エスター ファースト・キル 感想

遅ればせながら、「エスター・ファーストキル」拝見しました。

「エスター」の前日譚ということ以外の予備知識ゼロで観たのでてっきり、
前作同様にエスターが一つの家庭を崩壊させていくシンプルなストーリーかと思っていたらまさかの展開に

「そ う 来 た か !!! 」

といや~びっくりびっくり……これ初見はほぼ騙されると思うの……


以下ネタバレ




刑事さんが殺されるシーン、カットの切り替わりでナイフが消えるの怖すぎ……
「あ、死ぬわ」
とお約束の流れを覚悟して、実際惨殺されるんだけど、その後のお母さんがピストルを撃つ超展開は予想外で一瞬何が起きたか分からなかった。「え!?殺すのそっち!?」って。

明かされるネタバラシ込みでめちゃくちゃ驚いた……


死ぬ間際の刑事さんの〝気づいているさ〟という発言。
この母親、本当の娘はもうこの世にいないことを分かっているし、何なら手にかけて隠蔽したことも何となく察していたということかな。
(殺したのは兄だが)

本性表した後の母親の貫禄がマフィアのそれで、あのエスターを前にしても全く怯まない。血まみれの刑事に何の躊躇いもなく銃を打ち込む畜生っぷり。

エスターもあれだが、この母親も大概サイコパス……。

前作のエスター本編、主人公が覚悟を決めて立ち向かうまでと、今作の冒頭の精神病棟のシーンでは圧倒的にエスターが「殺る側」ですが、

家族の秘密が明らかになってからは、狂った人間同士の「殺る側VS殺る側」で、
弱みを握られているエスターは下手な動きが出来ないこともあり、あのエスター相手に母兄(特に母)が互角に戦えてます。
それも最初はバイオレンスVSバイオレンスではなく夕食を一人だけ雑なものにしたり、父親(旦那)を取り合ったり、こう…女性特有の陰険な戦いが続くわけです……。とても見応えがありました(笑)

母兄サイドにもエスターにも共感はできないけれど、
エスターが兄にビンタし、怒った兄から「次やったら殺す」と言われた直後間髪怯まずビンタ返したのはスカっとした(笑)

それと。身体が成長しない特性に関しては恐らくエスターに落ち度はないので病気を揶揄したうえで自身と旦那の性生活を匂わせながらマウントしてくる母はちょっと、いやかなり厭だったな……。

前作でも今作でもエスターは一環して自分が大人の女になれない、年齢相応の扱いをしてもらえないことににずっとコンプレックスを抱いていた。
だからこそあの病気揶揄のシーンは相当胸を抉られているはずだし、
基本誰に何を言われても「うるせぇ殺すぞ」の圧をかけるエスターが唯一、演技で繕った笑顔よりもずっとずっと、まるで本当にか弱い子供のように傷ついた顔をするんですよね。
(エスター本編で父ちゃんに迫って拒絶された時の泣き顔も、鬼気迫るものがありました。)

ここだけ切り取ると病気に関しては本当に仕方がないことなのでエスターにちょっぴり同情してしまう……と思ったら翌朝のネズミスムージーでやっぱこの女最低だ!!と前言撤回になるわけですよ…

母サイドも、まず経緯がアレだし、残された兄のことを本気で愛してるというよりただ世間からみた理想の家族、理想の息子という記号でしか子供を捉えてないので全然こっちにも共感できない…。

妹の死を悼むよりどうやって隠そうかでいっぱいいっぱいだし、催涙スプレー目にかけられて痛い痛い病院に行きたいと訴えてる兄に必要ないわよとそっけなく答えたりね……。(けど旦那さんに対しては愛があったように……みえた…。)

そうして徐々にエスカレートしていく殺る側VS殺る側の最終決戦は(また火事…)前日譚だから当然予想していた勝敗で決着が着きます。

そして前作「エスター」につながる、養子縁組の話を示唆して幕は閉じます。


ただ予想通りにエスターがサイコパワーを炸裂して一家を殲滅させるのではなく、早い段階での母兄VSエスターの対立構造だったのが予想外で、私はとっても面白かったです。

あと、本編の、あの「絵のシーン」はここからきてるのか!というエピソードもあったり…。
技法が気に入ったから真似したっていう単純な話じゃなく、エスターってあの父の事を本気で男として好きだったんだろうな……
(じゃないと自分の創作活動に取り入れたりしないと思うの)

共感できるキャラクターは何も悪いことしてない刑事さんくらいでしたが(お父さんもちょっと察しが悪くてう~んという感じ)、
兄のお友達で、エスターに投げかけられた猥褻な言葉に苦言を呈したり周りみんなが邪険にしてるエスターに「わたしこの子好き。」と言ってた女の子は好き。

彼女は名前のないモブだったから直接的な被害を免れたけど、そういう優しさに付け入ってエスターはこれまでどんどん人を殺し、家族を崩壊させてきた。

ここまで極端な例は稀でも現実にも、そういう悪魔のような人はいるし、ちょっとした隙から最悪の事態を招くこともある。

こちらが誠意をもって対応すれば必ず相手も返してくれるというのは幻想で、人の善意を踏みにじるどころか更に自己を省みずに攻撃をしかけてくる輩もね、いるんですよ(いた)

それでも私は極力、人に優しく誠実でありたいと思うので、

エスターのようなサイコパスと今後バッタリ巡り合わないように祈るばかりです( ;∀;)


2023/11/13 Yukiho


#映画 #映画感想 #エスター #エスターファースト・キル

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