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ホスピタルアートから生まれた詩画集"うたをうたうとき"

詩画集を読む時間は、とても豊かな時間だ。

詩画集「うたをうたうとき」の詩は童謡や小学校の教科書で必ず幼少期に触れる、まどみちお氏。絵はKIGIでアートディレクターを務める渡邊良重氏だ。

キギは渡邊氏が植原亮輔氏と共に2012年に設立。グラフィックデザインやプロダクトを手掛けている。またJINSやお菓子のAudreyのブランディングでも有名だ。ピュアな物語性とそのポップでエレガントなデザインでファンも多い。

この詩画集は、山口県の病院でのホスピタルアートから誕生した。同県出身の渡邉氏が病院から依頼を受け、同じく同県出身のまどみちお氏の詩をモチーフにしたアートが実現した。

実際のホスピタルアートはモザイクアートであり、渡邉氏の絵に基づき、イタリア在住のアーティスト永井友紀子氏が石や陶磁器、ガラス、木のモザイクで仕上げ、日本に送られ設置された。

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詩画集のタイトルを見て、しばらくして思い出したのが、木下牧子氏作曲による合唱曲「うたをうたうとき」だ。どこかの音楽会で聞いたことがあり、母に聞いたら「歌ったことあるわよ」とあっさり言われた。木下牧子氏はそよ風にのって届くような爽やかな曲が多く、この曲もまたそっと耳に届き、あー歌いたいな、と思わせる。

音楽は詩に息づかいやハーモニーを生み出し私たちに届く。それは詩画集と似ている。

うたを うたうとき

うたを うたう とき
わたしは からだを ぬぎすてます
からだを ぬぎすてて
こころ ひとつに なります
こころ ひとつに なって
かるがる とんでいくのです
うたが いきたい ところへ
うたよりも はやく
そして
あとから たどりつく うたを
やさしく むかえてあげるのです

詩画集に触れて思うこと。

1.詩に色彩が生まれる

ホスピタルアート以外の新たに詩画集に入る絵もモザイクアートのテイストに合わせられている。ピンクやブルー、パープルなど色鮮やかなモザイクが生き生きとしていてまた優しい。詩が絵の中に飛び込み、詩と絵が融合する。

2.日常の風景の見方が変わる

まどみちお氏は日常に起きる何気ないことを詩にしている。ただその何気ないことが、奇跡のように素晴らしいことだと気付かせてくれる。これから草木やチョウや鳥を見るとき、眠るときや空気を吸うときでさえも、何か特別な行為のように思わせてくれる。

3.詩や絵は何も結論付けない

ホスピタルタルアートが病院にもたらす効果は多くあるが、そこにいて見る人に考えを巡らせる、想像させることもひとつの効果だ。その為か詩や絵は考える余白を残しているように思える。そして自分で解釈したりイメージを膨らませたり、自分に前向きになることのサポートを詩や絵が担っているのだろう。


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