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セピア色の思い出

九月も中旬を過ぎると、朝晩は少し冷え込むようになり、先月までの暑さが嘘のようです。夜毎の虫の声が気になり、彼岸花もいつのまにか田圃の畦を彩り始めています。いよいよ秋なんですね。

雨も少なく、猛暑続きの夏でしたが、花や虫には僕らが気付かない季節の変化が判っているんでしょうね。僕らもきっと昔は持っていただろうそんな能力をどこかで置いてきたのでしょうね。寂しい気もします。

『花札は祖父の笑顔の思い出でした。』

突然に訳の判らない事を書きましたが、今回のエッセイはお彼岸に書いています。

皆さんはお墓参りに行かれましたか?
先日、家族揃って、お墓参りに行ってきました。お墓の周りを掃除すると不思議と気持ちが落ち着きます。今年は祖父の25回忌で、先日法要がありました。

幼い頃の僕は、祖父母からとても可愛がられ、俗に言う『三文安い年寄っ子』でしたが、今の僕の考え方も二人からの影響が大きいんです。
祖父は船大工だったのだけど、記憶の中の彼はもう引退しており、一日中本気で遊んでくれる優しい人でした。祖父の家は、僕の実家から5キロくらい離れたところにあって、そこに遊びに行くのが幼い僕の楽しみのひとつでした。

土曜日に幼稚園から帰ると祖父が来ており、祖父の自転車に揺られて出かけていきます。一泊し日曜日の夕方に同じように自転車で帰ってくる訳ですが、祖父が帰る頃にはまた連れて行けと泣くものですから、祖父は困った顔でそれでいて嬉しそうな顔で、結局今来た道を連れて帰り、翌日の幼稚園の間に合う時間にまた連れてくる事になるのでした。

それくらいに好きな所ですから、悪戯をしてお袋から
『そんなに言うことが聞けないなら、出て行きなさい。』と叱られても、
嬉しそうな声で『はいっ!』と返事をすると、子供なら1時間はかかる祖父の家まで出かけていくのですから、お袋も怒る張り合いがなかったでしょうね。ほんとに変な子(笑)。

そんな祖父が実家に来る途中、交通事故で亡くなったのは小学校に上がったばかりの頃で、ショックで泣き続け、最後には熱を出して、数日間、寝込んだのだそう。
その時の記憶がないことからもショックの大きさを感じます。

そんな祖父母が僕に教えてくれた事は、『人の心を大切に、傷つけてはいけない。』という事でした。だから僕は、寂しそうな顔をした人や元気のない人を見ると、何とかして笑わせてやろうと思うようになりました。
だって笑顔はどんな人でも素敵ですから…。

そうそう、花札の話でしたね。

祖父は子供の僕に花札を教えてくれたんです。
今思えば、僕の子供の頃の最初の記憶は、座布団を挟んで花札をして遊ぶ孫と笑顔の祖父のそんなセピア色した風景から始まっているんです。

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