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細野晴臣&イエロー・マジック・バンド『はらいそ』(1978)

アルバム情報

アーティスト: 細野晴臣&イエロー・マジック・バンド
リリース日: 1978/4/25
レーベル: アルファ(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は54位でした。

メンバーの感想

The End End

 もっと奇々怪々なアルバムというイメージだったけど、記憶していたよりもポップで親しみやすかった。『トロピカル・ダンディー』や『泰安洋行』よりもYMOとの接続を感じる音像なのは、おそらく本作からアルファレコードのスタジオで録音されるようになったから…もっと言えば、ミックスコンソールがトライデントからAPIになったことに拠るのだと思う。『泰安洋行』と続けて聴くと、シャープでスッキリした音になっているのが分かるはず。そしてそこからYMOに行くと“繋がった…!”と思えるはず。
 この作品において、細野はいよいよ世間に目をやらなくなっている気がする。“これが終わったら出家しよう”とまで考えていた時期なのだから当然かもしれないが、音楽と自分のことしか見ていないような気がする。そんな状態でもおもむろに駆け寄ってきて「この次はモアベターよ!」と告げて締める食えなさが、たまらなく好き。

桜子

どこから来た、なんの音楽なんだろう〜。ルーツはどこにあるのだろう。
影響受けたものを噛み砕いて、再構築して作った細野さんの音楽の国。
単純に聴きすぎかもしれませんが、どの曲の音の感じも、哀しげがなくて良いです。

湘南ギャル

 HOSONO HOUSEを聴いた時は、はっぴいえんどと地続きの作品だと感じたものだが、そこからたったの5年でその気配は消え去っていた。はっぴいえんどの、どこか垢抜けきらない音と、少し寂しいような歌詞が心地よかった私にとって、細野ソロ作はお洒落すぎていて落ち着かない。

しろみけさん

 ジャケットが語り尽くす。「ジャパニーズ・ルンバ」や「案里屋ユンタ」から「ウォーリー・ビーズ」まで、世界中の音楽を「極東の島国の人間」という自らの逃れられない属性を逆手に取って束ねている。それは「リズムや音階に共通点を見出していく」という方法でも行われているし、「世界中の盛場に漂う共通のいかがわしさを束ねあげる」といった、よりスケールの大きい手法が選択されているなとも感じた。だからこそこのアートワーク、国境も時代も聖俗も入り混じりながら「どこでもあるし、どこでもない」という奇妙な一枚絵は、あらゆる意味で楽曲以上に楽曲のテーマを貫通している。

談合坂

 クラブミュージック的だと思った。それは「シャンバラ通信」のビートとか「四面楚歌」のシンセにびっくりしてしまったから、という限りではない。雑多ではあれど、視線をあれこれと動かす必要がなくそこでただ鳴っている音楽としてまとめ上げられているから。どこかを想像しながらじゃなくても、身を任せてしまって大丈夫。

 小気味がいい。カジュアルだ。やはり「観光」というテーマの洒脱さが全編に渡っていい効果を発揮している。佐藤博、かまやつひろし、大貫妙子、高橋幸宏、坂本龍一、鈴木茂など豪華な面々が集まったとしても軽々しさがにじみ出るのは細野晴臣の人柄によるのだろうか。

みせざき

 泰安洋行よりも一曲一曲が長めで、作品としてソリッドにまとめきっているな、と感じました。ゴング?のような音が東洋の雰囲気を感じさせたり、「ピポッ」といった効果音だったり、そうした異質な音も確実なバンドサウンドの中に上手くはめ込まれていました。でもポップな遊び心というのは細野晴臣のソロ作全てに通じるもので、本作にもその雰囲気はしっかり感じ取ることが出来ました。

和田はるくに

 YMOは知っていてもここらへんの細野作品は掘ったことがなかった。
泰安洋行ほどアジアン全開という感じでもなく、幾許か日本に近づいた印象。ただシンセの割合が増えて、ハンドパンとかの活用しつつ、音色の豊富さにテーマパークにでもきている気分になる。
 ただし、ここまでの細野作品の多さもあってか、かなり彼の手の内を知っているからか、退屈してあまり楽しめなかった。シンセ全開な展開の曲はかなり楽しめたけどね。

渡田

 奇妙な民族音楽や電子音や環境音もあれば、ポップなピアノ、ギターの音もある。細野の音楽で色々試してみたい気持ちが臨界点まで達している感じがした。
 同時に、このアルバムが細野晴臣の完成形だとは思わなかった。自分がどんな音楽に精通していて、自分の音楽の知識でどんなことができるのかをひたすらに見せ続けている感じ。こういった裾野の広さが、一つのテーマを元に作られたアルバムとしての印象を持たせなかったのかもしれない。
 それぞれの曲に、それぞれ違った技巧やアイデアが凝らされている様は、細野自身が如何に強力な手札を揃えているかを暗に示しているようにも思える。これを聴かせてもらった上での、最後の曲の最後の一言「次はモアベターよ!」は楽しみでならない。

次回予告

次回は、イエロー・マジック・オーケストラ『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』を扱います。

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#アルバムレビュー
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