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Doors『The Doors』(1967)

アルバム情報

アーティスト: Doors
リリース日: 1967/1/4
レーベル: Elektra(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は86位でした。

メンバーの感想

The End End

 これまで漠然と抱いていた"昔のロック"像にかなりピタリと合っている作品だと感じた。ロックンロールと、ディランやバーズのロックンロールとフォークを接合せんとした試みと、ビートルズやビーチ・ボーイズの偉大な冒険の成果とが、全てこのアルバムに表れている。
 オルガンと、深く歪んだVOXのAC30に入力されるエレキギターが醸し出すアイロニーがとても魅力的で、ジム・モリソンの歌唱や少し大仰なソングライティングがそのムードを堅実に補強している!素晴らしい!

コーメイ

 「Light My Fire」以外、知らない曲であったけれども、多様な音が楽しめるアルバムであった。「The End」などおどろおどろしい曲もあった。が、一方で、ポップらしい曲も収録されていた。そのため、幅広いものが体験出来るアルバムであった。

湘南ギャル

 アルバムとしてのまとまりの良さと、一曲一曲の粒立ちがこんなにも共存できることってあるのかな。本当に完璧なアルバム。曲順も良い。One of the 最高est アルバムの1曲目sです。
 『The Doors』あるある早く言いたい。
Apple Musicで聴くと音量めちゃくちゃ小さい。
気付いたら「Light My fire」のキーボソロ歌えるようになっている。
「Alabama Song(Whisky Bar)」の原曲がオペラ曲であることを知らない。

しろみけさん

 ギターとかベースも元を辿ればそうなんでしょうけど、にしてもオルガンって多分こういうことをする想定で作られた楽器じゃないですよね?
 例えばハウリン・ウルフとかレイ・チャールズとか、人間のパワーで感服させるような表現はこれまであったけど、フラフラの演奏で腹の底をじぶじぶと煮立たせるような感覚は初めてだ。裏を返せば、ある種の再現可能性もある。楽器を持ったらこんなことできるのかな、持ってみようかな。

談合坂

 ふらっと立ち寄ったライブで出てきたバンドに(この人達すごいぞ…)と一気に場の空気が締まって意識が集中していくような感覚。予想外にポップな方向へと展開していく軽妙なフレーズが面白い。やっていることの理解はできても、いざ自分がこれと似たようなことをゼロからやろうとしてもこんな楽しいものにはならないだろうな……と謎の悔しさを覚えてしまう。

 スウィングするリズムとロック的なキメのダイナミズムが両立する1曲目から、ボブディランやビートルズの作品で見られた鍵盤楽器のクラクラするような響きまで、ここまでこの企画で聴き連ねた作品を総括するようなアルバム。この手法は90年代的というか、"音楽の歴史"が生まれて以降、"音楽の歴史"を自覚し始めた人たちによる作品だなと。ドラッグやらアルコールやらで脳みそは揺れているし、体も震えているのだけど、妙に視界はクリアで、その状態だからこそ見据えることができる美しさを掴もうとしているような、そんなアルバムなんじゃないでしょうか。

みせざき

 ロックのダイナミズムを持って届けられるが、内容がとにかく異端な印象を受ける。ギターよりキーボードの方が終始激しいし、ヒット曲ですら6分や11分くらいあるし、歌詞はラブソングから派生して王様や殺人者やローマの地など、思いもよらない範囲の内容を含有させて来る。
 聴いている側からも進んで聴くというよりかは啓示を受けるために聴くというようなスタンスになるのではないか。キャッチ―な曲も結構多いが、一聴しただけで内容を理解できるような音楽には思えない。だけどジム・モリソンの声と共に聴き続けるにつれて自然に食い入ってしまう魅力を兼ね備えている。
 ロックは異端さが無ければその効力は失われてしまうものだと思うし、ビートルズが不良の音楽から普遍的な立ち位置を築きつつある時代だからこそ、次なるロックの一手を担うにはこの形がふさわしかったのだろう。

六月

 Jim Morrisonのボーカルが流れてきた瞬間、月並みだが、"うわ、斬新で強いヤツらがまた出てきたで"という、この企画でもう何度目かわからない感覚を味わった。R&Bやソウル、ファンクの天性の力強さとはまた違う、この後も系譜としてロックに流れてゆく、無頼や破滅性みたいなものがここで初めて確認できるような気がする。この後のJim Morrisonの人生を知ってるから、余計それを感じるかもしれないが、もうそれは最初から予言のようにこの声に込められていたのだと、おもわず身震いしてしまった。
 ボーカルだけでなく、もちろんサウンドも幻惑的でカッコ良い「The Crystal Ship」などに顕著なのだけれど、作品全体で鳴り響くオルガンが一種の酩酊やトリップするような感覚を呼び起こしてゆき、曲を聴いていてこんな直接的な身体の変化が起こったことがなかったので、驚いた。さすが、LSDを摂取した学者の書いた本(『知覚の扉』)からバンド名を付けただけのことはある。

和田醉象

 ロックンロール!だけど新しい。
 この企画において、まだここまでオルガンが流暢だったものはなかった。そこにおいてまず異色だけど、なによりもボーカルが怖い。ノリが熱いとか、声が低いとかじゃなくて怖い。なんだろ、歌というよりも呻きとか、漏声に近い気がする。精神的な不調によるブレで押し切ってる。そんな印象を受けました。クスリ臭い。天国に近い。なにかに取り憑かれてる?

渡田

 奇妙で豪華、不気味で真剣な、僕が思うロックがついに現れてくれた。
 ベースが無くて、オルガンがあった方がロックらしさを感じるというのはなんだか不思議だけれど。自分にとって、ロックがどんな楽器を使っているかはあまり重要ではないのだと思う。
 出ている音自体はジャズやソウルとも共通点が多いと思うけれど、幻惑をかけるようなレイ•マンザレクのオルガンと、取り返しがつかないことが起きる直前のようなジム・モリソンの歌い方が、映画の深刻なワンシーンのような緊張感を思わせて、そこがロックだと感じた……! 僕はロックに緊張感を求めていたのだと思う。
 ロックを聴くからには、その音楽が"自分のものだ"と思える瞬間が欲しいし、もっと言えばそれが新しい冒険の始まりになるようなものであって欲しい。
 ドアーズは、ステージの上で卓越した技術を見せつけるような音楽ではなく、その奇妙さでステージの上からこちらに魔術をかけ、どこかに連れ去ろうと手を伸ばしてくるような音楽だった。僕がもし、60年代に生まれていたら、ロックに夢中になるきっかけはドアーズになると思う。喉が詰まるような緊張をもたらす音楽からは、なんだかもっと面白いことが起こる予感がする。自分が今まで見てきた世界の裏面に、それと同じ大きさの奇妙なものが潜んでいる気がした。

次回予告

次回は、Jefferson Airplane『Surrealistic Pillow』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
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