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Kinks『The Kinks Are The Village Green Preservation Society』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Kinks
リリース日: 1968/11/29
レーベル: Warner Bros.(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は384位でした。

メンバーの感想

The End End

 2024年に1968年の作品を聴いているから、ではないノスタルジーが強く喚起された。タイトルを見返したら『The Village Green Preservation Society』だもんな……
 しろみけさんが最近始めたポッドキャストで、"もうiPhone4までノスタルジー消費の対象になっていて、このまま全てをノスタルジーが食い尽くしたらどうなるんだ"みたいな話をしていたので最近はノスタルジーのことを考えているのだけど、やっぱりノスタルジーとノスタルジーを消費することはかなり性質が違うように思える。単純に"古き良き"姿を懐かしむ姿勢と、"これを取り上げるってどうよ?"な目線と。

コーメイ

"サイケ路線全盛期にえらいゆったりとしたアルバムやな"というのが、印象に残った。全体を通して、起伏が少なく、穏やかに進行していった。歌詞もイギリスの田舎に帰りたいといったような田園への懐かしさというものが、散見されたと思われる。また、「Village Green」のように、やや自分勝手な人物も登場して、そこの人間臭さも悪くない。
このような内容のアルバムであった。

桜子

 他のアーティストと比べて、特異な点をあまり見つけられなかった。つるっと聴き流せちゃうなと思いました。つまらないとは感じたものの、嫌だとも思わなかったので、4回くらい聴いたら好きになるかも。

湘南ギャル

 洋楽編に入ってから扱った初見のアルバムの中で、一番曲をおぼえられたかも。この一曲が頭から離れない!みたいなアルバムはこれまでにもあったけど、今回に至っては複数曲がかわるがわる脳内で流れている。キャッチーというには牧歌的すぎるのに、どうしてなんだろう。意外とその二つって両立するのかもしれない。聴いた数の分だけ確実に身体に入り込んでくる。水分みたい。水が一番おいしい。水大好き。

しろみけさん

 ちょっと流石にイナたすぎやしねぇか!? と思ったら、そもそもイギリスの昔の田舎に捧げたコンセプト・アルバムらしい。大西洋を渡ったアメリカでは、そのものズバリ“カントリー”という名前で似たような思想の楽曲が演奏されているが、やはりそれとどこか似ているような気がする。ただ、湿り気のあるアコースティック・ギターのバッキングなどはやはりブリティッシュ。これ聞いて死ぬほど鈍色の空を睨みたい。

談合坂

 前回のうだる晴天よりは解像度が上がって、曇天の微妙に真っ直ぐな道路をバタバタと走る英国フォードが思い浮かぶ。なんか、いやらしさがないなと思う。えらく素直に聞ける。実家感があると言っていいかもしれない、全然実感としてそんなはずはないのに。えらく酒に酔っていても水平を教えてくれるような感覚がある。あくまで正気ベースな感じがしていいかも。

 イギリス4大バンドと称される中でソングライティングの完成度を担うのがビートルズ、ロックミュージックの泥臭さを担うのがローリングストーンズ、パンクスの持つ獰猛さと客観視故のインテリジェンスを両立したのがThe Whoだとしたら、ヘンテコさやアイデアの豊富さを担うのがキンクスだろう。途中で加速したり、特定のフレーズを曲中でずっとループさせたりなど、聴いてて飽きない仕掛けに満ちている。以前キンクスに関するレビューでも書いた通り、英国流ひねくれポップスの源流には彼らがいる。

みせざき

アコギやエレピなどジャカジャカ鳴ってて普通ならちょっとダサさが出てしまいそうなところでも、ボーカルがいい塩梅のかっこよさを出せている気がする。 
田舎や郷愁をテーマにしているが、ただイナタいだけでなく、しっかりバンドとしてのカッコ良さが出ているのがキンクスの良さなのだと改めて分かった。

六月

 "ロックは今急速に進化し続けている、あなたはどうする?"という問いがこの当時の世界中のミュージシャンに対して向けられていた問いだとするならば、その回答として、昔懐かしいイギリスの田園風景を歌うというのは周りのミュージシャンがギラついている中で少々のんびりしすぎというか、内側にこもりすぎではないかと思ってしまう(逆に一番尖っているのかもしれない)けれど、僕の好みであるガラス細工のような艶艶のある音に包まれながら、その牧歌的な風景が歌われるので、まるでスノードームを手でもて遊んでいるような感覚に陥りながら、最後までこのアルバムは楽しく聴ける。
 個人的にはこれ以前にも以後にも彼らのディスコグラフィーでピンとくるアルバムはほとんどないのだけれど、だからこそはまって一時期繰り返し聴いていた。中でも「Picture Book」は思い出深いというか、自分がよく行っていた池袋の「ノンサッチ」というロンドン・パブを模したロック・バーで僕のリクエストしたこの曲がかかった時、座ってロンドン・プライドを飲んでいたおじさん方が一斉におお!と喜んだ声を出した風景を僕は忘れない。

和田醉象

 ガレージ色が戻ってきていてかなり聞きやすいし、個人的にはドラムの手数が多くてバカバカ叩いてるのがかなり好印象。彼らの入門をするならこのアルバム!と人に勧められるかも。
 「Last of the Stream-Powered Train」の途中で早くなるところとかバカバカしくて好きだね。
 最後に何か書こうとしたけど、いや〜ドラムの音めっちゃいいね!

渡田

 前回に引き続き、ロックら強い音を出しつつも主流とは違う試みをしようとしている音楽。前回聴いた『Something Else by The Kinks』ではXTCやトーキングヘッズなんかのポストパンク•ニューウェーブに通じる独特さがあったのに対し、今回のアルバムの独特さは、同時代のビートルズとの近さを感じる。

次回予告

次回は、Van Morrison『Astral Weeks』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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