見出し画像

長崎産メバルのオイル煮 イタリア南部プーリアの陽気で快活な果実味

カラブリア州の美味しい魚介とワインの楽園、漁師の船着場にある魚介専門のトラットリア、台東区上野のチロンボ・マリーナ。
シーフード好きの心くすぐるレストランでの食事は前菜を終えてメインへ。

本日の一本魚は入り口のアイスベットに並んだものから選び、調理方法とともに注文する。
この日はホウボウ(愛媛)、マゾイ(北海道)、コダイ(長崎)、メバル(長崎)、メイタカレイ(千葉)、ホッケ(北海道)、カサゴ(長崎)がリストされていたが、注文しようとしたホウボウはちょうど売り切れていた。
最近、ホウボウが細い本足で海底を歩くかわいらしい様子をテレビで見たのが印象に残っていて、子供たちと食べようとしたが残念。
それではとメバルを注文。

魚の調理法はアクアパッツァ、アルフォルノ(オーブン焼き)、グリリアータ(グリルパンなどでの焼き)、オイル煮から選べる。
メバルはアクアパッツアァ、オイル煮にするのがお店からのおススメで、オイル煮に。

前菜から引き続きワインは、グラスで頼んだプーリア州のピノ・グリージョで。
ちなみにイタリアは20州全てでワインを生産している。
北は2006年に冬季オリンピックが開催されたトリノを州都とするピエモンテ州、南部のシチリアはアフリカ大陸に目と鼻の先の距離だ。
この多様な気象に加えて、ブドウは政府認定品種が約500種、推定で2000種ほどが存在するとされる。
このバラエティの豊富さがイタリアワインの魅力であり、且つ複雑でとっつきにくくもしてもいる。
私は、以前は中部、北部のピエモンテ州とトスカーナ州の赤ワインばかり飲んでいた(ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ品種を中心。バルバレスコ、バローロ、キャンティ、ボルゲリなどの地区)。
南部のワインはどこかふわっとしてフォーカスが合っていないような印象を持ってしまっていたが、果実味以外のミネラルや塩気、ハーブのニュアンスなどへの味覚の理解が不足していたような気がする。
ワインを本格的に飲み始めて15年。今ではシーフードにワインを合わせるにあたってこれらの要素はなくてはならない存在だ(皆さんにはこんな遠回りをスキップして欲しい)。
ワインに総じて共通するが、特にイタリアワインの真価は料理に合わせることで発揮されることも多いのが個人的な印象だ(隙のない完成品のボルドーは料理なしでも魅力の受容を完結できる)。

さて、ワインと料理の相性について。

エピクロ ピノ・グリージョ, プーリア州, イタリア, 800円(レストランのグラスワイン)
Epicuro Pinot Grigio IGP

しっかりと冷やされた状態での提供だったこともあり、最初は香りのボリュームは穏やか。透明感の高い青リンゴ、フラワリーなニュアンスに富む。
風味には果実味は中庸ながらピュアでクリーン、低めの提供温度も手伝って涼やかな酸味を帯び、いかにも温暖なイタリア南部プーリアのワインとは(良い意味で)想像がつかない。
メバルのオイル煮にワインを合わせる。
熱を通しても柔らかな身を噛むと、キノコや香草などの香りに乗って、メバルの旨味と甘みが微かな磯の香りを伴いつつジンワリと広がる。
メバルそのものの味わいをしっかりと楽しめる穏やかな味付けが嬉しい。
そこにワインの陽気ながら強すぎない果実味が心地よくバランス。
素材の味わいがしっかり伝わる料理なので、ワインにミネラルやヨードのニュアンスがあるとより相性は良さそうだが(サルディーニャ島のヴェルメンティーノ、カリカンテ、マルケ州のヴェルディッキオなど)、このプーリア州の白ワインも十分に懐が広かった。
相性: ★★★★☆

この記事が参加している募集

#おいしいお店

17,646件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?