです。昔も今もエンタメは最高だし、なんなら進化し続けている。サイコー!

2024年は生み出す側として頑張りつつ、面白いエンタメをたっぷり摂取してぶくぶく肥えるので、何卒よろしくお願い致します!

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