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The Who『The Who Sell Out』(1967)

アルバム情報

アーティスト: The Who
リリース日: 1967/12/15
レーベル: Track(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は316位でした。

メンバーの感想

The End End

 『Pet Sounds』とはまた違った形の、"フィル・スペクターの向こう側"なサウンド。モノミックスやエコーが生み出す効果、あの迫力をロックに落とし込んだ例として完璧だ。
 ソングライティング自体が大きいというか、広い場所が似合うムードを纏っているので、ミックスの迫力と合わさってどこまでも巨大に広がっていく。めっちゃ大好きだ〜……

コーメイ

 The Who初のコンセプトアルバムである本アルバムは、ラジオ放送仕立てになっていてこれが、まず聴いていて、楽しかった。CMが、曲間のブリッジの役割を果たしており、飽きずにアルバムに耳を傾けることが出来た。
 演奏は、ボーカルが一番印象に残らないほど、攻撃的なバックの演奏を体感出来た点が、良かった。ギター・ベース・ドラム各々が、"俺だ、俺だ、俺だ、俺だ、俺だ‼︎ "と連呼している姿勢が、認められた。

桜子

 自分が想像するより、ポップで聴きやすかった。もっと王道ロックンロールな感じなのかと勘違いしていた。あと、音像がビーチボーイズみたいに感じたり、ボーカルコーラスに似たようなものを感じて、影響が大きいのかな?その時の流行りなのかな?と思いました。

湘南ギャル

 ずいぶんとヘンテコだ。AメロとかBメロとかメロディとかバッキングとか、そういうのがいちいち曖昧。そして、音が波みたいで、自分は船の上の乗客のように揺れることしかできない。体調悪い時に聴いたからそう思ったのかもしれないけど、熱の時見る夢みたいだった。ふわふわしていて、捕まえようとすると逃げる。

しろみけさん

 このドラミングは強烈。ドテチテしててやかましいのに、タイム感が絶妙で完璧。竿二人もそれにアジャストしてて、疾走感を損なわない程度の走り具合でビッタリ縦が揃っている。これを生でやられたらたまんないわね、本当にバンドやる気が削がれるかもしれない。その上ジャケでチョけてるし……隙がなくてそこが隙かも。

談合坂

 55年前のイギリスなんて全く知らない時代と場所のことだけど、ロールプレイの面白さがそれなりに理解できる。中途半端に設定を作るんじゃなくちゃんと徹底的に作りこんでいるというのが伝わってくる。
 「けいおん!」の作中で律の好きなバンドとして出てきてたよな、ぐらいの知識しか持ち合わせていなかったのだけど、たしかに色々バンドがある中であえて名前を出すならこれかもなと思う。楽器ごとのレイヤーがくっきりと分かれているし、なかでも(スマホ本体とかちっちゃいスピーカーで聞くとなおさら)ドラムがすごい前に出てきてかっこいい。

 前回の座談会で"アルバムを作る意識"の話になり、その後すぐ名実ともにコンセプトアルバムの代表作である『Sgt.〜』のレビューの機会が生まれたわけだけど、本作もその"アルバムを作る意識"が前に出た作品だ。しかし、この時期のThe Whoのビーチボーイズとも連なるオーガニックなグッドミュージック的なソングライティングを考えるとアルバムのギミックを抜きにしても良盤と呼ばれる作品になったんじゃないかと思う。曲間のCMというギミックがあることで全てが"CMソング"的な凡庸な響きになってしまっているというか。それが狙いならば大成功です。

みせざき

 私が兼ねてから抱いていたザ・フーの二極性が楽しめる作品だった。高校の時からよく聴いていた、楽器全体で弾けだすが、ポップ性も同時に兼ね備えていたフー。また『Who`s Next』『四重人格』のような劇的な展開と組曲的な雰囲気を兼ね備えたフー。
 ただ曲によって西洋的な雰囲気があったり、サイケな曲があったりと意外にも柔軟性をもっており、逆にそれがザ・フーというバンドの一貫したイメージを持つことができないという、昔から漠然として持っていた思いをより表面化させる。でもやっぱりロックなナンバーが好きなのかもしれない。「アルメニアの空」など。

六月

 The Whoは、後々評価されてるロック・オペラとかシンセを取り入れた大仰なことやってる時期は嫌いで、このアルバムとかの初期衝動に全振りしたそれでも、1stや2ndのころよりはかなりメロディの面でしっかりした揺るぎのない強さを持ち始めている一番ちょうどいい時期に思える、とくに「恋のマジック・アイ (Mono Version)」の何かを始めようとバタバタしてる感じで演奏されるイナタイメロディは、全国の青少年たちのあのどうしようもないモヤモヤやイライラを代弁している稀有な曲だと思っている。曲の間にラジオ局をもしたジングルやらCMが入るのも、プランダーフォニックスやサンプリング音楽が好きな自分にとっては好きな音であふれていたから、良メロとのつるべうちでずっと楽しく聴けた。
 あと、モノラルで聴いたら見違えるように化けるというか、単に左右から同じ音が出るだけだろってバカにしてたモノラルが、こんなに良いものなんだと教えてくれた偉大なるアルバムでもあります。

和田醉象

 こんなサイケなの?!びっくりした。
 The Whoのアルバムの中でもこれだけタイミングなくて一切聴いたことがなかった。(ジャケは有名だから昔から知ってたんだけどね)
 他のアルバムみたいなストレートなロックを想像してたけどそういうわけでもなく、そこそこの尺の曲と短い曲とが交互に入っている。調べたら当時禁止になった海賊ラジオ局の放送内容を真似したんだとか。そう考えると、曲と曲のテンポ感やキーのつながりみたいなのが皆無なのがリアルだ。こんな形のコンセプトアルバムがある、というのが目に鱗ものだ。面白い。
 曲自体は音がなんだか軽い。ラジオで流れてくるときの音質も考慮したんだろうか。Who感は薄い。
 脱線。ちょっと前に音盤紀行という漫画を読んだんだけど、そこでは海賊ラジオ局をネタにした短編が載っていた。それを読んでいたから尚更アルバムの解像度が上がったし、逆にその漫画をまた読み返したくなった。このアルバム気になった方はぜひ。

渡田

 わかりやすくロックとしての音が飛び込んできたから、自然とビートルズと比較しながら聴いていた。そうした聞き方の中で感じたのはビートルズよりも各曲のテーマが分かりやすいこと。
 ロックバンドとしての音だけでなくマーチングバンドの音、ラジオ放送の音、民族舞踊のような音が聞こえてきて、その時々のテーマがわかりやすい。ディズニーランドを歩いているよう。

次回予告

次回は、Bob Dylan『John Wesley Harding』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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