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透明宇宙の誰もどこにも[秘め事]薄荷飴

夜になって、光る虫
遠くに、月
明かりのない通りをひとり
行くだけの日曜日
……ため息

捨てられた愛
その名残惜しそうな顔つき
こちらを見つめないでください
プラスチック・シャンデリアのある部屋
効きすぎた空調
白くて、白い
それはもう
白すぎるベッドシーツ
4つある枕
壁掛けテレビの暗闇は
誰もいない世界
みたいな顔して
嘘つきだ

建前も遠慮もどうせ影の底
黒く固まってるんだろ
シックなカーテンは窓を隠して
露骨にティッシュの柔らかが
そこかしこに咲き誇り
花の蜜の芳しい香りが
電気のスイッチを押して
辺りはしん、と寝静まる

光を放つ虫たちの
声なき声にいざなわれ
煙突のある建物の
燃えて焦げたる鉄の骨
鋭利な空を突き破り
透明宇宙を仰ぎ見る
(仰ぎ見る)
星々は砕けて降り落ちる
(降り落ちる)
視線が、もろとも
燃え散り、灰となる
月は青く白い霧状の卵を
誰もいない海に産みつける

《著者略歴》
薄荷飴(はっかあめ)
2017年、詩を書き始め、主にTwitter上で詩を発表する。
2018年、文芸誌「煉瓦」1号から18号までレギュラーとして参加。同人詩集「花詩集」を刊行。2021年「秘め事」を刊行。現在は三月、水月透夏名義で活動をしている。
鋭い棘や危険な毒を隠し持ってる綺麗な花になりたい。

《収録作品》
1.バスに揺られて
2.マシュマロ・マーチ
3.麗しの透明人間
4.夏を弔う
5.風の刺し傷
6.透明宇宙の誰もどこにも
7.言葉が肌を伝う間
8.Neon light love
9.夜狂列車
10.夜と鳳
11.皐月病
12.りんごのうさぎ
13.安定して不安定なガール
14.長い電話
15.秘め事
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◆全15篇の詩を収録
◆商品サイズ 中綴じ製本(A5)
◆2021年発行
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