【第5回】質問と反論の出し方

これは日本人あるあるかもしれませんが、質問に対する過剰な恐怖心があるように見受けられます。議論の場以外でも、ちょっと「それどういう意味?」なんて聞こうものなら、即座に反論しているとみなされ過剰な防衛反応を見せられたり、そんなことありませんか?

単純にその意味が知りたかっただけなのに、なんでここまで突っかかられないといけないのか……それは反論されたと思い込んで、その反論にたいしてさらに反論しようとするからです。

さらにどうしてそうなるかというと「質問」と「反論」の見分けがついていないからですね。

ディスカッションでは、質問と反論はかなり明確に分けられます。一つの議論が立ち上がったとき、最初にその議論について話し合うための手順を決めるというのは前にもお話した通りです。その際、

1.質問
2.反論
3.結論

と1と2を別の手順として設け、1の質問がなくなるまで2に進めないようにします。ディスカッションでもっとも大切なことは「参加者全員の総意に基づくこと」なので、誰か一人が質問を残している、つまりわからないことがあるのに、反論して議論を下げてしまうようなことはあってはなりません。

1の質問の段階では、語句の定義や発案者の意図なんかがよく探られます。もちろん、そこでの返答がまずいと次の反論に使われたりするので、慎重に答えを選ぶ必要があります。しかしここでその質問を反論とみなして、退けたりさらなる反論を繰り出してはいけません。そういったことは手順に沿っていないとみなされ、2でやりましょうねーと後回しにされます。

では、「質問に見せかけた反論」は存在しないのかというと、そういうわけでもありません。ディスカッションでは我先に反論をして見せ場を作りたいと1の質問の段階で無理くり反論を持ち掛けてくる人もなかにはいます。しかし、そういう人は周りの人も寄ってたかって「2でやりましょうねー」と後回しにしてくれます。手順を守るというのは、非常に重視すべき事柄なのです。

質問を受ける人は、あとで反論されるとなんとなく予想がついても、問われたことに誠実に答えなければなりません。その一方で、質問する人も、答えを得たらすぐさま反論に取り掛かるのではなく、いったん引いて、次の2のステップに入るまで待たなければなりません。他に質問したい人がいるかもしれないからです。

お互いに誠実にやりとりをすれば、「質問に見せかけた反論」も「質問を反論と思い込んで過剰に防衛する」こともなくなるのですが、このあたりの見極めも大変難しいところです。なので、先述したように、手順を最初にしっかり確認して、それに沿って進めることが大切になります。「質問があります」などと明確に提示してあげると親切かもしれませんね。

議論はある種のゲームですので、スポーツなどと同じように、ルールをしっかりと守り、誠意をもって相対する必要があります。疑問を持ったまま議論が進んでしまうことがないよう、質問・応答は丁寧に行うのがよいでしょう。

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