【蛍光灯2020年問題】を経た、横浜武道館のデスマッチについて
【※注意】本記事では流血写真が登場します。予めご了承ください…。
はじめに
2010年代半ばに入り、まことしやかに囁かれるようになった蛍光灯の製造中止。
(所謂、『蛍光灯2020年問題』)
LED照明の普及目標が設定されたことに伴い、【フロー100%】が掲げられていた2020年を待たずして、主要メーカーが相次いで蛍光灯器具・蛍光灯ランプの製造中止を発表…。
日本照明工業会によると、2021年4月~2022年2月までの出荷数量において、LED器具が全体の99%以上を占めているという自主統計結果を明らかにしている。
こうした蛍光灯の製造中止に対して、早くから反応する者達がいた。
プロレスファンだ。
1997年に松永光弘によって考案され、今ではデスマッチの代表的凶器とも言える蛍光灯。
私自身、大日本プロレスやプロレスリングFREEDOMSといったデスマッチ団体の大会に多く足を運べている訳ではないけれど、それでも、東西南北の4面に蛍光灯を並べる形式は、以前に比べて少なくなったようにも感じる。
ただ、これは蛍光灯問題というより、多種多様なデスマッチアイテムが開拓されたことも大いに関係していると、私は考えている。
蛍光灯が使えない横浜武道館に、デスマッチ団体が初進出
2022年のゴールデンウィーク、個人的に興味深い出来事があった。
それは、【デスマッチ団体の横浜武道館進出】。
5.3にプロレスリングFREEDOMS、5.5に大日本プロレスが、同会場で初めてビッグマッチを開催した。
前者は団体最大規模のビッグマッチ、後者は2020年に閉館した横浜文化体育館以来となる横浜ビッグマッチだった。
横浜武道館でのデスマッチ自体は、2021年8月にアイスリボンで開催実績があるものの、今回の同会場では蛍光灯を始め、飛散するアイテムが使用不可(画鋲、ガラスetc)。
2020年に閉館した横浜文化体育館ではお馴染みだった蛍光灯の使用禁止。
生産中止に加え、初進出の会場で使用できないという、蛍光灯受難なシチュエーション…。
この状況下で両団体が提示したのは、【大箱にも負けない、団体の十八番】であった。
【身近さ】と【絵作り】で極めたFREEDOMS
5.3FREEDOMS横浜武道館大会では、全8試合中4試合でデスマッチが組まれた。
個人的に印象深かったのは、アイテムの身近さと、映画を見ている感覚に襲われる圧倒的絵作りだった。
序盤戦で使用される、PC用キーボード、ゴルフクラブ、釣り竿といった身近なアイテム群。
セミファイナルの『葛西純vs佐久田俊行』で見せた、”美しい殺人”という美学。
メインイベントの『正岡大介vs杉浦透』による、KING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIP王座戦は、リングからマットを排したノーキャンバス形式に。
試合終盤、リング上の板が撤去され、露出する奈落…。
際の攻防を制し、奈落へ落ちる両者。
まるでホラー映画のような圧倒的絵を見た試合は、正岡が勝利して王座防衛。
葛西純も佐々木貴もいないメインで30代の2人が築いた激闘は、団体の新章も横浜武道館のデスマッチ史も明るく照らす、素晴らしい内容でした!
圧倒的な【高さ】で魅せた大日本プロレス
5.5大日本プロレス横浜武道館大会では、全9試合中デスマッチは2試合という構成。
FREEDOMSに比べてデスマッチは少なめだったものの、大会場に【高さ】で打って出た印象を受けました。
第5試合で組まれた『伊東竜二&木高イサミvs石川勇希&影山道雄』では、ギガラダーによる高さが見事に会場映え!
試合後の表情も素晴らしかった!
セミファイナルのBJWデスマッチヘビー級王座戦・『宮本裕向vsドリュー・パーカー』では、スキャフォールド(=建築足場)がリング上に聳え立つ、圧巻の光景が展開!
スキャフォールドという絶対的アイテムから逆算するかのような、足場下の攻防も良き。
終盤に差し掛かると、スキャフォールドを絡めた攻防が激化!
スキャフォールド上を最後に制したのは、挑戦者のドリュー・パーカー!
2度目の王座戴冠を果たしたドリューの姿も試合内容も、最初の王座戴冠(2021.7.23)より充実していた気がします。
大会場に負けないデスマッチが、『宮本vsドリュー』にはありました!
まとめ
プロレスリングFREEDOMS代表を務める佐々木貴が、2015年に『蛍光灯2020年問題』について触れた際の発言である。
あれから約7年後の2022年5月に刻まれた、横浜武道館のデスマッチ史。
終わってみれば、FREEDOMSや大日本も、"蛍光灯無しで魅せるデスマッチ"を提示する素晴らしい大会となった。
一方、2020年に横浜文化体育館が無くなった事で、後楽園ホール以上の規模で蛍光灯デスマッチを開催できる会場に窮している印象を受けたのも事実。
そもそも、デスマッチが開催可能な会場探しも、近年は困難を極めているという…。
もしかしたら、今後デスマッチで蛍光灯を目にする機会が、希少動物を見る位難しい状況が来るのかもしれない。
それでも、デスマッチ自体が廃れる事は無いと、私自身感じている。
蛍光灯以外の凶器にフォーカスしていった塚本拓海(プロレスリングBASARA)
平成も終わりを迎えるタイミングで生まれた、電動工具やポートレートといった新型凶器の数々。
蛍光灯の有無で面白さが決まったり損なわれたりしてしまう領域には、既に無いという確信。
蛍光灯生産中止や横浜文化体育館閉館という2020年を越えて、横浜の大会場で繰り広げられたデスマッチは、そんな新風と歴史を感じる素晴らしいものだった気がします。
またデスマッチが見たい!