ハジメテをアナタに
僕の彼女は幼馴染だ。
子供の頃からずっと一緒で、よく彼女に手を握られて、いろいろなところに行ったし、いろいろなコトをやった。
僕の人生は、彼女とともにあった。
彼女と行かなかった場所なんてないし、彼女以外とやったことなど、何一つなかった。
七五三もバレンタインもクリスマスも、彼女と共に過ごしてきた。
僕にとって彼女は、無くてはならない存在なのだ。
そんな彼女も大学に入ると、とてもきれいになった。
いろいろな男性に声をかけられる。構内で、道端で、バイト先でも。
対するボクは、冴えない男だ。
彼女の後ろばかりついてきた。彼女の背中ばかりを見てきた。
彼女以外と話したことなんて、ほとんどない。
もし、彼女が僕から離れたら、僕は何をすればいい?何処に行けば良い?
彼女のいない日常は恐怖でしかない。ましてや、彼女が他の男と一緒にいる姿なんて、想像するだけで嫌だ。
だけど僕には、彼女を縛るものがない。
そんな時、彼女の目が僕以外を向いていることに気がついた。
会話の中に、僕以外の誰かを気にすることが増えた。
僕の世界が、終わろうとしている。
どうすればいい?どうすれば彼女と一緒にいられる?
考えて、考えて、考え尽くしてーー。
僕は、彼女に初めてを捧げることにした。
苦しいだろう。痛いだろう。だけど許して。これが僕にできる、精一杯の愛だから。
大丈夫。僕もすぐ、そっちへ行くから。
私の彼は、幼馴染だ。
子供の頃からずっと一緒で、よく彼の手を引いていろいろな所に行き、2人でいろいろなコトをした。
私の人生は、彼とともにあった。
彼と行かなかった場所なんてないし、彼以外とやったことなど、何一つなかった。
七五三もバレンタインもクリスマスも、彼と共に過ごしてきた。
私にとって彼は、無くてはならない存在なのだ。
だけど同時に、いつも私は恐れていた。
彼が私の手を振りほどき、何処かへ行ってしまうのではないかと。
彼は素敵だ。いつも私のワガママをきいてくれて、欲しい言葉を投げかけてくれる。
悲しいときにはそっと抱きしめてくれるし、迷ったときは誰よりも先に見つけてくれる。
そんな彼だからこそ、私は何でも捧げた。彼の未知を私だけで埋め尽くし、私だけが彼のすべてになるよう、努力もした。
それでも、不安は拭えない。だって彼は最高に理想的で魅力的な男性だから。
彼の良さを誰かに気付かれてしまえば、きっと奪われてしまう。
きっと、私の行為は、その時間を引き伸ばしているだけなのだろう。
幸せな時間は、失うことを恐れる時間でもあった。
ああ、怖い。嫌だ。彼は私の全てなんだ。彼だけで満たされたい。彼の中の永遠でいたい。
だけどそれは、いつ壊されるかも分からない。
だけど、今なら?今この瞬間で終われば、永遠になるんじゃないか?
私は、2人の幸せのために行動した。
ほんの少し、言葉に毒を混ぜて。
ほんの少し、視線に悪意を混ぜて。
彼は答えてくれる。何時だって彼は、私の希望を叶えてくれたのだ。
そして今日、たった今!その願いは果たされる。
嬉しい、嬉しい!
これで彼の初めてはすべて私のもの。
彼の中で私は、色褪せないモノとして永遠に残り続ける。
そしてこの、寂しくて憎くて愛しそうで悲しそうな顔を、私だけが見つめるのだ。
そして私は、幸せなまま終わる。
私の初めては全て、貴方のために。
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