【短編小説】永すぎた春

彼は、もはや恋人と言う存在を超えていた。
何も言わずに気持ちが伝わって、別に何か特別なことをしなくても、一緒にいれば安らげた。これが、結婚というものなのかな、と真由は思っていた。だから、あえて、その一歩を踏み出すことに、必要性も感じなかったのだ。ずっと。

奏多と一緒に暮らしだして、もう5年経っていた。
付き合い出してすぐに、奏多のアパートの更新時期が来たので、お金がもったいない、という理由から、二人で住めるマンションを探した。それ以来、ずっと、特に波風も経たずに二人で暮らしてこれたのは、二人が奇跡の相性だったからだと、真由は思う。
「いつかは、結婚する」という確信はあった。
だが、逆に、いつかはするものなのだから、すぐにしなくてもいい、というものぐさな心も働いた。5年もいっしょに暮していれば、恋人としての恋情よりも、家族としての馴れ合いの感情のほうが勝ってしまう。
結婚には、そのための強いモチベーションが必要だ、と思う。
要するに、「この人を占有したい!契約で縛りたい!」という強い欲望に突き動かされないといけない、ということだ。
ずっと一緒に暮らしていると、そういう熱い気持ちは、どこかへ行ってしまう。
ただただ心地よいぬるま湯のような毎日と、何かを動かすのが面倒だと言う怠惰。
それが結婚までの道を目隠ししてしまう。

「でも、いつかは、するものだから。」

真由はいつもそこで思考停止して、考えるのを後回しにしていた。
そして、それは奏多も同じだったと思う。

そんなある日のこと、真由は、一人の男に出会った。

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