嘘とトラウマ

私には嘘に関するトラウマがあります。
自分の中でも幾度も思い返している出来事が。

小学校に通っていた頃、人数が少なかったため複式学級(2、3年生が同じ教室で学校生活を送る)でした。
私の1つ下の学年の子に、少しだけ知的障害なのかな?っていう感じの子がいました。仮に名前をK君としましょう。
K君は自分と同じ学年の女の子のことが好きみたいでした。
だけど、その女の子はK君の事が好きじゃないらしいのと、子供なのでいたしかたないではありますが、知的障害気味であることなどが加わって徐々に嫌悪に変わっていってしまってました。
その女の子の相談を受けた折、自分は自分なりに同じ学年で同じ教室だから難しいねっていう話をして、次の授業が体育館だったので一緒に向かいました。
その時に体育館で行われたのは、まるで断罪イベントのような出来事でした。

体育の授業をやる雰囲気では無く、全員を体育館の中央に集めて話し出す担任の先生。それはK君のことでした。
「この中でK君の悪口を言っている人がいます、名乗り出てください」と。
私は相談を受けただけで、悪口という悪口を言ったつもりは無かったので黙っていました。
そして、堰を切らせた先生が私と同学年のT君が恐らく先生に「悪口を言っている人がいる」と告げたのでしょう、T君を指名してその場に立たせました。
先生は「T君、この中にK君の悪口を言っている人がいる、そうだね?」と問いかけ、T君は震える声で「はい…」と小さい声で返事をしました。
そして「それは誰かな?」と問いかけたのです。
長い長い沈黙が続いて、さらに先生は「誰か言えないのか?」と苛立ちを露わにしたように問いかけました。私は、例の女の子が名前を告げられてしまうのではないかと思ってヒヤヒヤしていましたが、それは杞憂でした。
だって、呼ばれたのは私の名前だったのですから。
そして、私は先生にその場に立たされました。

先生は「K君の悪口を言ったのは本当か?」と問われ、私は「言っていません。」と答えました。
何回も同じ問答を繰り返し、やはり先生は苛立ってきていました。
「じゃあ、T君が嘘をついているというのか?」と言いました。
T君はたぶん、私と例の女の子と話をしているのを聞いていたのでしょう。
部分的に聞いていれば勘違いをして、悪口を言ったと思われたのかもしれません。
真実は分かりませんんでしたが…私は押し黙るしかありませんでした。
今であれば「T君を信じて、私は嘘つきですか?」と返せるのにな…と何度も思い返してしまうのです。
「私は言っていません、ただ話を聞いただけです」
埒があかないので私がそう言うと、今度は当たり前ですが「それは誰だ」と聞かれました。
でも、その女の子は私の事を信じてきっと相談してくれたのだから、私がその子の名前を言うと、その子の信頼を裏切ってしまう。そう思って私はひたすらに押し黙りました。
当たり前ですが、どこまで行っても平行線で終わりようがありません。
心の中で少しだけ、少しだけ期待をしていました。
もしかしたら、あの女の子が名乗りをあげてくれないか、と。
でも、それもありませんでした。それはそれで致し方ないでしょう。
ピリピリとした張り詰めた空気の中で、何かを言うなんてとても勇気のいることでそれを学年は1つしか違わないとは言え、難しいことだったと思います。

最終的に私は「T君の悪口を言った挙げ句、嘘までついた」というレッテルを貼られて涙ながらに無理矢理謝罪をさせられたのです。泣いたのは今でも悔しくて、その時も悔しくて涙が流れたのを覚えています。
その時から、私は人前で泣くことは嫌いになったし、人を簡単に信用するのはやめようと思いました。
そして、K君には申し訳ないけれど苦手意識が自分は芽生えてしまったし、他の知的障害がある子も苦手になってしまいました。今でも少し苦手です。
本当に申し訳ないと思っているんですけどね…。

私はいつもいつも極力嘘をつかないように、人の信頼を裏切らないようにそう一層強く思うようになった事件でした。
そして嘘をつかれるのも自分は嫌いです。優しい嘘はいいと思います。
でも、相手を軽んじたりして「冗談だよ~」なんて笑いながら言われるのはとても嫌なのです。
テレビ番組でも同じです。
バラエティ番組でありがちドッキリで、人の心を踏みにじるような嘘をついてドッキリなんて本当に質が悪いと思っています。
そんな嘘についてのトラウマでした。

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