見出し画像

Big Brother & the Holding Company『Cheap Thrills』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Big Brother & the Holding Company
リリース日: 1968/8/12
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は372位でした。

メンバーの感想

The End End

 いつだかTwitterで見た、幼少期のビョークがバンドの中で歌っているビデオを思い出した。あの景色を初めて作った/あるいはわかりやすく提示した存在がジャニス・ジョプリンなのだと思うと、エモーションと感謝が胸の底からせり上がってくる。
 けれども、"憑依"的なパフォーマンスとプレイヤーとしての自分との間には大きな距離があり、自らの全てを音楽の中に沈み込ませてしまうことのできるプレイヤーには良くも悪くも畏怖を覚えてしまう。音楽でなくても、ある感情に自分の全てを任せてしまうことがサッパリできないから、正直とても羨ましいな。

コーメイ

 パンチの効いた歌声とブイブイ言わせているギターが、印象に残った。前者は、後出しになるけれども、和田アキ子のような、一度聴けば耳に響き続ける声色を持っていて、聴き手を惹きつける効果があった。後者は、アルバム前半で散見され、とくに、1曲目では、たいそう皮膚まで響く音であった。

桜子

 これはあまり好きじゃなかった、聴いていてダレる感覚がある。早く次の曲聴きたいなと、何回も思ってしまった。あとは、既聴感があって、昔のものを聴いてるんだなって感覚が強くて、あまり驚きもなかったし、つまらないと思った。

湘南ギャル

 かっこよすぎる。フロントが派手なバンドって、それ以外のメンバーは綺麗に演奏したりすることあるけど、その気配が全くない。全員がそれぞれの一番かっこいいことをしながら、全員が同じ方向を向いている。同じグルーヴと熱量を共有している。このランキングで最初に出会うファンクの精神はJBだと予想していたが、彼らであった。

しろみけさん

 「Turtle Blue」でグラスが割られて、片付けられて……こんなのが一番テンション上がりますからね。ceroの「C.E.R.O」以来ですよ。てか以前か。つーかこんなバンドでよく活動できたな。1+1が絶妙に混ざり合わず2のままなんだけど、対話とか調停なんかつまんないからね! の態度で散らかしてる。だからグルーヴ はともかく、個々人の音は抜けてる。「Bell and Chain」の延髄を突き刺すギターが強烈、稲妻が目の前に落ちてきた時もこういう気持ちになるんだろう。

談合坂

 歌声かっこよすぎ……どんな場所からでも自分の歌に持っていくことのできるカリスマが存在している。ロックシンガーという呼称に誰も異論を挟めないんじゃないか。
 ただ、ヘッドホンサイズで聞く限りではそこに存在する音楽を何も包含しきれていないようにも感じる。1/1スケールを想像して補うことをしなければさほど聴けるものが現れてこないような……高校生ぐらいまでの自分だったら何かを受け取ることはできていない気がする。

 「Summertime」のギターのトーン、芳醇すぎる。アルバム中盤あたりでもギターが炸裂していて、のちのグレイトフル・デッドの面々だという事実に納得。そしてジャケットがめっちゃおしゃれ。こういうアメコミ調の絵柄が持つ「当時の最先端」みたいなノスタルジーの一端を音楽自体にも感じる。当時Mステがあったら度肝を抜かれていただろう。

みせざき

 釘を刺すような立ち位置のギターの音が凄く良い。ただ音楽としてはオールドロックを踏襲しているが、ボーカルがパンク以後のシンガーのような歌い声なのでアティチュードとして全体としてパンクを感じる。ジャニス・ジョプリン凄し。

六月

 ヴィレヴァンに置いてあるラット・フィンクの人形みたいな、猥雑さここに極まれりみたいなジャケでなかなか食指が伸びなかったけれど、聴いてみるとなかなかに良かった。「Piece of My Heart」のジミヘン感もある重たいギターが特にグッときました。
 女性の歌声が、それもR&Bとは異なるところから歌声が飛び出てきたことに、ロックが世界中に膾炙しきったのだというのを感じる。
 ある曲のなかで、演奏が終わると同時に咳き込むJanisに、ああ、この人はこうやって儚く生きるしかなかった人なんだと思ってしまって思わず切なくなってしまった。

和田醉象

 放たれすぎてやしませんか。めちゃくちゃ粗野だし、乱暴で、まるで山のような猛りを叩きつけるように歌に乗せて繰り出している。
 技術がないというわけではなく、むしろ絶品なんだけれど、そういうものを伴っていくに従って失せていく魅力みたいなのが全く損なわれず両立しているのが凄いんだよな。
 曇り空に風穴開けてみせるみたいな強大な感情の波に飲まれそうだけども、さらってみられるのも面白い。

渡田

 大学一年生あたり、洋楽をまとめて聴き始めた頃は好きなアルバムの一つだったけれど、今聴くとそうでもなくて、なんだか少し残念。
 かつてジャニス•ジョプリンの寂しげだけれど力強い歌声に惹かれたのだと思う。それから色々な音楽を聴いて、音楽が表す寂しさや力強さというものにも色々な種類があって、彼女以上に自分が共感しやすいものを見つけたから、今は心の動きがかつてほどでもないのかな。

次回予告

次回は、The Byrds『Sweetheart of the Rodeo』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?