見出し画像

3. Stage3 - 70km 悔し涙を流した日/ Wadi Rum Ultra2018


食事用にお湯が支給されるか否かは心理的に全然違うと実感しました。
サハラマラソンではキャンプ地に戻ってきたら、ご飯を食べるためにお湯を沸かすという作業が必要になります。これが疲労困憊で戻ってくると、お湯を沸かすという作業が面倒くさくてしょうがないので、フリーズドライフードを水で戻して食べるということを良くやっていました。(荷物軽量化のためというのもありますが)

昨日はゴールした後は足の処置、ご飯を食べてすぐ寝るという有様でした。ゴール後に行われるミーティングには疲れているようだからと気を遣われて呼ばれませんでした。

何も知らない私は、朝3時に叩き起こされる始末です。

「何事?!」と思ったら、今日のスタートは4時からだというではありませんか!本日の70kmのロングステージは早朝スタートなのか!!
そして、現在女子1位のイギリス空軍所属のサラが「今日は各チェックポイントの制限時間は2時間だって。」と言うではありませんか。

えっ!?制限時間なんて聞いてないし、今のこの足の状態だと10kmを2時間で行くのは無理だわ!

レースのレギュレーションにも制限時間のことなんて全く記載されておらず、レース当日にこのように人伝に知らされるのは如何なものでしょうか?


朝4時真っ暗な闇の中でスタートします。

足の状態から昨日同様にサンダルで行きたいところですが、暗闇の中、足場がどうなっているか良くわからない状態で歩くのは危険だと判断して、ランニングシューズで行くことにしました。痛みで靴も入らないような状態ですがロキソニン服用でごまかします。

満天の星空の下でレースを楽しむ、、という心の余裕はありません。
私の今の足の状態では10kmを2時間以内で行くのは結構ギリギリの状態です。光量の弱いヘッドライトで、目印の旗とケミカルライトが見つけにくく、コースを外れたり、目印を見失ったりと制限時間に行けるのかと、焦ってしまいます。

もうすぐでCP1に着くはずだ、というところで後ろから「ハロージャパン!」という声が聞こえてきました。何この既視感?そう、現在トップのサラマーが追いついてきたのです。今日も何人かの選手は1時間遅れでスタートしているのです。この人、昼も夜も関係なく一定のスピードで走れるのかよ、とほんとすごいとしか言いようがありません。

CP1には滑り込みギリギリでなんとか制限時間内で通過することができましたが、ゆっくり休憩している暇はないので先を急ぎます。
すると昨日と同じように1時間遅れでスタートした選手達が声をかけて続々と追い抜いて行きます。


ようやく日が昇り辺りが明るくなってきたので、ペースを上げられると思っていたのですが、砂場だらけの足場に苦戦してしまいます。これはCP2の制限時間に間に合わないかもしれないという焦りが出てきます。残り15分というところでもチェックポイントが現れる気配が全くありません。これはもう少しでも走ったほうがいいかもという判断は遅すぎて、制限時間の2時間がちょうど経過した時は何もない砂漠の真ん中にいました。それでも大目に見てくれるという期待を込めて、前に前にと進み、CP2に着いたのはその15分後でした。

共同主催者のサムが「君はよくやった。」と肩を抱いてくれた瞬間に悔し涙がボロボロと流れ、もはやコントロール不可能な状態になりました。
大会スタッフのロザンナやサイモン達がその姿を見て慰めてくれればくれるほどに悔しくて涙が止まりません。

急に降って湧いてできた制限時間にまさに泣かされているのですから。

こんなの納得がいく訳がありません。
とはいえ、ルールには(一応)従わなくてはなりません。大会スタッフに言われるがままに、車両に乗せられます。

画像1

この車の中から見たワディ・ラムの景色は絶対に忘れることはないでしょう。 車両はCP3、CP4、CP5、CP6とコース上を走り、そのコース上を走っている選手を車の中から見つめていると自分が情けないやら、悔しいやら、こんな思いしたのは初めてです。



そして本日のキャンプ地に到着です。

画像2

この日は岩の上にマットを敷いて、満天の星空の下で眠るとのこと。
最高のロケーションなのに、私の心はどんよりとしています。キャンプ地にいた現地スタッフに「あれ?戻ってくるの早いな?」「何?リタイヤなのか、残念だったな、がはははは!」と、彼らの屈託のなさが私の心を癒してくれます。


その後、続々と仲間やスタッフが帰ってきて、私のところにやってきて色々と慰めてくれるのですが、それが辛く、また思い出して涙が出てきます。現地スタッフのように笑い飛ばしてくれれば気が楽なのに。


画像3

ゲーター(砂の侵入を防ぐために靴を覆うもの)を見ると血まみれになっていました。靴下だけではなく、ゲーターにまで、、道理で痛いはずです。


画像4

この日は結局20kmしか行けず、50km残してリタイアと悔いが残る1日となりました。


サポートして頂けると単純なのでものすごく喜びます。サハラ砂漠の子供達のために使います。