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Beatles『Help!』(1965)

アルバム情報

アーティスト: Beatles
リリース日: 1965/8/6
レーベル: Parlophone(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は266位でした。

メンバーの感想

The End End

 「I Need You」のギター、ちょっと待ってくれよ。笑 これ、本当に意図してこのタイムで弾いてるんですか……?ボリューム奏法はしていそうだけど、エコーのエフェクト音だけ出してる感じですか……?
 それについてはさておき、ものすごい飛躍を感じるアルバムだった。彼ら自身も、自らの憧れのその先へ、人気ではない面で到達した手応えがあったんじゃないかと思う。もちろん素養があったには違いないけど、立場が人を引っ張り上げるような、そういう印象を持った。

コーメイ

 本アルバムにて、「Help!」があまりにも有名だと思うけれども、「You’re Going to lose That Girl」が一番印象に残った。その中でも、コーラスが上手い。これを聴いていると、思わず歌詞を口ずさみたくなる。とくに、「Yes, Yes, You’re gonna lose that girl」の箇所が聴いている場所によって、発声をするか否かは変わってくるけれども、出来ない所でも脳内でこのコーラスをなぞっている。のみならず、ギターが鳴り響く中で、コーラスが繰り返される箇所も、音の余韻が残っていた。これが、ぐちゃぐちゃしておらず、すっきり聴けるものとなっている。

桜子

 ひとつひとつパーツをバラして見れば、他のポピュラーミュージックと遜色ないというか、普遍的な事をやっていると思うけれど、それらを調和させる力がすごくて、掛け合わせ方や、リズム隊と上モノの人達の音の組み合わせ方で唯一無二の世界を作っているから、スッとヘンな違和感なく受け入れる事が出来る!凝らして見ると、こんな事誰もしていないのが分かるから、年齢重ねれば重ねるほど好きになる!

湘南ギャル

 中期や後期のビートルズをついつい聴いてしまう私にとって、前回までに扱った作品は少々元気がすぎた。しかし、この作品からは一筋縄ではいかない仄暗さを感じる。『A Hard Day’s Night』から『Rubber Soul』に行っちゃったらさすがにビートルズのこと心配になるけど、『Help!』を経た後と思うと安心感がある。今までお気に入りばっかリピしちゃって時系列に聴いてこなかったけど、すごい楽しいな〜。リアルタイムで見てた人は、もう楽しいを超えてドキドキしちゃってただろう。
 「It’s Only Love」の中で、ジョンが“bright”と歌う時の響きが本当に好きだ。ひと単語だけで人は恋に落ちられるのかもしれない。

しろみけさん

 え待って公式からの供給過多なんけどしんどい笑 ジョンの曲は🍎がドテチテしがちだし、ポールさんの曲はソファのどかってして聞きたい感じ!そんでジョージくん曲の行儀良さってか、演奏してて楽しそう!明確に4人の特色が滲み出てて、忙しい中でも成長してんだなぁ〜〜〜

 あと関係ないけど、この前のライブで「Yesterday」の時に叫んでる強火いたのは萎えた。界隈の民度とかマジ大事、なんとかしてこ?

談合坂

 クセのあるリズムの溜めや楽器の使い方でも、そこまでそれを意識させることなくどれもポップに聴かせるこの安定感はどこから来ているのだろうか。どれかのパート単体に意識を向けて聞いていると、ラップミュージックのビートを単体で聞いたりエレクトロミュージックのステムデータを聞いたりしたときのような気分になる。バンドになることによるマジックがすごく効いている。

 初期から中期ビートルズへの過渡期故にビートルズらしさが最も前面に出ている。「Help!!」で"When I was a younger"と歌い、「Yesterday」でも過去の自分と対峙していて、彼らのムードの変化が読み取れる。アイドルが何故にアイドルなのか、と考えたときに、アイドルにはエゴがないように見え、リスナーや客の意思を投影させる空白が存在していることがアイドルの一つの条件だと思う。この作品には、この作品以降のビートルズで見られるような作曲したメンバーごとの特異性や実験/開拓精神による先進性は見られない。ビートルズが"ビートルズ"であることを遂行していて、観客は"ビートルズ"という偶像に自分を投影することが出来る。そういう意味ではポールマッカートニーの曲だとパッと分かるようなピアノバラード「Yesterday」は初期ビートルズにピリオドを打ったとも言える。

みせざき

 ビートルズのアルバムをレビューするといってもあまりに名曲揃いの為大変困ってしまう。  
 メロディーが水のようで、透き通るなだらかな水として耳から身体に流れていく印象がある。そのメロディーどれもがバンドサウンドと共に自然と受け入れられていく感覚がたまらないですね。
 「I've Just Seen a Face」はつい弾き語りたくなってしまう。「Act Naturally」の爪弾きのギターとリンゴのルーズなボーカルが結構好き。でもやっぱり「I Need You」がこのアルバムだと一番好きですね。ジョージは影ながら本当に良い曲を作りますね。

六月

 改めて初期ビー(初期のビートルズ)をこうやって順番に聴いてみると、1,2作目はコーラス、3,4作目は楽曲や演奏、そして今作は実験性(様々なタイプの楽曲を試してみるという精神性)といったように、ある瞬間から突然化けたんじゃなくて、段階的にそれらをものにしていったのだなと分かって面白い。でもこの時期すらも、本当にこの後に起こる音楽性におけるとんでもない飛躍のための助走、ホップ・ステップの部分にすぎないのであって、その中でもこのアルバムは本当に飛び上がるギリギリのところだから。どうしてもこの直後の偉大なる跳躍となるアルバムに比べると、個々の楽曲のスタイルやら音色やらに統一したものがなく、未発掘の音源を集めたアルバムみたいに、散漫で、アルバム全体を集中して聴かせる力に欠けている。だからこそ乱痴気集団に囲まれながら世界各国を回る珍道中に疲れ果て、わずかな期間で訪れるスタジオで実験を始めた4人の姿を想像しながら楽しむ、ラフな聴き方で受容するのがいいのかもしれない。

和田醉象

 直前に聞いていたThe Byrdsと比べるとまず"やっぱりBeatlesって歌上手いんだな"と実感。演奏の安定感ももちろん、複数の歌声が飛び交い、レイヤーが幾重にもある情報量の多さ。初期ビートルズに飽きない理由を再度感じる。
 あと「Yesterday」みたいな曲も完全に自分のものにしたのもこのアルバムからだと思う。バリエーション豊かなのが当たり前なあるバツ内容になっていくのがこの先のBeatlesのスタンダードになっていく。

渡田

 『4人はアイドル』の邦題に反して、アイドルとしてのイメージを脱却して自分達らしい音楽を試し始めている感じがある。
 シンプルなアコースティックメロディなのに、壮大さを感じさせるメロディとか、時々呪術的に怪しくなる楽器の音とか、後のビートルズとしての無二の個性となる部分がしっかり見えた。
 フォークとロックの雰囲気が融合している曲や、カントリーらしい曲など、各音楽ジャンルの作法を取り入れている曲も多く見られた。どれも繊細にビートルズらしさと同居できていて、引用元の音楽へのリスペクトも、自分達の音楽をより高次元にしようとしている意思も、どちらも感じられる。

次回予告

次回は、Bob Dylan『Highway 61 Revisited』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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