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天ぷら店の明太子食べ放題システムから学ぶ、お得を感じさせる仕組みのデザイン

ビジネスの世界では、お金を払ってもらったお客さんに、如何にお得だったかを感じてもらう仕組みを設計することも重要です。お金を払ってくれるお客さんが、お得だった、頼んでよかったと事後的に感じてくれるならば、それがリピート依頼に繋がるわけですし、第三者への口コミとして良い噂を伝えてくれる可能性も高まります。またクレームを減らす効果も期待できます。

建築設計もビジネスの視点で捉えるならば、そのような仕組みもデザインすることが効果的だと言えます。

昨日そのような仕組みのデザインの為に参考になりそうな事例があったのでちょっと書いてみます。それは、チェーンの天ぷら定食を提供するお店に行った時の話(家族での短時間での外食だったのでご容赦ください)。

余談になりますが、私は、経営・ビジネスという視点を意識しだしてから、中小チェーンの飲食店舗の仕組みやメニュー作り、お店作りを観察するのが大好きになりました。一時期、日経マーケティングジャーナルという新聞を購読していたのですが(読む時間が取れなくなりやめてしまった。泣)、そこでも、飲食店の試みや動向を知るのが好きでした。

それはなぜだろうと、自問していたのですが、その理由として挙げられたのは、建築設計業界と比較し、参入障壁が低いため、ビジネスに対するアイデアの競い合いが激しいこと。小さい工夫の積み重ねで利益を生んでいるため、観察して、そのアイデアと利益の相関関係を推察するのが楽しいことなどでした。
ともかく、それぞれのやり方で少しでも利益を上げる試みが行われていて見ていて楽しいのです。

さて、先の天ぷら店のシステムに話を戻します。

そこで特徴的なのは、全定食メニューに含まれている、明太子が食べ放題というシステム。どの定食メニューを頼んでも、明太子がついてきて、それをお代わりできるのです。それ自体がお得だと感じますし、それによって来店を促す効果が期待できます。

実際に訪問した際にも、何度か追加で持ってきてもらって、お得な気分になりました。

そして、更にこれは!と思った施策をお会計時に、目にすることになりました。
レジ横に、先ほどまで無料で食べ放題だと思ってた、明太子が、「持ち帰り用」として150g 1000円くらいで販売されているのです。

これを見た瞬間、先ほどまで無料だと思って食べていた明太子が、実は価値のあるもので、凄い良いものだったのではないか。めえちゃくちゃお得だった。という気分になってしまったのです。

恐らく、これは持ち帰りで売ることを目的としていないのでは、と私は推測します。無料だと思っていたものに、「値付け」することにより、お客さんの中で、あの明太子は「お金を払うべきものを無料で食べさせてもらっていた」という感覚になるのだと思います。

それは最初から、無料なものを無料で食べて帰ってきたという経験とは全く異なるものになり、退店時に「凄くお得だったという」記憶が残るのだと思います。

この仕組みのデザイン、行動経済学的に見ても優れた仕組みだなあと思うのですが、思い返すと、青山の骨董通りにある、中華の有名店「ふーみん」でも同じ仕組みがとられているのです。

ふーみんでは、店内では、ザーサイが食べ放題です。しかし、同じようにレジ横で、持ち帰り用として、ある程度の値付けをして、ザーサイが販売されているのです。ある程度の値段なので、買って帰るまではいかなかったのですが、同様に、さっきまで食べていたザーサイはそんな価値があったのか、お得だった、また来たい!と正直思ってしまいました。

この仕組みのデザインによって、退店時にお得だったと感じさせリピートを促していると思うのですが、より広範囲のビジネスを見渡すと、イケアやコストコでも近いシステムが採用されており、退店時にお得だったという記憶を残させる施策がとられています。

行ったことのある方ならわかるでしょうが、両店とも帰り際に、フードコートのような販売店が配置されており、ホットドックが凄い安い値段で売られているのです(200円くらいだったかな?)。これを買って食べた人は、お店での経験全体がお得だったと感じてしまうようになるという事をどこかのビジネス記事で読んだような記憶があります。先の天ぷら店やふーみんの仕組みと似ていると思います。

そして、私は、この仕組みを何か建築設計業界の中に組み込むことができないか、と目下考えているのですが、なかなかこれだ!というアイデアがまだ出ていません。

もしかすると、例えばですが、建設費×10%として設計費を計算しているのであれば、その横に、実際に掛かった時間を計算しておいて、人工計算した場合の費用を併記してみると、前者の計算方法がめちゃ安いという事がつたわるかもしれないと思ったり。。(本当は、最初から人工計算で請求したほうが良い話かもしれませんが、、。)

また、この比較できる状況を作るのも重要だと思っていて。基本的に人間は(特に専門知識のない分野においては)、単体の金額を示されてもそれが安いのか高いのか妥当なのかどうかをを判断できない、という事実があると思っています(自身の経験を振り返ってみてもそう)。

ただ、実際に払ってもらったお金以上のことを、こちらがしているという事を伝えるのは、私は凄く重要だと思っていて。施主側が、お得だった、良くやってくれたと思っていることによって、クレームしようと思えば、全てクレームになってしまうような建築を作るという事の危険性の一端を回避できる効果もあると思いますし、最初の天ぷら店での経験のような、お得だった、頼んでよかったという感情を相手の中に芽生えさせられるようにも思うんです。

もちろん、設計自体のでアイデアで、そう思わせようとするのは大前提ですが、やはり目に見える金額という面でも、そう思わせる仕組みを設計することが重要なのではと思います。

ぼくが普段やり取りしている設計者の皆さんは、非常に真摯に建築に向き合い、アイデアを実現している方々がほとんどです。その建築に向ける思考を、事務所の仕組みに向けてみると、色々と潤滑に進むこともあり得るだろうなあと、常々考えています。

最近、流行りだした、culbhouse(アカウント名 @remgoto で探してみてください)とかでもこういう話してみたいですね。恐らく、建築家の皆さんも個々や小さいコミュニティではこういう話をされているような感覚があるのですが、あまり表立って話す話ではない風潮があるのは以前から感じていますし、それはそれでよいと思っているのですが、成功事例や知見は、積極的に共有して、設計業界全体としてビジネスが少しでも上手くいくようになれば良いなあ、というのが僕の願いです。

こんな話を有料マガジンでも更新していますので、宜しければ是非。

https://note.com/remgoto/m/m427f497c0d03



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