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箸休め〜ロケ弁当の話

今日のお昼は友人に買ってきてもらったお弁当でした。今やテレビのロケ弁として広く知られる人気の津多屋ののり弁です(タイトル写真)。局内やスタジオ裏で食べてた時が懐かしい。冷食を使わず全て手作りが昔から売りで、ちょっと濃いめ甘めの味付けだけど、確かに美味しい。

今から30年以上前、大学卒業後制作会社に入社してADをやり始めた時、最初に弁当の発注先として教えてもらったいくつかの仕出し屋の一つが津多屋でした。実際に発注する時はのり弁当とご飯に鶏そぼろの乗ったそぼろ弁当を半々で発注するのですが、断然、のり弁当が人気でした。ならば、全部のり弁にすればいいじゃないかと思うのですが、やはり、そぼろの方がいいと言う方もいるわけで、じゃあその割合はどのくらい?と言っても分からないし、たまにはそぼろがいいと思う人もいるわけで、結局は半々に発注することになってました。

おかずの中で人気があったのは、やはり丸ごと一個の煮卵と牛蒡の肉巻きじゃなかったかと思います。私が好きなだけかもしれないけど、、。
おかずも30年前と現在とほぼ変わっていないんじゃないかと思うのですが、曖昧な記憶では、昔の方が練り物の比率が高かったような気がします。若者にとって練り物というのはおでん種であって、こうして冷たいままでお弁当に入ってるのとか嬉しくもなんともない。ある意味、練り物なんて年寄りの食べるものだと思っていましたから、当時の私にとって、この津多屋の弁当というのは実はそんなに嬉しいものでもなかったんですよね。さらにいえば、こののり弁のおかず、野菜が少ない。入ってても、肉巻きの中のごぼうだとか、ミニコロッケやポテサラのじゃがいもとか根菜ばかりが少量。おかずはタンパク質祭りで水分が非常に少なく、フレッシュ感に欠ける。今になれば、根菜を使うのは冷めても美味しく、味が変わりにくく、水分が少ないのも、時間が経っても悪くなりづらいという昔ながらのお弁当のセオリーを守った正統派だと分かるのですが、若い頃は、冷めたお弁当の美味しさと言うものが理解できず、ただ、味が濃くて甘くて見た目も年寄りくさい津多屋の弁当を多くのスタッフが美味しいと言うのに心から頷いていたわけではなかったのです。かといって、まい泉のカツ弁当も冷たくなったカツとキャベツしか入ってないし、他も似たり寄ったり。そんな当時の私のお気に入りは、足柄ってお弁当屋さんのすき焼き弁当だったのをおぼえています。タモリ倶楽部の弁当選手権でも常連の喜山飯店の中華弁当が登場し、私のお気に入りにも浮上してくるのは、もっと先のことです。

もとい、津多屋の弁当みたいな冷たい弁当の美味しさが理解できなかった話に戻ります。

冷たい弁当は好きでない私でしたが、いつ頃からでしょうか。40歳を過ぎた頃からかなあ、夜のニュース番組を担当し、週のうち4日、夕食を局内でお弁当を食べる生活をしていたある日、変化が起こったのです。

毎日、冷めたお弁当で、冷たいご飯には嫌気がさし、ADさんにも、なるべく局の近所のお店から、あったかいカレーとか、冷めないうちに食べられる出前をとって欲しいなとかお願いしていたある日、視聴率が良かったのか何か、今日は少し高いお弁当を発注していいよって日があって、ADさんがちょっとお高めのちらし寿司を頼んでたんです。容器はすごく小さいんだけど、1500円とかするお弁当でした。小さな正方形の容器にガリとお寿司のみ。でも、これがすごくおいしかったんですよ。どこのお店かは忘れてしまったのですが、結構有名なとこだったみたいです。ちらし寿司だから、当然冷たいし、ちょっと甘めの味付け。でも、このお寿司で、そういう冷めた甘めの食べ物の美味しさに目覚めちゃったわけですね。で、その後、津多屋ののり弁を食べる機会もあったわけですが、もうその時には見方が変わっていました。練り物や根菜が多いのも、甘い味付けも、全ては冷めても美味しいための工夫なのだと感じられるようになったんです。
そうなると、それまであまり理解できていなかったお弁当の世界が広がってきます。お花見弁当、幕の内など、美味しいと言われるお店のものはやはり美味しいんです。そう言う意味で、崎陽軒のシュウマイ弁当の良さも比較的最近知りました。さらに、最近知ったところでは、亀戸升本のお弁当。これも美味しい。保存料や着色料無添加で、その日1日保たせるための味付けは、イコール、冷めても美味しい味付けなのでした。

亀戸升本の幕の内弁当(一口食べた痕跡あり)

たかが弁当の話が、長くなりました。されど弁当。テレビ業界では、いかにスタッフみんなが喜ぶお弁当を提供できるかが、ADの腕というか、仕事の一つでもあるわけです。美味しい弁当でテンションが上がると、その後も機嫌よく仕事してもらえる。やはり、美味しいものを出すに越したことはない。食べることは全ての基本なのだと、こういうところでも思い知らされます。

テレビの世界では、ロケ弁以外にもいろんな食べ物について教えてもらいました。私が業界に入った90年代の初頭は、バブル崩壊とはいえ、まだまだバブルの余韻があり、会議弁当など、今から考えたら考えられない豪華なものでしたし、偉い人に、赤坂や六本木の美味しい店にも連れて行ってもらいました。そういう時代でした。それを書き出すとまた長くなるので、それはまた別の記事として書こうと思います。

最後にまた津多屋のお弁当に戻ります。
テレビの収録の時にスタッフ用の弁当としてとっていた時の津多屋のり弁の印象は、なんか地味な弁当。1000円以内に予算を限定されているスタッフ用のお弁当だったこともあって(当時は1000円以下でした。値上がりした今も、多分ロケ弁用にはおかずの中身を調整するなどして安く抑えているんじゃないでしょうか。それとも沢山発注するから安くなるのか?よくは知りませんが)、高級品のイメージはありませんでした。しかし今や人気の弁当として、渋谷西武の地下でも買えるようになったみたいで、中でも人気ののり弁は夕方前に売り切れるようです。

津多屋ののり弁よ、お前も出世したなあ、、、。
以前はテレビの裏方として、こっそり出演者やスタッフを支えていたお弁当が今や主役に躍り出て、テレビの画面に、デパ地下という舞台に大活躍です。昨今のテレビを見ていると、食べ物の番組ばかり。人々の興味が食べ物にしかないかの如くです。そういう話でも一つ何か書けそうなくらいですが、それはまた今度。

津多屋の弁当食べたという報告だけのつもりが、こんなに長くなってしまった。
食べ物って恐ろしい。
では、おやすみなさい。

※時々こうした箸休めも書いてみたいと思います。
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