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Jimi Hendrix Experience『Electric Ladyland』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Jimi Hendrix Experience
リリース日: 1968/10/16
レーベル: Reprise(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は53位でした。

メンバーの感想

The End End

 1曲目を聴いて、あれ、聴いてたのってジミヘンだよな??とスマホをニ度見してしまった。間違えてIDM再生したかと思った……。
 本格的な幕開けの2曲目以降は、これまでよりも随分と肩の力が抜けたという印象。革新的なプレイをこれでもかと見せつけたファースト、ソングライティングにおいても非凡なものを持っていることを十二分に示したセカンドを経て、自分の価値を証明することから解放されたような。リズム隊やキーボードのプレイに身を委ねている瞬間がこれまでより明らかに多く、彼らとの何気ないおしゃべりを楽しんでいるようで微笑ましい。
 物足りないという声もありそうだけど、なんでもない時に平常心で楽しむならこのアルバムかも。

コーメイ

 「Voodoo Child」から全力疾走が、継続していたアルバムであった。たいそう攻撃的なギターがリードして、キーボードやドラムがそれを全力で伴走する印象を受けた。つまり、誰かがペースに遅れたならば、成功しなかったものに、全員が、同じ速さで駆け抜けたアルバムであると思われる。

桜子

 変なアルバム!エフェクトが相変わらずカッコいい!音作りにすごく拘ってる人だと思う。「Voodoo Chile」のサーと鳴るノイズなんて、神は細部に宿るっていう有名な言葉を想起させられる。自然発生をそのまま閉じ込める事の厳かさを感じる。

湘南ギャル

 あ〜〜もう、宇宙一かっこいい。ジミヘンのスタジオワークがこれで最後なの信じたくない。最後だと思うと全てが詰まって成熟した完璧な作品のように思えるけど、ジミヘンは生きてる限り、我々の予想を超えてくる作品を作り続ける人だったんじゃないかと思う。"ジミヘンの死はロックの死ではなく、ジミヘンの死でしかない"と、歴耳メンバーの誰かも言っていたけど、本当にその通りだ。彼は一個のカテゴリーに相当してしかるべきだ。少なくとも私は、この作品と同じような作品を知らない。

しろみけさん

 冒頭3曲を聞いてもわかるように、ジミヘンの脳内博覧会というか、ブルースとかよくわかんないすねもう。「Gypsy Eyes」の前半の四つ打ちとか、普通にダンスミュージックの"解"に辿り着いてるじゃん。ジミヘンから"で? お前ら、他になんかやることあんの?"って挑発されてるみたいだ。バンドミュージック、もうこれで終わっても良い。

談合坂

 "神クトリック・神ィランド、神とさせてください"だけ書いてあとは聴き入っちゃおっかな~~になっていた。ごくごく当たり前のように極上のサウンドデザインをやってのける恐ろしさ。このままのペースであと2~3作くらい作っていたらそのサウンドが21世紀にまで顔を出していたんじゃないか。デジタル機器が街中の音に作用する時代になったらどんな音色を取り込んでいたのだろうか。音響編集と音楽制作を好きに行き来できるようになった環境ではどんな作業風景を見ることができたのだろうか。
 普通にSerumとかVitalとか触ってみてくれませんか?どんな音を鳴らすのか気になるので……

 ギターが点と線の間を行き来しながら駆け回り、そこに小気味良くボーカルがフロウを乗せ、それらを包むようにオルガンが漂う。このバランス感覚こそこのアルバムの肝だろう。特に「1983... (A Merman I Should Turn to Be)」のミニマムなサイケデリック空間を構築するようなアプローチはピンク・フロイドらと共鳴しつつポストロックまで射程を広げて聴けてしまうような魅力がある。

みせざき

 なんて楽しめるアルバムなんだろうか。ロック史に残る名曲もしっかり入っているのに、ギターという楽器が宇宙世界との交信を基に届けられているような、人類を飛び越えたサウンド、音楽で埋め尽くされている。
 ギターはカッティング、リフ、ソロ、そして飛び技など、ギターという楽器で表現できる最大限の可能性を引き出しながら、そのどれもが人間では無い生物が思考して生み出したもののように聴こえる。
 セッションベースな雰囲気なのに左右あちこちであらゆる楽器が交差し続けたり、間違いなくスタジオ録音の技術を最大限に駆使したサウンドスケープとなっており、そこに貢献したジミヘンの力もきっとただならぬものでない。
 ギタリストだけでなく、ボーカリストとしても、そして作曲家としても間違いなく偉大な力と功績を残したジミヘンが、もうこれ以上作品を残せなかったのは本当に悲しい。きっとこの企画でこれから出てくる素晴らしいギタリスト達もジミヘン無しには出てこれなかっただろう。これからもジミヘンは姿を変えながら生き続けていく存在であって欲しい。

六月

 ファーストは重たすぎ、そしてセカンドはほんの少しだけ軽すぎに思ってしまう自分にとって、このサード・アルバムが一番ちょうどいい。僕はこの作品は民族音楽やら実験音楽とか、クラシックとかまで含めた、古今東西の音楽の中でも出色の作品だと考えていて、例えば宇宙人に何か地球の音楽を聴かせることになった時、僕は、少なくともロックからは迷わずこの一枚をあげると思う。
 一番好きなのはベタだけどやっぱり「All Along the Watchtower」。初めてあのギターソロを聞いた時はぶっ飛んだものだった。この曲がたったの4分しかないことがいまだに信じられない。でも今回聴き直してみて、一番「すげえ!」と思ったのは「1983... (A Merman I Should Turn to Be)」だ。もうここでロックは行き着くところまで行ってしまったのではないかとさえ思えるくらい、ギターとテープ編集だけで宇宙規模のスケールを描き出す表現力に脱帽する。その間に挟まれる小品も、キャッチーなロックソングもあったりして全然飽きることがない。
 これはなんの知識もない素人の感想でしかないが、あの本人にも制御できないようにさえ思える、文字通り世界を変えるほどの神通力をコントロールしながら録音作品に落とし込むことができた作品なのではないかと考えている。ここからどうなるかが本当に聴きたかった、というのは誰でも言えることだけれど、やっぱりそう思ってしまう。でも、コントロールできてしまったら、もはや手がつけられなくなるから、神様が慌てて彼を引き戻したんじゃないかって、今でも思っている。馬鹿馬鹿しいと自分でもわかっているが、でもそう思わないとやってられない。

和田醉象

 誰にも出せない音を作っていた男は宇宙から来たに違いない。要するに、いた場所に帰ったのだ。彼は地球の文化文明の発展に幾ばくか協力してくれた、ただ任期が終わったから帰ったのだと信じるしかない。
 そうとでも思わないと残念だ。どんな頭をしていたらこんなアルバムを作ることができる。夜に見る星空のような訳の分からなさが知っているフォーマットで入っているに過ぎない。何度聴いても何とも理解しきれない。
 でもやってきたであろう元の星の名前はなんというのだろう。ロックンロール星ではなくて、全然私たちもまだまだ未知の音楽の名を冠しているに違いない。

渡田

 前に聴いた『Are You Experienced?』に比べると、そう言ったキラーフレーズを持った曲は少なく感じたけれど、それでもギターの音を一聴しただけでジミ・ヘンドリックスの音楽だと分かる。今までジミ・ヘンドリックスの曲をほとんど聴いてこなかったけれど、それでも分かる。

次回予告

次回は、Beatles『The Beatles("The White Album")』を扱います。

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