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繊維のめぐる、産地をめぐる。| REKROW #0

繊維産地の新しいめぐりかた【REKROW:リクロー】

繊維を織り上げた素材で、製品をつくり、
役目を終えた製品で、また素材をつくる。

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そんな、循環型プロジェクト。

昨年10月に誕生したREKROWは、繊維産地継承プロジェクトの一環として始まりました。

繊維のめぐる産地 | 広島県福山市

繊維に関する企業が大小合わせて数十社を優に超える町。広島県福山市。

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そんな福山市の北東部に位置するエリアは、繊維産業の密集地。今回は、プロジェクトメンバー3名が繊維産地のことを知るために、2月末に訪問した4社を紹介します。

繊維産地の技術を残す | 
Hitotoitoデニムスクール

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本プロジェクトメンバーでもあるHITOTOITOの黒木さんによる案内から始まった当日。

HITOTOITO デニムスクールは、一ヶ月間のカリキュラムを通じてオリジナルのデニムパンツを制作できるようになるプログラムです。

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参加する生徒さんは主婦や会社員、繊維関係者とさまざまで、知識も技術も一人ひとりに差があります。その全員を教える先生もまた、繊維産地を支えていた一人。

そしてデニムスクールを企画運営するのは、産地継承プロジェクト委員会HITOTOITO。

江戸時代に綿花栽培を奨励されたことをきっかけに、備後絣という生地を生産する全国有数の産地となった福山市。その後はデニム需要の増加に伴って繊維産地として成長を続け、国内外からの発注を担ってきました。しかし、産地の技術は後継者がいなければ途絶えてしまいます。

デニムスクールを始めたきっかけは、地域の課題として感じた繊維産地の後継者不足を解決すること。デニムスクールを通した技術と知識の継承のため、地域の繊維関連企業も協力しています。

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地域の繊維関連企業から受け継いだミシンや専用機械を利用したスクールは、2021年3月現在で第7期までを終え、すでに57名が卒業。それぞれが多方面で活躍の場を広げています。

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とある生徒さんは「孫のために可愛いデニムパンツを作りたい」と悪戦苦闘。曲線をミシンで縫うって、とても難しいそうです。

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普段何気なく履き続けるデニムを作り上げる工程の奥深さや、工業用ミシンの扱いの難しさを垣間見ることができました。

ワークウェアの新しい形 | 
株式会社 藤和(TS DESIGN)

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工事現場の作業着を、もっとかっこよく。

まるでアウトドアウェアのようなデザインと、利用シーンに合わせた作業性を兼ね備えた作業服を制作する(株)藤和 / TS DESIGN

プロジェクト第一弾としてREKROWの素材となるデニムユニフォーム(※1)は、設計からコンセプトワークを含め同社と共同で制作されました。
(※1:常石造船(株)の社員が2年間着用後に回収した約1,800着のデニム生地のユニフォーム)

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案内は、ブランド戦略部の田中さん。本社内にはショールームが併設してあります。

「現場の若いお兄さんが、白い上下のユニフォームで作業していたらかっこいいじゃない?」「日本だからできる作業着づくりがしたいんだよね」そんな言葉とともに、日々新しい製品を開発していると話す田中さん。

ショールーム内のディスプレイもすべて社員の手作りと聞いて、見学メンバーもワクワクしていました。

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スーツのジャケットみたいな作業着の試着風景。

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新しい製品染め事業の展示スペースも、社員によってディスプレイ。

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染料を細かく調整し、要望に応じたオリジナルカラーのワークウェアを制作します。

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同行していた社員の一人にお話を伺うと、
「いつも社長の近くで企画を考えたりプロジェクトを任されることが多くて、刺激的で楽しい職場です」とのこと。こんな言葉が出る環境って、中々ないですよね。

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まだ詳細は公開できませんが、着々とREKROWとのコラボ製品が仕上がってきています。すでにプロトタイプは完成済み。

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2021年9月のプロダクト発表会が楽しみです。

繊維製品を染色・加工・仕上げる | 
株式会社 四川

会社名は「しせん」ではなく、「しかわ」。案内していただいたのは藤井さん。

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写真は製品の乾燥機。何とも言えないレトロフォントに、見学メンバーの声もワントーン上がりました。

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スペインから取り寄せたという無水型の乾燥機も併設。水を使わないから、環境に優しい。そんなSDGsへの配慮も忘れていません。

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染めやダメージ加工を行う同社。

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工場内では、黙々と作業されている従業員さんを何名も見ることができました。真剣な表情と工場の空間がなんだかかっこよくて、写真を撮る僕にも熱が入りました。

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製品の刺繍・加工を行う | 
有限会社アルファ企画

入ってすぐ目に入ったのが、横に長い装置。

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これは12の製品を同時に刺しゅうする装置で、他にもレーザー加工機などが所狭しと置かれています。

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案内は廣中さん。そして、代表も廣中さん。

実は廣中さん一家によって経営される同社。社外秘の製品が多いため写真は少ないですが、「製品の加工で困ったらアルファ企画に頼め」という、暗黙ルールすらあると話します。

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刺しゅうコンテストにおいて海外の受賞経験もある代表。

ミーティングルームの周りに所狭しと置かれていたのは企業案件のサンプルたち。グローバルブランドの試作品も多く、代表からあふれ出るアイデア製品の数々には思わずため息が出ました。

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代表のテーマは「木」と「デニム」。REKROWとどう繋がるか、楽しみです。

繊維のめぐる、産地をめぐる。

あっという間に過ぎた1日。改めて感じたのは、パートナー企業の技術力とアイデア力の高さです。

本プロジェクトは、参画いただく繊維企業によってはじめて成り立つプロジェクト。そして今回訪問した全ての企業で、製品開発に前向きな話ができました。

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REKROWという一つの想いに、たくさんの企業が賛同してくれる。福山市の中に繊維産地が未だ残り続ける理由が、今回の訪問で少しわかった気がします。

プロジェクトREKROWは走り出したばかりですが、3月からはいよいよイベントがスタートします。また次の記事で、お会いしましょう。

(文・写真:ナカニシ ミツヒコ)

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