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Aretha Franklin『Lady Soul』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Aretha Franklin
リリース日: 1968/1/22
レーベル: Atrantic(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は75位でした。

メンバーの感想

The End End

 前回聴いた彼女のアルバムは、構造的に"歌が全体を引っ張る"形をとっていたように思う。それに対して今回は"まずアンサンブルが在って、その上に歌が乗っかっている"曲が増えたような印象を覚えた。
 エレキベースの弾力のある音色/プレイが、バラード・ナンバーにバッチリマッチしている。スポーツドリンクのように身体にスッと染み込むサウンドで、何度聴いても苦にならない。

コーメイ

声が、伸長し、それによって静かに乗れるアルバムであった。高音で押す場面は、目立たなかったものの、一定以上のリズムの良さから、聴く気を起こさせないことは無かった。

桜子

 最後二曲の美しさに落涙......私の帰り道のルーティンにピッタリ。街に陽が落ちると、一日が終わるのが分かって毎日寂しくなる。少し焦る。「Groovin'」聴く。その哀愁で私のルーティンワークを労ってくれたような気持ちになる。「Ain't No Way」ではゴージャスな気持ちで"本日の営業は終了しました"出来る。機嫌良く床につきたいからねー音楽サンキューゥ

湘南ギャル

 前回扱ったアレサ・フランクリンの作品では、なんか大袈裟で苦手だ、みたいなことを書いた。今作では、前回感じたようなしつこさや大仰さはさほど感じず、心地よく何周か聴くことができた。元気が吸われることはなく、ちゃんと元気が出た。テンポ感やポップさがちょうど良かったのかもしれない。

しろみけさん

 前作よりも素直なソウルナンバーが増え、純度というか、アレサ・フランクリンを生で食するような楽曲が並んだ。その上で、この絶妙に重苦しくなく、かといって軽く通り抜けることもしない歌声の、唯一無二の質量がドガンと感じられる。別にこれがどのご飯屋さん──例えばジョナサンとかバーミヤンとか夢庵とか──で流れていてもハムハムできるけど、トイレに行く道の途中でふと立ち止まってしまうような、そういう塩梅。それで、これは言語をも軽く凌駕する。

談合坂

 ノリにノれてとても楽しい音楽なのだけど、とにかく何者にも邪魔することのできない正解が出ちゃっている感があって、どういう風にコメントしたらいいのか迷ってしまう。わざわざ言葉にしなくても、ぜひ聞いたままに楽しんでねというだけで説得力があるような、そんなイメージ。バンドに合わせてノッていようが何だろうがとにかく声ひとつで説得する力が凄まじくて、笑みとも何ともつかない口角の上がりが生じてしまう。

 まず、演奏が格段にモダンになっている。ホーンセクションの使い方だとか、ギターのバッキングの差し込み方だとか。リズムもカチッとしているし。時代の美意識の表れかしら。悲しみも喜びも歌に昇華することで普遍的なものに押し込めることができてしまう彼女こそポップミュージックの出発点だ。(あとで調べたらギターがエリッククラプトンでした!そりゃ上手すぎるはず!)

みせざき

 前回聴いたアレサ・フランクリンの作品よりもメッセージ性と力強さを感じた。それは声の美しさに加え張りが足されているようにも感じるし、バンドサウンドはよりノリと一体感を強く感じる。 
 曲やメロディのフックに自然に惹きつけられる感覚はこのアレサ・フランクリンの声ならではであると強く感じる。1曲目と5曲目は特にそう思う。

六月

 この企画で聴いた前のアルバムよりも"無敵感"がある。目前に敵うもの何一つなし、というような雰囲気が彼女の声から聞こえてくる。でもあまりにも徹頭徹尾その圧倒的な勝者の空気が流れ続けていくのに少し食傷気味になってしまうのも事実で、それに加えて、Aretha Franklinの音楽性としても、ここで打ち止めなような、これ以上何かが発展するようなことがないような気が(他のアルバムを聴いてないのだけれど) してしまって、正直これ以上何を言えばいいのか書きながら困っているところでもある。
 それでも、「Niki Hoeky」なんかは今にでも踊り出したくなってくるようなファンキーさだし、オーラスの「Ain't No Way」は感涙必至の必殺バラードで、これぞR&Bの見本市みたいな曲が並んでいるアルバムだと思う。これからこれらの音楽が、どんどん様々な種に分岐して、突然変異を繰り返していくのかという思いを持ちながら聴いてみると、また違ったふうな楽しみ方ができるかも。

和田醉象

 前この企画で論じた彼女のアルバムとの違いを論じることが難しく、言葉が出てこない。ただ言えるのは、曲の質が上がったな、ということだ。よりまとまりは出てきたように感じるし、それがアルバムの表題にも表れていると感じる。(自信がなければ極限に男の社会で、我こそは"Lady Soul"である、なんて言えないだろう)
 素晴らしいのがわかるんだけど、それを明文化するに当たって自分の知識や技量が追いついていないことが悔しい。彼女の伝記映画や関連の文献にもあたってみたいと思う。、

渡田

 ソウルはやっぱり苦手です……。自分の音楽と捉えられないのが原因なんだろうか。
 歌詞の意味は関係ないと思う。力強く伸びやかな声や、嗜むように上品な楽器の音に対して、"これは自分のものだ"とか"自分に訴えかけている"という直感が働かない。
 オーティス•レディングの時もこうなったけれど、もう徹底的にソウル/R&Bの歴史について知ってみたい。どうしてここまで自分と共鳴するところがないのか、あるいは気づいていないだけなのか理由が知りたい。

次回予告

次回は、Velvet Underground『White Light/ White Heat』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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