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【小説1-2】スクールカースト下位だった私が、レンタル彼女になったワケ

愛想笑いと笑顔の違いはなんだろう――。

秋山に指摘されてからずっと、│紗耶香《さやか 》は考えていた。

愛想笑いを│咎《とが 》められたことに驚きとショックはあったものの、そのことで卑屈になることはなかった。むしろ、紗耶香自身も腑に落ちることがあるだけに、不思議と秋山という理解者を得た気分にもなる。

もしかしたら、秋山に聞いてしまえば、答えなどすぐに出るのかもしれないが、精鋭揃いの秘書課の課長ともなると、私的な相談のために時間を取らせてしまうのは気が引ける。

それに、秋山のことだ。課題は提示してくれるものの、自分で導き出さないことには意味がないからと、すぐに答えを教えてはくれない気もした。

「……ん、なになに、“愛想笑いにはポジティブな意味合いとネガティブな意味合いがあって、前者は人間関係を円滑にするため。後者は嫌われないため”……か」

昼休みに持参した弁当を公園で食べながら、紗耶香はスマートフォンの画面に向かって独りごちた。

昼はだいたい一人だ。まだ秘書課のメンバーに慣れていないからというのもあるが、昼食くらいはリラックスして食べたいという願望でもある。早めに食事を終えて、ゆっくりドリンクを飲みながらぼんやりしたり、本を読んでリラックスをする時間が、紗耶香にとって大切だった。

「嫌われないため……」

まるで、紗耶香のことを言われているようで、箸を持つ手がピタッと止まる。

一体、この世の中に、嫌われようと思って生きている人がどれだけいるのだろうか。

もちろん、紗耶香も人から嫌われようなどとは思っていない。むしろ、嫌われたくないし、人から嫌われないように心を砕いてきた。

着る服やメイク、バッグなどの小物は極力地味に控えめにして目立たないようにする、人を批判したりネガティブな言葉を吐かないよう気をつける、誘いはなるべく断らない、場の空気はしっかり読む、そしていつも笑っているように、と……。

その努力の甲斐もあって、誰からも好かれる平泉紗耶香を作り上げてきたのだ。これだけ必死になっているというのに、それでもまだ足りないところがあるというのか。

――もしかしたら、私が理想とする自分像は、私には作れないんじゃ……。

誰からも好かれるキャラを演じてきて十年が経とうとしているが、自分には無理なことをやっているのではないかと思わずにはいられなかった。


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