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プロレスとは、"大河ドラマ"である~『KING OF DDT 2022』観戦記〜

2022.7.3、DDTプロレスリングのシングルトーナメント・『KING OF DDT 2022』が閉幕しました。

例年であれば、トーナメントの覇者が夏のビッグマッチでKO-D無差別級王座の挑戦権を得る構図なのですが、今年は少し、趣が異なっていました。


トーナメント開幕直前、KO-D無差別級王者・遠藤哲哉の欠場発表。

その後、遠藤の要望で返上された、KO-D無差別級王座。


かくして今大会は、"トーナメント覇者が王座戴冠"というシチュエーションで開幕を迎えることに…。


遠藤哲哉に加え、今年4月より海外遠征中の竹下幸之介も不在。

レギュラー参戦を除き、外部参戦やサプライズ枠も皆無。

文字通り、『KING OF DDT』を決めるトーナメントは、公式戦全14試合が激闘の連続でした。


最高にエモーショナルだった今年のトーナメント。
これを語らずにはいられなかったので、私が3大会を生観戦して感じたことを、今回は書いていきたいと思います。


①背負う者の矜持

私が今回のトーナメントを一言で表すなら、【背負う】というフレーズに集約される気がしました。

前述した王者・遠藤の欠場が大きかったと思いますが、王者不在という危機の中、「皆で団体を背負う」という気概が1回戦から溢れ出ていましたから。

その点で、個人的に筆頭格だと感じた選手が、樋口和貞と吉村直巳。


無差別級王座戴冠を嘱望されながらも、中々王座に手が届かなかった樋口。

デビュー当初からガタイが出来ていて、トップ戦線も時間の問題と思われながら、樋口同様にシングル王座未戴冠だった吉村。

トップを獲るのに申し分ない実力ながら、シングルに縁が無かった2人。


しかし、本トーナメントでメインを締めた際のマイクや、決勝の舞台に上がってきたところなんかを見ていると、この二人が背負っていたものは非常に大きかったですし、その重みに負けない姿をトーナメントで見せていました。

特に樋口に関しては、遠藤欠場のキッカケとなった試合に仲間として立ち会っていた点や、遠藤の代打で参戦したFortune Dreamで小橋建太から高評価を得た点、記者会見のマイク等々から、「今年は樋口が優勝しないと」という周囲の期待値も注目も大きかった印象。

そうした圧倒的ハードルの高さを超えて、メインで年間ベストバウト級の内容を叩き出してきた所にグッと来た私。

本当にカッコよかったです!


②ネクストジェネレーションの台頭

今回のトーナメントは、次世代のDDTを担うであろう若手選手の台頭が目立った大会とも言えます。

決勝進出者4選手中(※)、KO-D無差別級王座の戴冠経験がない選手が3人揃った点も、新しい風を予感させるものがありました。

※上野勇希、吉村直巳、秋山準(戴冠経験あり)、樋口和貞


トーナメント一回戦が行われた6.16新宿FACE大会では、納谷幸男やKANONが出色の出来。
二人共、1回戦で敗れてしまったものの、DDTのシングル戦線でターニングポイントになり得る内容を残してきました。

特に納谷は、この日のメインで樋口を相手にバッチバチのぶつかり合い。
シングルプレイヤーとしての萌芽を感じさせる、素晴らしい内容!

ただただ、拍手の量が凄まじかった…。



③過去を消化も昇華も出来る、プロレスの面白さ

今回のトーナメントは、試合内容だけでなく、ドラマの面でも突出していた気がします。

プロレスは、過去の事象を消化したり、昇華したりすることが出来るもの。
その可能性を強く感じたトーナメントでもありました。


サイバーファイトフェスにおけるNOAH勢との対抗戦全敗や、遠藤欠場というネガティブな要素を払底するかのような、激闘の数々。


アクシデントという点を線に繋げる逞しさ。


何より、私自身グッと来たのは、樋口が獲得したベルトを秋山準が巻きに現れたシーンでした。


2021.3.28、「負けたら相手にベルトを巻く」という条件で臨んだ秋山準とのKO-D無差別級王座戦に敗れ、秋山の腰にベルトを巻くことになった樋口…。

声出し禁止の会場で、ファンから「(樋口に)巻くな!」と悲痛にも思える怒号が飛ぶほど重々しい空気だったことは、今でもハッキリと覚えています。


そんな屈辱的光景から1年以上が経過…。
『KING OF DDT 2022』の舞台で秋山にリベンジを果たし、優勝後に秋山からベルトを巻かれる樋口の姿が、そこにありました。

屈辱が歓喜に向けたバネとなり、ゴールに到達していく過程。

こういう光景を久しぶりに見たことで、プロレスは大河ドラマだと改めて実感した次第です。


まとめ

今回の『KING OF DDT 2022』は、サイバーファイトフェスの対抗戦以降に抱えてしまったモヤモヤ感を、纏めて吹き飛ばすくらいの爽快感に溢れていました。


このトーナメントをやり終えた事で、DDTの逞しさがまた一段上がったのではないでしょうか?
この先、団体にとってターニングポイントとして語られそうな歴史的瞬間に立ち会えた幸せ。

素晴らしいトーナメントでした!



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