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Velvet Underground『White Light/ White Heat』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Velvet Underground
リリース日: 1968/1/30
レーベル: Verve(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は272位でした。

メンバーの感想

The End End

 ここまでの作品リストに、ここまで反復の快楽を自覚的にやってるアルバムってあったっけ……?収音ではなくアンプから音が出る段階でガサガサしてる歪みも。ずっとガサガサしてるから、急に綺麗なアコギのアルペジオが鳴りだす瞬間、思わず声が出るくらい心地良いな……
 っていうか、"テクとかじゃない"みたいな作品自体ここまでなかったのでは???前作を指して"3万枚しか売れなかったが、買った3万人は全員バンドを始めた"という言葉があるけど、こっちの方がそれを感じたかも。

コーメイ

 はじめは、ゆったりとしたテンポで始まったけれども、急激に「I Heard Her Call My Name」でがしゃがしゃしたギターが始まった。最初は、驚いたものの、だんだんと慣れて来ると、荒いのが却って、聴く意識を向上させた感があった。そのため、後半は、聴いていて乗ることが出来るアルバムであった。

桜子

 変なアルバムだ〜!しかし、一番最後の「シスター・レイ」が凄まじい。果てが無い地平みたいな曲で、こんなに長いんだけど、まだまだ聴いてみたいと思ってしまう。あと、ボンボン言ってる低音の音響がとても好みだ。

湘南ギャル

 四月から会社員になったんだけど、こんなにも会社を辞めたくなる音楽もそうそうない。今すぐアンプフルテンで汚い音をかき鳴らしたい。こんな音楽は困る。生活をかなぐり捨てたくなる。危険。

しろみけさん

 ホワイライ♪。例えば“ジャンク”と呼ばれる音楽ジャンルがあるけど、これはどうだろう。ホワイライ♪。明らかにヨレてるドラム、ベース、それでギターはジギジギ鳴っているだけ。ホワイヒー♪。「The Gift」で右耳に張り付くノイズと、左耳で囁かれる煤けた男と女のシーン。ホワイライ♪。全く違う様相の二つが、まさにヴェルヴェットなアンダーグラウンドとしか形容できない奇妙な退廃を描いている。乱調の美、乱調の美って感じ。ウーーーーーーー、ホワイライ♪。

談合坂

 バイノーラルASMR音声作品みたいなものってさほど遠からずこの並びにあったりしないだろうか。最初の一回を電車内で聴いていたのだけど、私のヘッドホンが実は激音漏れしていて得体の知れないノイズとボイスを撒き散らすマシンになっていたりしないだろうかと何度も周りを見回してしまった。反復のなかで音源のことを否が応でも考えさせられるところとか、自分の頭の外部で音が鳴り続けている感覚とか、心地良さとは言わないけど現代のASMRのアイデアなんかに通じるものがあるように思う。

 反復する音というのは心地がいい。頭の中で数小節の興奮が堆積し、気づいたら器から溢れている。ましてやそれがヨラテンゴやソニックユースに連なる美意識に貫かれているならなおさらだ。彼らの音楽はうまく言葉にできない。なんでだろう。音だけに美意識を詰め込んでいるから、言葉の介在する余地が少ない気がする。

みせざき

 なんだこれは、、やっぱすごいな、でも分かったつもりで語るにはまだ全然理解しきれていないから知ったかぶりはやめたい。ギターとか楽器の音は当時の音だけどその鳴り方とか異質で破壊的で既にある型というものを全て踏みつぶしている気がする。ファーストとかにはメロディアスな曲も入っていたけど、そういうのが今作は全然無いので、とにかくその衝動だけを魅せられている気がする。

六月

 当時このアルバムを買ってきて針を落とした人はそこからスピーカーを通して流れてきた音にどんな反応を示したのだろう?正直雑音にしか聞こえなかったんじゃないか。あまりにも商業ベースに乗らない音が初めから終わりまで続いていくので、何度も聴いているアルバムのはずなのに、聴くたびにびっくりして、そしてよくぞこれが世に出たなと笑ってしまう。その頂点はなんと言っても17分超えの「Sister Ray」なのだけれども、この曲以外にも、1作目の前衛の精神から少し離れたロックンロールそのもののようなシンプルなアイデアや構成に基づいた曲が並んでいるなと改めて聴いてみると気が付く。それでいて、そのロックンロールというものの凶暴さを純粋なまでにブースト魔改造してしまっているのがおかしいが、その行為がこのアルバムから数十年後のオルタナティブ・ロックにおける戒律の一つになっていることを思うと、このアルバムもまた偉大だなあと月並みな感想が浮かぶ。

和田醉象

 音が粗悪すぎる。ここまで素地でいいんだと勇気をくれる。不純分など一切取り除かない。ソリッドなあり方が提示されている。あまりにもソリッドすぎて、感じていた時代の壁が急に2枚くらい剥がれたような感覚に陥る。
 みんな"こんなことしたら怒られるよな"と思っているラインを軽々と超えて"こんなところに大きな広場があるぜ。お前らは来ないのか?"と誘っているようだ。後世のロックバンドたちの行き先をどでかく空けてくれた。そのうえで、その道を行く人たちにとっての青写真、金字塔になり続けている。領域拡張の触媒かつ台風の目である。これは事ですよ。

渡田

 精神の昂りそのものを見せられているようだった。いきなり始まったノイジーな音は、イントロとかサビとか、曲の構成もないままに、ひたすら印象的な言葉と音が続いていく。
 形の整ってない音楽だけど、荒削りというより、ルー•リードたちのアイデアのメモ書きをそのまま見せられているよう。
 自分たちの感性を見せつけること以外は切り詰めたこの音楽は、腕がどうとか、音楽の機械の知識がどうとか、そういった面倒事を吹き飛ばして、誰かに"音楽を始めてみよう"と、そう思わせる音楽だと思う。

次回予告

次回は、Laura Nyro『Eli & the 13th Confession』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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