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Perfume『GAME』(2008)

アルバム情報

アーティスト: Perfume
リリース日: 2008/4/16
レーベル: 徳間ジャパン(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は32位でした。

メンバーの感想

The End End

 『GAME』やデビュー前後のPerfume評において“男性の欲望に完璧に応えるだけの精巧なアンドロイド”みたいなことが書かれがちなのは、ロボット・ヴォイスに依拠するところが大きいだろうけど、ふざけるなと言いたい。3人の歌声こそがこの作品の、Perfumeの魅力じゃないか。
 これだけ大胆な加工を経てなおどのパートを誰が歌っているのか分かるのは、そして中田ヤスタカが(いかようにも染め上げられる全くの新人ではなく)既に違ったスタイルの楽曲を持って活動していた彼女たちをわざわざ手がけたのは、彼女たちの持つ声がその加工を飛び越えて余りある豊かなものだったことの証左ではないだろうか。
 何より、3人が同じメロディをユニゾンした時の、“のっちとかしゆかとあ~ちゃんの声”が一緒に鳴っているのではなく、“Perfume”というひとつの生きものの声となって飛び出してきているかのような魔法。その魔法がウソだとでも言いたいのだろうか?それを無視してカタログ・スペックだけ見て“男性の欲望に完璧に応えるだけの精巧なアンドロイド”だなんて、バカにするのもいいところだよ。
 ライブのセットリストからファンクラブの形態、SNSでの発信などはもちろん、時には中田ヤスタカの持ってきた曲にも意見する主体的な姿勢がPerfumeの本質で、“巧みに操り人形のフリをしている”ことに騙されちゃいけない。

桜子

 テレビで音楽を知る事が自然に出来ていた最後の世代が我々な気がしていますが、私が幼稚園生〜現在に至るまで中田ヤスタカの音楽は常にテレビで流れていて、聴こうと能動的に行動しなくても、私の感性を育ててきた音楽だと思います。私はそれらを聴くと選んできたのですが!
 やっぱりさ、聴いてて音楽が素晴らしいのはそりゃそうなんだけどさ、3人が可愛いからこの音楽が好きなんだ!
 あと、こないだの座談会後の飲み会で、The End Endさんに"Perfumeの中で誰か好きなんですか〜〜?やっぱりかしゆかっすか?笑"と聞いたら、"いやいや、そういうんじゃなくてさ、俺はこの3人が作る三角形が好きなんだよ‼️‼️"と教わって、なんか、すごく反省しました。

俊介

 再生した瞬間自分の乙女の部分が顔を表して最高。歌詞に共感できる人生まったく送ったことないのに俺の中の乙女が、1回通しで聴くだけで曲覚えられる位のキャッチーさ。
 ポップスとダンスミュージックの完璧な融合なんだけど、自分がDTMでシンセいじってるときにチープだと思って無視してたプリセットみたいな音がすごく綺麗な形で収まってて、そういう視点からも新しい気づきが得られるという、冷静に。いま乙女のマインドでいるのに。
 過去に触れてなけなしの未来を感じる、最高。

湘南ギャル

 女の子3人組ってどうしてこんなにも最高なんだろう。シュープリームス、キャンディーズ、TLC、そしてPerfume、、。それぞれの個性とグループとしての統一感を一度に味わうことのできる、最小人数かつ最適人数なんじゃないかと思う。その中でもPerfumeがすごいのは、衣装・髪型・まとうオーラ、そのすべてが異なるのに、一目見ただけで同じグループだとわかるところだ。異なるものたちが織りなす均整の美しさを、私に初めて教えたのはきっとPerfumeだ。いまでも、同じものを綺麗に並べることよりも、異なるもの同士を異なるままに調和させることに苦心してしまうし、そういったものが一番美しいと思ってしまう。
 個人的にはJPNがバイブルだったので、GAMEの統一感にはなかなか馴染めなかった(JPNはほぼシングル集なので当たり前っちゃ当たり前だが)。それでも、小学生の自分が感じた高揚感と憧れは、変わらぬ熱量で鮮明に蘇った。

しろみけさん

 小学一年生の時、NHKで「ポリリズム」が流れる3R運動推進のCMを観たのを、鮮明に覚えている。それまでリビングに置いてあった電気の板から聞いたことない音が流れて、新しい時代のためのリサイクルが、そこでは宣伝されていた。それはもう凄い衝撃だった。その時、本当に世界が変わっちゃったんじゃないかと思った。
 今になってそんなことを思い出してみた。「ポリリズム」の2番、メンバーが順繰りにソロ歌唱するパートで、一本調子気味の発声がオートチューンによってこぶしのように聞こえたりフラットしたりするのが気持ちいい。また、《歌唱→ダンスパートとしての間奏》といった区分をされがちなアイドルソングを、《ハウスミュージックの上にアイドルソングが乗る》といった形にすり替えたのが革新的。振り返ればこれまでにもそのような構図の曲ももちろんあっただろうが、中田ヤスタカがそれを凶暴なシンセベースとキックの音でわからせた功績は大きい。この人たちが少しだけ変えた世界を、やはりうっすら生きている実感がある。

談合坂

 このぎっしりした重心と、対照的に重量に縛られずに拡散するボーカルを聴くと本当に落ち着くというか、ようやくいま私の日常にある音楽たちの居場所が見えてきたという安心感がある。むしろここまで(選出作のなかでは)この質感がほとんど気配を見せずにいたことが面白いなと思う。
 こういう世界を世に広めてくれたこと、(直接的ではないにしても)今日オタクとして生きる私の生を肯定してくれること、本当に感謝しています。

 小室哲哉が彼の音楽に触れた層に対してクラブ/ダンスミュージックのノリを「教育」したという話を耳にしたが、私の世代(2001年生まれ)だとその役割を行ったのがPerfume及び中田ヤスタカになるのだろう。「ポリリズム」を音楽技法的な「ポリリズム」だと知らなくても「ちょっと違和感がある不思議なリズムだけどなんか聴いてて楽しいな♪」と思ったり、「チョコレイト・ディスコ」を聴いて303っぽいベースの音に耳を強引に慣らされたりしている筈である。3人のビジュアルや佇まいのキッチュさと同時にダンスミュージックの楽しみ方を自然にお茶の間に広めた功績はあまりにも大きい。改めて聴くと表題曲の「GAME」はケミカル・ブラザースらスタジアム規模のダンスミュージックと共鳴する懐の広さがあるし、フェスシーンを席巻した理由も分かる。

みせざき

 図太いテクノサウンドと存在感のあるオートチューンボイスによってどの曲も耳に残りやすいポップチューンだと思いました。初めてPerfumeを聴いた時は戸惑いの方が多かったですが、今聴くともう日本のポップ史を彩ったアーティストとしての曲やサウンドの成熟さを感じることの方が多かったです。

和田醉象

 このランキング初の複数人数ボーカルもの。
 ハモリってかなり面白いものだと思うんだけど、ロボットらしさや、少しチグハグな感じに仕上げてくるという発想が面白い。
 曲でいうと、テクノと言うよりかはテクノポップ的なカチカチとしたスネアが心地よい。ピコる心をわかっていらっしゃる。
 そしてタイトルも歌詞も繰り返しが多い。「チョコレイト・ディスコ」に至ってはタイトルの連呼でサビが構成されている。アーティスト自体のインパクトも十分にあると思うが、一方で「何が何でも覚えてもらおう」という1stアルバム的な戦略を感じた。(でもこの前にベスト盤があるのが謎なんだよな。そっちに入っている曲しか殆ど知らない)

渡田

 サビもタメもフレーズの変化も勿体ぶらずに聴かせてくれるアルバム。
 聴き始めて30秒で「ポリリズム」のサビが聞けるおかげで、すぐにこのアルバムの良いところ、見るべきところが分かる。一つの曲が終わるたび、彼女たちの垢抜けたアイドル性や、キャッチーなエレクトロメロディが、次の曲ではどんな風に展開するのか期待するのが楽しい。

次回予告

次回は、坂本慎太郎『幻とのつきあい方』を扱います。

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