見出し画像

Smokey Robinson and the Miracles『Going to a Go-Go』(1966)

アルバム情報

アーティスト: Smokey Robinson and the Miracles
リリース日: 1966/11/1
レーベル: Motown(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は412位でした。

メンバーの感想

The End End

 ドラムの音色だけで、自分が朧げに抱いていたモータウンへのイメージとかなり異なる姿で驚いた。タンバリンやクラッシュシンバルがやかましいほど元気に鳴っていて、太鼓類もかなり歪んでいる。過大入力によるクリッピングではなく、強くリミッティングを行った時に現れるジリジリした歪みであることから、意図的に付加されたものであることが窺えるし、そしてそれが"sizzle"と形容するのがよく似合う音像に大きく寄与している。
 こうした音色の味つけだけでなく、ソングライティング/アレンジも含めて、フィル・スペクターの仕事が良い意味で中庸化されたような、そんな姿であるように感じた。

コーメイ

 疲れていても、すうっと入ってくるアルバムであろう。普段なら、あれこれした後にレビューを書くのは、かなりきついけれども、このアルバムは、全体を通じて、懐かしい歌声と音楽とで世界を構成しているため、すんなりと入って来た。そのようなアルバムであった。

湘南ギャル

 綺麗なのに妖しい。底知れなさを感じる。ドキュメンタリー映画観に行くくらいにモータウン好きだけど、まだ知らない一面が残っていたなんてとても嬉しい。全然掴めなくて、掴みたくて、ずっと聴いてしまう。わからないけど心地良い。ずっと聴いてたい。

しろみけさん

 音域とはまた別の、歌唱で表現できる“域”が他のシンガーと比べて遥かに広い。ステージの上から飛び出すアグレッシブな動きじゃなくて、レースのカーテン一枚を隔てた場所でここにだけ聞こえるように歌ってくれてる若さが確かに滲んではいるんだけど、ハツラツというより、可憐な百合の花のような儚さを感じる。演奏も心なしか抑揚が抑えられており、不世出の天才の見せ方として完璧。

談合坂

 このサウンドの気持ちよさは、打ち込み音楽的なところでいう鉄ぶん殴りスネアとか超ウェットなシンセレイヤーとかに似ているんじゃないかと感じた。ただただ気圧されて心地よくなったり、物理的な運動が見えているかのようにリズムに乗ったり、そういう土台があるからこそ切なげなリードボーカルがいっそう響く。

 最近妙に忙しくて、そこから逃避するための音楽さえまともに聴けていないのだけど、"ベイビー、ベイビー"と希求する切実さは胸にグッと迫るものがあった。しかし、こういう音楽はどうしてもBGMとして聴いてしまう。

みせざき

 R&Bは好きなのに、ファンクは好きなのに、なぜかこういう喜劇的な雰囲気のR&Bにはハマれるのには時間がかかる。正直一聴しただけだと掴みどころが無く平坦に感じるので頭の中をスッと流れ去るような印象を受ける。
 曲やサウンドも含めて凄くいい曲だと思う。聴きやすいしクリアなエレキギターのサウンドも特徴的で耳に馴染みやすい。きっと自分が現代的でフックが強すぎるR&Bやこういう作品を素材にしたヒップホップなど、あくまで逆張りのサウンドに入り浸ってしまっているからなのだろう。

六月

 なんかドラムの音……変じゃない?それほどにに変ちきりんで妙なミックス(この言葉で正しいのでしょうか)が施されていて、このアルバム、珍盤の類いなのではないかという思いを抱えながら聴き進めていった。「My Girl Has Gone」のドラムなんて、めっちゃ音割れしていて笑ってしまう。他の音源を聴いても大体そんな音だったのでこれで正解なのだろう(モノラルで聴いてみるとなおすごいが)。メロディとかはめっちゃグッドなR&Bなのが余計にその変さを浮き彫りにしていて、でもその変であることがクセになってきてハマってくるのも事実。

和田はるくに

 なんでこんな声で歌えるんだろう。川のせせらぎとか鳥のさえずりみたいに落ち着く声である。初めてMichael Jacksonを聞いたときに近い衝撃。Otis Reddingとかこれの対極になるような存在だったから続けて聞いていて落差がすごい。
 あと指パッチンがこんなにハマる音楽にも出会ったことがなかった。「My Baby Changes Like The Weather」のイントロのフックとしてハマりすぎている。手拍子だとやかましいけど、曲に入り込むきっかけとして、媒介として役割を果たしすぎてる。次曲の「Let Me Have Some」の手拍子のリバーブ効きすぎ具合も面白いけど、指パッチンのさり気なさ、みたいなところがいじらしく、とてもいいと思いました!

渡田

 邦楽と似た聴きやすさを感じた。
 ゆったりした全体のリズムのなか、分かりやすく盛り上がりがあって、聴きやすい。声は綺麗で明るいけれど、少し繊細さを含んだ声で、細長く伸びていくのを感じる。それが低音、高音それぞれのコーラスで彩られていて、聴いていると、ほんの少し哀愁を含んだ甘い気分になれる。

次回予告

次回は、Doors『The Doors』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?