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ザ・スターリン『STOP JAP』(1982)

アルバム情報

アーティスト: ザ・スターリン
リリース日: 1982/7/1
レーベル: クライマックスレコード(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は52位でした。

メンバーの感想

The End End

 カッコイイ。「ロマンチスト」と「ワルシャワの幻想」だけでも、歴史に名を残すパワーがあると思う。人を変える力を持った歌というやつ。
 とはいえ、急かされながら新曲を量産しなければいけない状況だったことを差し引いてもアレンジ/プロダクションは総じてあまり達者ではないように感じる。これが12万枚売れたんだなあ…なんでこの手のバンドって演奏も録音もこうなんですかね。好きな人がいるのもカッコいいのもよくわかるけど、素直に言えばノットフォーミー。得意じゃないマーシャルの音がします。

桜子

 叫んだりしてる音楽があまり好きじゃないので、玉ねぎ畑とか好きだった...!
 オケはめっちゃパンクなテイストなのに歌はボソボソしてて興味深かったです。あと曲の締めのFXのかけ方がカッコよかった。

俊介

 ロマンチストからワルシャワの幻想まで、異様な緊張感とスピードを維持したまま駆け抜けてっていつのまにか聴き終わってた。
 粗暴さが根底にあるけど、それに対してサウンドが繊細なのが面白い。
 曲ごとのミックス具合だったりボーカルにかけるエフェクトなり各曲がギリギリのバランスでまとめられてて、すき。

湘南ギャル

 タイトルほどの過激さを、内容からはなかなか感じられなかったので、ライブ動画を探すことにした。そしたらめちゃくちゃ最高な動画を見つけてしまったので、ぜひ共有したい(下)。 大学で現象学の授業受けている学生たちが後期試験の会場と聞いてやってきた体育館で、ザ・スターリンがライブを行っているのだ。困惑を隠せない学生も、ノリノリな学生も、淡々とインタビューに答える教授も、最終的にちょっと笑っちゃってるボーカルも、全員が人間臭くて良い。過激なライブを探すという目的からはずれてしまったが、とても良い映像だった。

しろみけさん

 縦の揃い方。パンクはインテリの音楽…なんてよく言われるが、スターリンはその急先鋒じゃないだろうか。それはミチロウのイデオロギーが炸裂する歌詞にも表れているとも思うけど、それ以上に、演奏の縦の揃い方が尋常じゃない。特にギターのタイム感が気持ち良い。冒頭の“ロマンチスト”のキメから、勢いのみではないクールな魅力がダダ漏れ。個人的には“玉ネギ畑”のディストーションギターが大好物だ。ディストーションギターにはディストーションギターなりのタイム感があり、それは一般的なギターの技量とは異なる領域のものだと実感させられる。そういう意味でも、パンクをやるなら絶対カバーしておきたいアルバムだ。

談合坂

 重心が高くて不安定でも、真っ直ぐ前にしか進まないから問題ない。今日のヘッドホン的な’爆音’の感覚だと細かいトゲに意識が向くかもしれないけど、この作品の場合はもっと大雑把でよくて、なんだかトゲトゲしてる数インチの塊として触れるのが正解のような気がする。
 ラフなアレンジだからこそ生み出される独特な層をなすハーモニーが好物なので、聴いていて心地良かった。

 あえて雑な言い方をするが、「ジャパニーズアングラパンク」なるものをこの企画を通して集中して聴くことが出来た。村八分、頭脳警察、INU、フリクション、どれも勝手に少し距離を感じていたがこう並べると現在の音楽シーンとの意外な共通点やピストルズの持っていた鋭さとの一致など発見が多かった。同時にやっぱ心の底からフェイバリットと言い切れない事も分かり、その「発見」と「相容れなさ」の共存の極致に本作があります。細切れの言葉の断片を叫ぶように投げ重ねていく歌詞の組み立て方、が苦手なんだなとようやく確信しました。

みせざき

 カッコいいと思います。もうボーカルにこのギターにこの勢いに、という感じです。そんなに細かいこと、機材とか、詳細に語ったりしても仕方ないですよね。叫んでストロークしてぶっ叩いて売れる。日本のピストルズですね。大好きな勝手にしやがれの二曲目(Bodies)みたいなノリで最高。

和田はるくに

 これが日本のパンクだ。僕は遠藤ミチロウを愛している。
常に攻撃性とポップさを兼ね備え、リスナーに襲いかかってくる。これがゴールドディスクを取りかけたと言うからめちゃくちゃおもろい話。

渡田

 一曲目から最後の曲にかけて、一つのアルバムでありながら、そのたった40分、凄まじい速さでバンドが変遷していっているのを感じる。
最初の何曲かは単純なパンクで、思いつくままのリズムと歌詞といった感じ。
 それがアルバムが進むにつれ、個性的な音作りやイントロを持つ、勢いだけではない知的なアイデア、斬新な発想に裏付けられた魅力がある曲が増えてくる。
 最後の「ワルシャワの幻想」では最低限のフレーズを繰り返すドラムを基礎にして、その上に不気味なエフェクトを効かせたギターや、不自然なリズムをとるメロディなど、怪しく魅せるアイデアを詰められていて、その様はPILやザ•フォールのようなポストパンクバンドとの共通点を感じる。
正直全ての曲を好きにはなれなかったけれど、そういった点を含め、まるでパンクからポストパンクに移行する80年代の音楽シーンを体現しているよう。この時代におけるロックというジャンルが、時々迷走しながらも一つの完成を迎えるまでの変化の過程を疑似体験するようなアルバムだった。

次回予告

次回は、佐野元春『VISVITORS』を扱います。

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#アルバムレビュー
#ザ・スターリン


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