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半沢直樹を視聴して

最近、久しぶりにparaviで半沢直樹シーズン1を見た。

半沢直樹。2013年にTBS系列、日曜劇場枠で放映された池井戸潤氏の小説を原作とするテレビドラマだ。平均視聴率28.8%、最高視聴率42.2%。

面白かった。主人公半沢直樹が不正を暴きながら悪を正していく。何度も権力に押し潰され、揉み消されそうになりながら、それでも最後は、正義の鉄槌をくらわす姿が、実に痛快だ。

豪華俳優陣による「やり過ぎじゃない?」と思える程のくさい演技と剣道の心得がある主人公が悪の暴力にゴルフクラブや杖で応戦する状が時代劇を彷彿とさせる。中野渡頭取(北大路欣也氏)に関してはカツラと着物を着ればそのまま時代劇になってしまいそうな台詞やシーンすらある。現代劇と時代劇のハイブリッドな感じが幅広い世代にうけて高い視聴率に繋がったのだろう。

しかし、登場人物が全般的に私情や私怨を仕事に持ち込み過ぎる傾向が強い。主人公にいたっては、私怨が仕事のモチベーションになっている節さえある。

実家が小さなネジ町工場を営んでいる主人公の父親は、銀行からの融資を切られた事により自殺している。その時の担当者が今の主人公の上司的な立場になる大和田常務取締役だ。その後、工場は父親が生前開発していた新型ネジのおかげで街金から融資を受けられる事になり、もち直している。

主人公もその家族も、父親の自殺の原因を銀行に融資を打ち切られた事としているが、銀行は慈善事業ではないのだから、自分たちの利益にならないと判断したら融資をやめるのは当然な判断だと思う。主人公が大和田氏のネジの可能性を見極められなかった無能さを指摘する場面があるが、無能にしては出世し過ぎているし、そこらへんの判断は人によって異なるところであると思う。

私怨を持つ者は結果論で語る傾向が強い。しかし結果が分からない当時においては所詮可能性であって、それをどう判断するかは難しい。

大和田氏は常務取締役にまでなっているのだから、かなり優秀な男だと思う。そんな優秀な男が判断を間違っているとするのはグレーだと思う。そういうやり方で常務取締役にまでなっているのだから、銀行には莫大な利益をもたらしているのだと思うし、銀行員として妥当な判断と考える方が自然であると思う。

もし本当に新型ネジでもち直せるという確信があったのなら、もう少し頑張れば、融資してくれる銀行が現れたかもしれないし、現に街金の融資によって工場はもち直しているのだから、自殺という決断をしてしまった主人公の父親の浅はかさが残念でならない。

もちろん大和田常務は他にも不正を行なっていて、悪と認識されるには十分な要素があるのだけれど、その不正に関しても私利私欲を満たす為ではなく、奥さんの会社の経営不振をたすける為であって、人間的に全く悪と認識するにはあまりにも可哀想だ。

仕事を全うした結果怨まれ、奥さんの為に道を踏み外してしまう羽目になり、結果、悪と認識されてしまう事になった大和田氏が不憫でならない。

頭取の最後の温情的処分が唯一の救いであったと思う。

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