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Otis Redding『Complete & Unbelievable: The Otis Redding Dictionary of Soul』(1966)

アルバム情報

アーティスト: Otis Redding
リリース日: 1966/10/15
レーベル: Volt(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は448位でした。

メンバーの感想

The End End

 カッコいい!!感情が素朴に誇張されていて心地良い。食材が元々持っている味をより引き出すために使われる少量のうまみ調味料みたいな、そういう類の嬉しさだ。
 ザコシのように"誇張されていること"それ自体を楽しむ楽しみ方はあるけれど、感情って昂らせて振りかざせば伝わるというわけではないので……今作の演奏/歌唱はエモーショナルでありながら共感の余地もしっかりと残されていて、スッキリ私の中に染み込んできてくれた。

コーメイ

 今回のアルバムでは、「Day Tripper」のカバーが、一等面白かった。Beatlesのファンである点が、大きいけれども、あそこまでことばを詰めたカバーが、なかなか悪くなかった。なぜなら、本家そのままではなく、Otisのソウル風の歌唱が、新たな雰囲気をこの楽曲に感じられたからだ。そのため、他の歌手のカバーがあるのであれば、聴いてみたいという気を起させた。

湘南ギャル

 オーティスを聴こう!となったら『Otis Blue』の方をつい聴いてしまっていたんだけど、こっちの方が遥かに好きだ!こっちのがRS誌の順位低いけど!
 『ソウル辞典』というタイトルであるものの、私にはファンクとソウルの中間を自由に飛び回っているように思える。ソウルだとどうしても歌がメインになってしまうことがあるけれど、このアルバムはバックバンドだけ聴いてても楽しい。びっくりするくらい踊れる。それでいて、歌での表現力は相変わらずピカイチ。こんな歌い方できる人他にいるんかな。ボーカルとバックバンドのアンサンブルも、『Otis Blue』より混ざり合っている気がして好みだ。ファンクとソウル、良い意味でどっちつかずなおかげで予定調和にならず、聴いててワクワクする。オーティス・レディングというジャンルとしか言いようがない。

しろみけさん

 邦題『ソウル辞典』て。でもあながち間違いじゃない。頭打ちのビートでガンガン煽る「Sweet Lorene」から「Hawg For You」のレイドバックまで、シングルの寄せ集めではなくアルバムとしてのバラエティに富んでいるのが伺える。何よりこのホーン隊、なんならオーティス・レディングの歌声より“時代”って音だ。確かに辞典かも。

談合坂

 なんかスターターパックみたいなアルバムだ……と思ったら「Dictionary of Soul」だった。たしかにこれならソウル辞典って名付けても許されそう。前知識もソウルの心得も全然ないけど、この一枚にOtoRが詰まっているんだというのは十分に伝わってくる。ギターがやけにパリッとして前に出ているのが印象的。スタジオワークの音の良さだけどライブ感も奪われていない。

 「Day Tripper」カバーが秀逸。息を切らしながら歌い切るボーカルとつんのめるようなドラムのツービートの隙間を縫うように鳴らされるトランペットの小気味良さ。そう、アルバムを通してルンルンとスキップしながら演奏が加速していくような小気味良さこそこのアルバムの肝だろう。

みせざき

 歌よりもバッキングのファンキーさの方が癖になる感覚がある。そこまでハードな曲で無くてもギターをはじめとして雰囲気を持っていくノリの良さ・良い跳ね方を感じる。
 オーティス・レディングのボーカルを聴いてもあまり新鮮さを感じないのは、これがR&Bの原型としてしっかり今に受け継がれてきているからなのだろう。この原型を大切にしていきたい。

六月

 遺作というものは往往にして、その作者が若くして死のうが大往生を遂げようが、そして作者の死因がなんであれ、その屍臭を拭うことができないものであるような気がする。この作品の場合、作者のOtis Reddingはこの作品の発表から一年後の1967年の冬に飛行機事故で亡くなった。
 このアルバムの中には、12曲のグッド・ミュージックがただただ並べられている。ただただ楽しい演奏と、伸びやかで溌剌とした歌声がこのレコードには記録されている。そこに死の陰鬱さやあの世へ近づきつつある瞬間の現実離れした感覚は一切ない。ただただ生が詰め込まれている作品だ。だからこそ物悲しさを感じるのは、ただの自分の偏見だろうか。

和田はるくに

 前この企画で聴いたの(『Otis Blue』)と比べると、前のほうが好きだな。
 前のは一晩の出来事を激烈に歌い上げている感じがするけど、これは日々の生活に則している気がする。「昨日はああだったけど、今日はこうだったぜ!」みたいな。淡々としてる。
 個人的にはOtisが激情家みたいな印象持ってたからちょっと期待外れかも。(その汗臭さが苦手という人には逆におすすめできる!声もあんまり近いミックスされてないしね。)

渡田

 R&B•ソウルに対してはこの企画始まって以来、アルバムが来るたびに苦手意識を持っていたけど、今回は特に書けない……。今まで企画で聴いたソウルのアルバムも聴き比べたけどどうしても特徴を捉えきれない。
 「Day Tripper」の淡々として力強いドラムは好きで、親しみを感じる個性も確かにあったけど……、やっぱり最後まで馴染めなかったのが事実で、次の座談会で他メンバーに解説してもらうのを待っている状況。自分が普段聴いている音楽とそれほどまでに遠いのかな……

次回予告

次回は、Smokey Robinson and the Miracles『Going to a Go-Go』を扱います。

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#音楽
#アルバムレビュー


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