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勝手に動き出すキャラの作り方~キャラが勝手に動く派物書きの私がキャラを作っている時の脳内~

前書き

個人サイト「みちなり文庫」で公開した記事のnote版です。
キャラが勝手に動くタイプの物書きである自分が、普段どのようにキャラを作っているかについて語った記事となります。

最初は、当時XなどのSNSでプチ話題になっていた「キャラが勝手に『動き出す』か『動き出さない』か」から派生して書いた、単なるエッセイ記事のようなものでした。
が、意外と多くの方に見ていただけ、「キャラ作りの参考にしやすい」「わかりやすい」「似たような書き方をしていた」等々嬉しいお言葉をいただけてテンションがあがったため、noteでも公開してみちゃいました。

個人サイトでは全4回にわけて記事を公開したのですが、noteでは通しで見やすいように、1つの記事にまとめてあります。
むこうは記事内に目次が設けられないのでわけていたのですが、notoでは目次が設けられるので……。
目次があるなら、1つにまとめても読みやすいのではないかな、と思った次第です。

タイトルにも、個人サイト版にはなかった「勝手に動き出すキャラの作り方」という文字を入れてみました。
我流なやり方にはなりますが、もしキャラ作りで悩んでいる方の参考になればと思い、わかりやすく「作り方」の言葉を付け足した形になります。

そんなわけで、以下、個人サイトで掲載している文章です。
一部noteのまとめ版用に文章を改変していますが、内容自体は変わりありません。あらかじめご承知おきくださいますと幸いです。


個人サイト掲載時の前書き(すっ飛ばしOK)

今、XなどのSNSでプチ話題になってる「キャラが勝手に『動き出す』か『動き出さない』か」というお話。

自分もこのプチウェーブに乗って、「キャラが勝手に動く派」であることをポストしてみたのですが……。
いざやってみると、キャラが勝手に動く感覚を説明するのがなぜか凄く難しかった(白目)

というのも、自分が「勝手に動き出す派」なのは知ってるのですが、実はキャラ作りそのものは感覚でやっているせいで、「勝手に動き出すようなキャラをどう作り上げてるのか」を自分自身で理解していなかった事がここで判明。

パッと作って、サラッと矛盾点がないか見直して、あとはポポポポーンと勢いに乗ってどんどん生み出しちゃうので、言語で理解したことがなかった(遠い目)

せっかくのいい機会なので、自己分析もかねて「パッと、サラッと、ポポポポーン」の間に自分が何をやっているのか言語化してみようかと思います。

これが「勝手に動き出す派」の総意とは決して言えませんが、イチ「勝手に動き出す派」の頭の中を見てみたい方は、よければ最後までお付き合いしてやってください

見本キャラの紹介:看板作『Herec』主人公

わかりやすくキャラの作り方を解説するために、参考資料としてうちの子から1人見本となるキャラクターを出そうと思います。

出すキャラクターは、勝哉の看板作である青春社会人バンドもの『Herec』シリーズの主人公・酒井透(さかい とおる)です。

↑↑↑うちにあるアクスタ版 透くん。最近、台座を透明なやつから可愛いやつに新調した。可愛い。

『Herec』シリーズについてめちゃくちゃ簡単に紹介しておくと、「いろいろあって音楽をやめた奴らが、いろいろあった末に社会人になってからもう一度バンドを組む」という感じのお話です。

なので、今回見本にする透くんも社会人

年齢は26歳
小学校の先生をやりながら、趣味でバンドをやっているキャラクターとなっています。
あ、パートはボーカルです。

詳しいキャラクター性は、ここから先の項目でキャラが完成するまでの過程と共に話していくので、ここでは割愛。

もし「『Herec』を知ってからこの記事を読みたい」という方がいたら、以下のリンクから読めますので、そちらに飛んであげてください。
本編だけでいいなら無料で読めます(番外編等の有料あり)

それでは、ここからは透くんができるまでの過程(当時の私の記憶)を脳内スロー再生して、分析してみた結果となります。

ステップ1. 核になるワードを設ける

私が透くんを生み出すために、まず最初にしたこと。

それは、彼の性格の核になるワードを設けることでした。

実は、透くんを生み出す際、「絶対に『アホの子』主人公がいい!」という謎の決意を固めていた私。

なぜ「アホの子」だったのかはわからないんですけど、とにかくアホの子がよかった。

この点について今思い返してみると、「『明るくて爽やかな青春もの』が書きたかった」のが理由だったのではないかなと思います。

「お話が明るくて爽やかなんだから、主人公も明るくて爽やかで元気な奴がいい!」とでも、思考回路が働いたのかもしれません。たぶんおそらくきっとメイビー。

とにもかくにも、これにより透くんの性格の核が「アホの子」になる事が決定(言葉に書き起こしてみると、ずいぶん酷い核だな……)。

核が決まったら、次はそのキャラが「アホの子」と読者にも認知してもらえるよう、「アホの子」らしい性格を与えていきます。

まずは「『アホの子』に見えるよう人ってどんな人物かな」という問いかけを自分にする

「元気いっぱいな明るい子!」「空回りする事も多そう」「無邪気!」「へこたれない」「たまに人が思いつかないような事もしそう」等々、そんな感じで「アホの子」から連想される人物像を頭に思い浮かべていく。

この時、自分の中に核になるワードに対する解像度が低くて言葉が出てこなかったら、そのワードの意味や定義を調べてみる事もあります。

自分が知ってるキャラの中から似たような感じの子を探し出して参考にする場合もある。

そんな感じで連想した人物像を透くんの性格として、彼に与えていきます

これにより、彼の「表面上の性格(第一印象)」が完成

初見さんが透くんを見た印象として「アホの子」、場合によっては「アホの子」から連想してつけた「明るい子」や「元気な子」、「前向きなキャラ」という人物像を持ってもらえるようになります。

ステップ2. 年齢や職業などに合わせて性格に深みをつける

ステップ2では、キャラの「個性」をつけていきます。

「ステップ1でも充分個性が出てない?」って。

そ、そうなんですけど、ステップ1の状態だと、一応まだ第一印象しかできていないので……。
生きたキャラにするにはその中身(個性)も作らなければ……。

パソコンだって、外身だけあって中の回線がなかったら動かないですし。
キャラの性格の外装を作った後は、中身の製作も必須。

ここで製作に必要になってくるのは、キャラクターの「人生」です。

具体的には、透くんの場合「年齢」と「職業」の2つが重要な要素となりました。

彼の性格の核は「アホの子」ですが、彼には「26年間生きてきた」という人生歴があります。

つまり彼は、世で言うところの成人をすでに果たした「大人」であり、さらには「小学校教諭」という人に教える立場にもある。

そんな人物が、ただただバカみたいにアホな事だけをして生きているわけがない

アホの子らしく勢いで動いちゃう時もあるとは思いますが、彼の人生を考えた時、引くところはちゃんと引くし、ダメな事はちゃんとダメって理解できる人間には育っているはず。

小学生という年齢幅が広い子らが集まる場所で仕事をしている関係上、幼い子とも話せるぐらいのコミュニケーション能力があってもおかしくはありません。

保護者の方や他の先生達とも話すと思うので、大人を相手にする時にどのような態度をするべきかもわかっているはず。

ということは、コミュニケーション能力もそれなりにある。

これを鑑みて透くんの性格を考えると、「性格の核はアホの子だけど、まったくもって考えなしの人間なわけではない」という事実に気づきます。

これにより透くんの「アホの子」は、「ただのアホの子」から「一歩深みを持ったアホの子」へ成長(「一歩深みを持ったアホの子」のパワーワード感、凄まじいね?)。

他のアホの子キャラ達とは違う、酒井透独自の個性を持ったアホの子キャラになりました。

ステップ3. 秘匿ハンドアウトを渡す

さて、ここまでのステップでで透くんの性格の外身と中身が完成しましたね。

次は、よりイキイキとした言動ができるキャラに成長してもらう為、彼に「秘匿ハンドアウト」を与えたいと思います。

「秘匿ハンドアウト」というワードは、TRPGをやったことがある人なら一度は聞いた事があるかもしれません。

【ハンドアウトとは】
ハンドアウト:
 TRPGをプレイするキャラクターを作る際に、あらかじめゲームのシナリオに沿って用意されている設定。
 これがあるシナリオでは、渡されたハンドアウトに沿ったキャラクター設定を行う必要がある。
秘匿ハンドアウト:
 役割自体はハンドアウトと変わらないが、他のプレイヤーには秘匿にしておく必要がある設定のこと。  
 シナリオを展開に深く関わっていたり、キャラの言動を決める際の重要設定になったりする事が多い。

※勝哉個人の認識なので、間違ってたら誰か教えてやってください。

要するに「秘密の設定」「裏設定」って事ですね。

勝哉は便宜上「秘匿ハンドアウト」って言った方がテンションがあがるからそう言ってるだけなので、ほかに何かいい言い方があったら、そっちで全然いいと思います。
「秘匿ハンドアウト」ってワードに、我の中に封印されし厨二心が疼く……。

さて、上の「秘匿ハンドアウト」の解説にも記載した通り、この設定は物語の展開に深く関わっていたり、キャラの言動を決める際の重要設定になったりする可能性が秘められています。

つまり、この設定は「物語を動かす上で必要な裏設定」という事です。

ここで思い出してほしいが、「見本キャラ:看板作『Herec』主人公」で簡単に紹介した『Herec』のあらすじです。

本作は一度音楽をやめた人達のお話。
言ってしまえば、「挫折を経験した人達」の話ということ。
当然透くんも、この「挫折を経験した人達」の1人にあたります。

アホの子で明るくて元気な彼だけど、「夢に破れて挫折した経験」が彼にはある

つまり彼は「夢は叶わない」「努力は必ずしも実るものではない」という事を知っている人間なのです。

これは、彼が持つ「負」の側面になります。

そこで、その「負」の側面を利用して、こんな秘匿ハングアウトを透くんに与えました。

【酒井透の秘匿ハングアウト】
「挫折を知っているから前に進めなくなる時があるし、前に進める時もある大人」

挫折という苦い経験は、それなりに人の中にトラウマを残すものだと思います。

それが尾を引いて、いざ前に進まないといけない時に前に進めない……、といったような経験を味わった事がある人もたぶん少なからずいるはず。

透くんも例に漏れず、そうした側面を持っていることは想像に難くないです。

けど、同時に彼の性格の核は「アホの子」

前向きでへこたれない部分があるのも事実。

挫折を知っているからこそ怯える時もあるけど、元の性格の前向きさ故に挫折と向き合い一歩踏み出せる瞬間もある

実際、『Herec』作中では、この秘匿ハンドアウトを用いた展開がいくつかあります。

なかには、挫折の苦みを知りすぎてるが故に動けなくなるシーンもありましたが、そこは秘匿ハンドアウト「風穴」を与えたキャラが動いてくれたおかげで、どうにかなりました。

このようにしてキャラ個人の性格とはまた別に「裏設定」を設けておくと、キャラの言動を基にシーンを展開させやすくなるので、そのキャラらしいイキイキとした動きがあるシーンを作りやすくなるのではないかな、と思ったり。
個人的な感想ですが。

ステップ4. 思考を分割して配布する

今回が最後のステップです。
ここでは、キャラの言動に「説得力」を加えるための「キャラの思考回路作り」を行っていこうと思います。

「何を言っているんだ」という方がいたらすみません。
私も「何を言ってるんだ」状態で書いてる(遠い目)

え、えぇっと要するに、「『こういう風に思うキャラだから、この場面ではこういう事を言う・行動を取る』といったキャラが言動を行う上での『理由』を自然に生み出せるようにしよう」という事です。

たとえば、アホの子透くんの場合。

『Herec』の作中で「バンドをしたい」と言った際に、他キャラに断られるというシーンが存在します。

社会人でバンドをするデメリットを理詰めにされ、ぐぅの音も出なくなった透くん。

ここで彼が取った行動は、「ブチキレる」という行動でした。

本編ブチキレシーンの一部(画像)

ブチキレるは、「アホの子」という性格の核を見た時に取った行動です。

彼、一応考えることができる人間なんですけど、感情に左右されやすいのも事実なんですよね。

あまり理詰めにされたり難しいことを詰め込みすぎると、いっぱいいっぱいになって「わーーーーーーーーーっ!!!!」って頭抱えたり、大の字になったりしちゃう。

なので、それを考えるとこのシーンではブチキレるのが彼らしい言動かなと。

「地球が何回」のくだりは、子ども相手にしてたら聞くセリフかなと思って、思わず口走っちゃったという感じでぶち込みました(笑)

と、同時にこのシーンは、彼が「バンドをしたい」理由を語るシーンとしても制作してあります。

「社会人でバンドをやる」というのは、学生の時と違っていろいろな制約が発生するものです。

学生の頃はいっぱいあった練習時間も、社会人になったらそればかりに時間を取っているわけにもいかない。

ライブに出たくても仕事と重なったら、どっちを優先するか考えなくちゃいけない。

透くんの「バンドをしたい」という提案に断ったキャラは、この「デメリット故の難しさ」を重視してバンドを断りました。

けど透くんは、彼とはまた違う方向から「バンドをしたい」というアプローチをしています

これは、「バンドをしたい」という言葉から別れ出た「思考」です。

blueskyで一度呟いた記憶があるのですが、今目の前に1つの林檎があるとして、それを見た瞬間に考えることはきっと人それぞれ違うと思います。

「美味しそう」と思う人もいれば「うわ、りんごだ」ってドン引くりんご嫌いさんもいて。

ほかにも「赤いな」「形がいい」「大きい」「どうやって切ろう」「パイにでもしようか」「〇〇が好きな食べ物」「りんごといえば、この間りんご農園のニュースが」みたいな感じで人の数だけ思考が雑多に存在してる。

こうした雑多な思考は、その人独自の考えだといえるでしょう。

この雑多な思考を思いつく限り思いついて、各キャラの性格にあわせ、「そのキャラの思考」として分割配布します。

つまり先の『Herec』の例で言えば、「バンドをしたい」という言葉が「りんご」にあたり、このりんごに好意的な姿勢を見せてる人の意見を透くんに、否定派の意見を断ったキャラの思考として、分割配布した形になります。

こうすることで、各キャラが「バンドをしたい」に対してどのような思いを持っているかが、ハッキリとわかると同時に、「あぁこういう思考を持ったキャラなんだな」というのが察しやすくなります。

「アホの子だから、言動が感情に左右されやすい」だけでもキャラの個性だとは思います。

でもそこに、「アホの子だから、言動が感情に左右されやすい。けど、そこで感情が溢れたのには彼の中にこういう考えがあったから」という言動の理由まで表現できるようになったら、キャラの言動に説得力が生まれてより深みが増すんじゃないかな、というのが個人的な意見です。

と、大体こんな感じです。

…………わ、わかりましたか? 私、ちゃんと説明できてます?(震え声)

終わりに

以上。「キャラが勝手に動く派物書きの私がキャラを作っている時の脳内」の記事でした。

最初の方にも書きましたが、これはあくまでも勝哉のキャラの作り方になります。

同じ「キャラが勝手に動く派」の物書きさんでも、人によってきっと書き方が異なると思います。

実際、SNSで意見を眺めてたら、同じようなタイプの人達でもだいぶ意見が違って辺りしたので。
これこそ、人の数だけ思考がある証だね!ね!!

とにもかくにも、ここまでお付き合いくださった皆様はありがとうございました。

今回こうした記事を書いてみて、「感覚を上手く言語化できないの悔しいな」と思ったので、またいつかのタイミングで自己分析を兼ねて自分の中にある「感覚」を言語化してみたいですね。

感覚で書いてるものを意識的にできるようになったら、いろんな小説を書くのに応用できると思うし。
機会と時間があったらやってみたいです。

▼元の記事の掲載先
https://michinaribunnko-eimika.amebaownd.com/posts/54174068

【note版 おまけステップ】キャラが完成したら「たい焼きの儀」を行いましょう【有料】

ここからは、note版限定おまけ要素です。
せっかくnoteでも公開するのだから、公式サイトにはなかった要素があった方が面白いよね!

というわけで、ここでは勝哉が「キャラを作り上げた後、実際に原稿を書く前にやっていること」を書き込んでおこうと思います。

とはいえこの作業自体は、あくまでも「ちゃんとキャラが勝手に動くか」を試すだけのものなので、「キャラの作り方だけ知りたい」という方はスルーしていいと思います。
有料でもいいので気になるという方は、勝哉に「お茶代ぐらい払ってやんよ」「しっかり原稿励めよ」ぐらいの暖かな気持ちでお金をお布施してくれたら嬉しいな、なんて。チラチラ。下心、チラッ。

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