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Otis Redding『Otis Blue: Otis Redding Sings Soul』(1965)

アルバム情報

アーティスト: Otis Redding
リリース日: 1965/9/15
レーベル: Volt(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は178位でした。

メンバーの感想

The End End

 えー!めっちゃ歌謡曲みたいじゃん!往年の歌手が渋めの歌番組に出ている時と同じ音像だ!この暑苦しさ/泥臭さが日本の土着的な、雑然としたムードと共鳴してリファレンスになったんだろうか。
 何よりも、この作品は表拍で手拍子を打てる曲が多い気がする。これまでこの企画で聴いた作品は、4分音符の2,4でスネアが強調するバックビートのさらに裏(8分の2,4,6,8)でノる演奏が基本形だと思ってたけど、3拍子じゃないのにこの感じのリズムが、アメリカにもちゃんとあったのか。

コーメイ

 以前レビューしたJames Brownのアルバムよりも、刺さった。というもの、歌い方の癖が、自分好みであったからであろう。たとえば、高音に向かう際に、一気に声を張り上げるのではなく、徐々に、ビブラートをたいそう効かしながら声量を上げる箇所である。これによって、聴き手に、音に対する準備する余裕が生じるのではないか。そのため、私には、聴きやすいアルバムであった。

桜子

 ブルージーな役もできるし、パワフルな感じもするし、ホーン隊の表情の変わりようがカッコいい!
 あとグルーヴが好きな感じなやつで、身体にフィットします。

湘南ギャル

 圧倒的フロント力(ぢから)。フロントが強いと他の楽器が主張してもフロントが消えないから、みんなそこそこ派手に遊べている気がする。そのおかげで、楽曲のどこを取っても味がする。特に管楽器!一聴して何人いるかわかってしまうくらい、それぞれの音に個性が出ているのに、とっ散らかっている印象も、フロントを邪魔している印象もない。
 にしても、この時代のアーティストたちは流行?のキャッチアップが速い。テンプテーションズが「My Girl」をリリースしてから半年ほどでオーティスは同曲のカバーを録音したそうだ。さすがに、ボブ・ディランの三週後に「Mr. Tambourine Man」を発表したバーズには敵わないが。現在のいわゆるカバー曲は、元ネタがある程度の権威性を帯びてから作成されるイメージだったので、彼らのスピード感にはなかなか驚かされる。

しろみけさん

 これまでのソウルのレコードと違い、メインボーカルの声以外がほとんど一切加わっていない。だからこそのステゴロ感というか、各楽器と喉一つで張り合う気概をダイレクトに味わえる。ギターも心なしかフリーキーで、隊列を組むようにバンドサウンドを構築していた時期からすると隔世の感がありますなぁ〜^^。

談合坂

 これまで聞いてきた作品はどこまでも重なり合うアンサンブルかどこまでも孤独なソロかという両極だったように思うけど、これはひとりの歌声でありながら孤独とは違う安心感のようなものがある。アップルミュージックのアプリで「Change Gonna Come」の歌詞を表示してみたら、なんとかこの表現力を視覚に起こそうとする取り組みがされていて面白かったです。

 私が思う"歌が上手い"とは、聴く側が"あ、ここが限界だな"という声の張り上げのもう一歩先へ行けることだ。バイトスタッフとしてある演歌歌手のライブで場内警備をしていた際、そんな声を聴いて思わず足を止めてしまったことがある。オーティスも小気味よく声を出してリズムを組み立てつつ、しっとりとした曲では人間の殻を破るように声を天まで届けている。これが魂(ソウル)ミュージック......。

みせざき

 歌に重点を置いたサウンドで、オーティス・レディングの粘り気のある突出したボーカルを上手く引き立てることができるバンドサウンドも含めとてと聴きやすかった。
 「Rock Me Baby」などのブルースソングも曲としての良さをそのまま活かしながら、歌ものとして再解釈しているのがとても面白かった。
 ソウルでありながら後のロックにも多大な影響を与えていると思った。

六月

 同時期に流行って蔓延していたロックの影響か、それ以前のR&Bよりも演奏やリズムにラフというか、のちのスライやディアンジェロに連なるような少しもたっとしたダルな感触をわずかながら感じる(リズムとか音楽理論がわかりませんが、これを後ろノリというのでしょうか)。もしかしたら、どんどんと規律化していくファンクに反して、ソウルはそのきっちり決まった空間からはみ出て、漏れ出していくような方向性に向かっていったのかもしれない。現在の音楽もこの真逆の方向性で二分されているというのは早とちりしすぎでしょうか。 
 それにしても、こんなに名曲ばかりを最高のシンガーが歌い続けるなんて、なんてよくばりで、贅沢なアルバムなんだと思う。その中でも、黒人のシンガーが、白人が作ったソウル・ナンバーをカバーしていることに胸が熱くなる。ミックたちマジで嬉しかったんだろうな。

和田醉象

 すごい良い。初期エレカシがすごい好きなんですが、なんで好きなのかわかってなかったんですが、この作品を聴くことで、エレカシの素地にすごく崩されたブルースやソウルがあり、自分がその要素を好きなことがわかった。

渡田

 絞り出すような声そのものは無骨なイメージだし、楽器隊が大勢いる訳でもなさそうなのに、曲全体はゴージャスなイメージがする。
 歌も楽器もっと激しくても良さそうなフレーズなのだけれど、それがむしろ控えめであり、大きな音よりも、音の一粒一粒を繊細に奏でることを重視している感じ。無骨な音が優雅でゴージャスに聞こえるのはここに由来している気がする。

次回予告

次回は、Beatles『Rubber Soul』を扱います。

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