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カーネーション『LIVING/LOVING』(2003)

アルバム情報

アーティスト: カーネーション
リリース日: 2003/8/23
レーベル: cutting edge(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は94位でした。

メンバーの感想

The End End

 大好きなスリーピースバンドがいくつかある。例えばBase Ball Bearや、ペトロールズや、andymori…これらに共通するのは、“鳴っていない音が聴こえる”こと。
 広義の“ポップ・ミュージック”に視線が向けられたであろう楽曲たちは、ギターしか弾いていないのに、エレピやストリングスや管楽器のような音色が聴こえることがある。ツボだけを押すようなアレンジって、歌を引き立てると同時に、そのツボの周りに広がる豊かな彩り=いくつもの“あり得たアレンジ”の片鱗を覗かせてくれる。
 この作品も、“考慮されながら鳴らされなかった演奏”に溢れたサウンドで、その広がりが本当に大好きだ。バンドの編成が変わった直後のアルバムということもあり、円熟味と同じくらいフレッシュさに満ちたサウンドで、落ち着きと興奮と感傷が同時に呼び起こされた。

桜子

 肩の力が抜けて、穏やかな気持ちで聴ける。
どんな精神状態でも、いつでもどこでも、どこまでも聴けそうなアルバム。
 すごく失礼な言い方にはなってしまうけれど、こういうので良いんだよ〜〜〜って気持ちになる!
 正直、驚く真新しさみたいなみたいなものも無いけれど、進化する必要が無いのが音楽の良いところだし!

俊介

 タイトル通り、生活の中にある愛が色んな形で10個切り取られてるかんじ。
 はじめて聴いたからこの魅力を見切った自信は勿論まったくないけど、きっとこれを聴いた人すべてにこの音楽がフィットするようなすごい素敵な素晴らしい瞬間だけは確実にあることだけは確信。
 今までで一番好きかも、傑作。

湘南ギャル

 ミュージックマガジン誌のこのランキングでは、200位以内に00年代以降のアルバムが44個しか入っていない。この企画で扱う100位以内を見ると、さらに割合は減って19個作品のみだ。だから、相当凝ったことか相当発展的なことをしないとランクインしないのかと思っていた。カーネーションは、そんな私の邪推を鮮やかに突き破ってきた。シンプルなグッドミュージック。そう言うと簡単そうに聞こえるが、それを目指した人のうち何人がこのクオリティに到達できるだろう。編成の少なさを感じさせない骨太な土台がもたらす安心感と、少しクセのあるボーカルからおぼえる遊び心の、絶妙な塩梅が気持ち良い。ずっと聴いてても飽きなさそうで、ずっと聴いていられるくらいどんな景色にも合う。ハイウェイ・バスは言葉選びもメロディも面白くて、レビューを忘れて何度もリピートしてしまいます。

しろみけさん

 片方はガレージ由来のバキッとしたディストーションが塗されたギター。片方は丁寧に燻された歌声と、素直に進行するメロディ。そして微かに後ろノリのドラムが、両者のハブとしても、ポップとアウトサイドの縫合部としても、超一級の役割を果たしている。なにやらダーティーなものを喰らわされているが、驚異の喉越しで胃の底まで止まることなくずり抜けていく。アルバムが全て同じ曲に聞こえるだろうか?そういうのは大好きだ、ずっとこれだけでも一切問題ない。何万回でも聞かせてくれ。

談合坂

 ある程度熟練しないと辿りつけない安定感を感じる。ピシッと馴染んだスーツみたい。もしくはターボに頼らない大排気量のエンジンみたいな。
悪気は全くないのだけど、この並びに入っているのはなんだか意外だなとも思う。ツッコミどころがないというか、一歩引いたところで着実にやってる感があるというか……

 母親に聞かせたらこれをくるりだと思いそう!歌メロが全部哀愁に溢れている。これ以上語ることがないくらい琴線に響かなかった。

みせざき

 4つ打ちが気持ち良い。王道ビートで刻むドラムがとても気持ち良く感じる。それに重なるクランチ気味のギターの気持ちよさ、それにドライだがアクの強いボーカルの合わさるサウンドがとても気持ち良かった。コレという核のサウンドが固まりながら、その流儀でカッコ良さを決め切ることができるバンドに感じた。

和田醉象

 EDO RIVERでもなく、GIRL FRIEND ARMYみたいな振り切った内容でも無いこの作品がランキングに名を連ねているのが意外。
 内容的には先に挙げたアルバムの内容を足して2で割った様な内容。前半は割とおとなしめな、EDO RIVER的な、シティポップに通じるセンスの楽曲。後半は結構激し目で、私が好きなカーネーション、という感じだった、
 特にUSED CARは、静けさの中に激しい炎をともしている様で、自分の表現にも近くて、しっくりきた。

渡田

 力強いのか、それともにやけているのか…どっちで捉えたらいいかよく分からない。
 歌詞は修辞が多く、訴えかけるような内容で、華奢な男性の印象を受けるけれど、それを歌い上げる歌声ははっきりと芯のあるもので、雰囲気が一致しない。
 こういう力強さと弱々しさの対比からは、繊細な心情の中に垣間見える芯の強さとかを感じることが多いけど、このアルバムからはそういう印象ではなく、どちらかというと、どんな頼りない状態でも根本的に余裕を持っているような、そんな軽やかなものを感じた。

次回予告

次回は、レイ・ハラカミ『[lust]』を扱います。

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#アルバムレビュー
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