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ブランドコンセプトと建築家のアイデアがせめぎあい融合するーー伊庭野さん・藤井さんの「猿田彦珈琲 アトリエ仙川」


こんにちは。
アーキテクチャーフォト後藤です。

先日、id+fr / 伊庭野大輔+藤井亮介による東京の「猿田彦珈琲 アトリエ仙川」に行ってきました。今日はこちらの建築の感想を書いてみたいと思います。

こちらの作品は2015年5月にアーキテクチャーフォトでも特集記事として掲載させてもらっています。こちらを見てもらってから本文を読んでもらうと建築を想像しやすいかもです。

現在、伊庭野さんは、日建設計においてFCバルセロナのメインスタジアム改修設計に取り組んでいて、藤井さんは独立され自身の事務所を設立されています。

そのな彼らのコラボ作品ということで訪問してきました。

既存の建物内に入居し内装を手掛けているプロジェクトなのですが、入居物件が鉄骨造のガラスのボックス、といった作られ方をしていて、また内装側でも高さ3.6mの木製パネルがデザインの大きな要素となっているため、「内装の仕事」という感覚がありません。木製パネルのスケールによって構造体と内装の序列のようなものが曖昧になっている印象を受けました。

また、この木製パネルですが、可動式だそうで、かつ、この空間内の場所ごとにその配置の分量が適切に設定されているのです。

例えば、1階では、より街路とのつながりを作るために、パネルの配置は「疎」になっています。それによって店内の中もよく見えますし、中からは外の様子もよく見えます。

反対に、2階ではパネルが「密」に配置されています。これによって、2階の客席は、光の抑えられたより親密感のある空間として、来客者にとって居心地の良い場所になっていました。

ポイントは、「3.6mの木製パネル」という同じパーツを用いることで、建物全体の視覚的な部分で統一感を生み出しつつ、室内それぞれに異なる雰囲気の空間が生まれているということです。

建築において、ある目的の空間を作ろうと思ったときに、その方法というのは、かなりの選択肢が存在するのですが、それぞれの空間に、統一感のない手法を使ってしまうと、建築としての全体性が生まれることはありません(全体性を意識することで特に店舗の場合はブランドイメージ、店舗の雰囲気をお客さんの脳内に記憶されるのに寄与します)。

そのような視点で見ると、伊庭野さん・藤井さんが、空間を制御するアイテムとしてこの「3.6mの木製パネル」を発明したのは注目すべきだと思いました。

また、室内の要所要所に使用されているライトブルーの塗装ですが、こちらは猿田彦珈琲さんのブランドカラーです(パンフレット等にもこのカラーが多用されています)。そして、もう一つのメイン素材の木材も、恐らくブランドイメージの構築といて猿田彦珈琲さんが望んだマテリアルなのかなと思いました(裏付けは取れていないので想像です)。

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