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日本に運ばれたデコる文化"東京都庭園美術館 アール・デコの貴重書"

もう「デコる」って最近使わないかもしれないけど、現代の「デコる」文化に多大な影響を与えているアール・デコ。日本でアール・デコの建築やインテリアを本格的に堪能できる場所と言えば、東京都庭園美術館だろう。

この建物は、1933年に朝香宮邸として竣工した。朝香宮夫妻は1922年からフランスに軍事研究のため留学し、帰国後に、当時フランスで全盛期だったアール・デコ様式を用いた自邸の設計を芸術家アンリ・ラパンに依頼した。アール・デコに造詣の深い朝香宮家の王妃内親王は、建物の建設に尽力したが、残念ながら建物が完成した数ヶ月後にこの世を去った。迎賓館として使用されていた時期もあり、現在は美術館として開放され、新館も建設された。

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今回の展示は「アール・デコの貴重書」と題して、当時の装飾文化が伺える貴重な写真や書籍を見ることができる。
この建物が当時から現代までの日本にもたらした影響をアール・デコの発展と共に知ることができる。

1.繊細さが際立つルネ・ラリック

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ルネ・ラリックはアール・ヌーヴォーとアール・デコの両方の時代で活躍した稀有な芸術家だ。宝飾品のデザインで名声を得たが、模倣品の出現により限界を感じていた。その後まもなく工業化の動きが加速し、時代はアール・デコの時代へ移行した。彼はガラス工芸作家としてアール・デコ時代において更なる活躍を遂げた。
彼の作品は建物の玄関正面のガラス扉から始まり、この建物の象徴的な存在でもある。翼を広げる女性像のガラスレリーフは、繊細でかつ気品に満ち溢れている。
その先で出迎える大客室のシャンデリアも彼の「ブカレスト」という名の照明作品だ。芸術性を保ちながら、シンプルに製作におけるプロセスも考慮された形状になっている。
それでいて、これらのデザインは現代のファッションやアクセサリーなどにもその片鱗を感じ取ることができる。

2.マルチプレイヤーのアンリ・ラパン

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朝香宮夫妻から本建物の設計を依頼されたアンリ・ラパン。肩書きは、画家、室内装飾家、デザイナー。その他建築、家具、ステンドグラスや陶磁器も手掛けるマルチプレイヤーだ。本建物でもその才能が発揮され、細部に至るまでその世界観が貫かれている。
特筆すべきが巨大な白磁の置き物だ。これは「香水塔」と呼ばれ、上部の照明の熱で香水が香る仕組みだったそうだ。えっ、香らせるためだけに部屋があるの?って感じだが、天井は半円球状の折り上げになっていて、間接照明が柔らかくその形状を浮かび上がらせていて、ここでしか味わえない何とも魅力的な空間になっている。

3.時代を超越する芸術性

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今回の展示会では、アール・デコが台頭したパリ万国博覧会の様子や当時のフランス装飾に関する書籍や雑誌が本館、新館で展示されている。
驚くことに古さは一切なく、雑誌のカラーバリエーションや表紙のデザインなど現代のグラフィックデザインに通じるものがある。

自分の身の回りにあるファッション、アクセサリー、インテリア、ファブリックはアール・デコで生み出された直線、幾何学模様や円弧によるデザインが多用されていることに改めて気づく。
シンプルで時代を問わないデザインでありながら、どこか自分らしさを表現できる。これが誰もが取り入れたくなる、「デコる」の真髄なのではないだろうか。

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