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思い思いに過ごす場所"安藤忠雄の十和田市民図書館"

十和田市には親戚がいて定期的に行っている。十和田市現代美術館ができてから観光客が海外からも訪れ、地元民は困惑してる上、近くにまた変わった形の建物を建てている、と数年前に聞いた。竣工してしばらくして十和田を訪れた際に、安藤忠雄氏が設計したとは知るよしもない親戚の小学生が、よく本を借りにいくそうで案内してくれた。

十和田市民図書館は2015年に竣工し、十和田市現代美術館や草間彌生氏の南瓜のすぐ近く、市の中心部である官庁街通りに位置する。
周りに大分インパクトがある建物が多く、安藤忠雄の作品の中でも大阪の中之島の図書館ほどの注目度があるわけではない。ただ地元の人達が普通によく使われている図書館だということが一目でわかる。

1.大屋根から入る柔らかな光に長居してしまう

大小の三角屋根が建物に5箇所あり、垂直面のガラスから建物内に光を届ける。エントランスや読書スペースなどに降り注ぐ光の中で、本を読んだり子ども達は宿題をしたり、思い思いに過ごしている。安藤忠雄氏はこのサンルームをあえて目的を絞らない空間にすることで、独自のコミュニケーションが生まれ"本ではない本"による考える力を身につけてほしい、と語っている。

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2.配棟がシンプルで本が探しやすい

官庁街通りに平行して細長い平屋の棟が3つ並び、棟の間には中庭が設えてある。図書館というと書棚がずらっと並び種別のサインをヒントに書棚を行き来し、閉鎖的になることが多い。この図書館では書棚の高さも抑えられ、見通しが効く。自分の世界に入った子どもも探しやすい。

3.中庭の桜を眺めて創造力を膨らませる

棟に挟まれた中庭には樹齢100年と言われる桜が植えられている。中庭に面してカウンターが設置してあり、人々は勉強したり、新聞を読んだりしている。自然に慣れ親しんできた地元の人々は、やはり自然が感じられる空間の中で本や新聞にある文字からイメージを膨らませている。

建物面積に対して、多棟構成で外壁比率が高い。図書館としては本の日焼けが懸念されるが、計画的に開口部が設定されている。ちょっと地味だが、地域に根強いたこの図書館は、技術や意匠を卓越して安藤忠雄氏の地域の人材育成への思いが詰まっている。



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