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Laura Nyro『Eli & the 13th Confession』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Laura Nyro
リリース日: 1968/3/13
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は463位でした。

メンバーの感想

The End End

 スクエアとシャッフルとを気ままに行き来する構成を多くの曲がとっていて、それが飛び道具としてではなく成立しているのが凄まじい。リズムだけでなくテンポも伸び縮みするようにシームレスに変化していて、スルッと聴けているのが不思議になる。
 演奏も録音もとっても綺麗で、少しティン・パンっぽかったかも。シティ・ポップ・リバイバルの延長で聴いてハマる人多いと思う。

コーメイ

聴いていて、何故か乗っていけるアルバムであった。どちらかというと、聴くよりも聞く方が、適していると思われる。なぜなら、スルッとした音楽で構成されているからだ。以上のような印象を抱いた。

桜子

 この企画で聴いてきた、ここ最近の音楽で1番好きかもしれない!圧倒的に感動した。全然古臭さを感じない。エバーグリーンの輝きを放ちながら、古臭さを感じないって、まったくすごいことだ。それに歌声にはクリーンさ、清涼感がこもっていながら、ちゃんとソウルフルな感じがあって、感動した。

湘南ギャル

 今までに出てきたソロシンガーは、どこか大御所感が漂っていて、自分とは距離が遠く感じた。紅白歌合戦で一年に一度見る、芸歴何十年選手みたいな。ライブハウスでもアリーナでもなく、座席のあるホールが似合うような。そして、それが60年代の雰囲気なのかと思っていた。違った!
 ローラ・ニーロは羽が生えているかのように、自分の望む場所へ自由に飛んでいく。テンポも、テンションも、そしてそこに流れる時代だって、彼女の思うままだ。しかも、彼女は軽やかに進みながらも、我々を置いていかない。彼女の歌声というライドに乗れば、あとは一緒に連れて行ってくれる。自分だってどこへでも行けるじゃないかって、夢を見ることができた。

しろみけさん

 もしかして、白人の女性シンガーってこの企画初?(誰か見落としてたらごめんなさい) ってので、ヒリヒリと這いつくばるような地鳴りというより、草原を抜ける軽やかさというか、ウィスパーとハミングを含めて整頓された聞きやすさが作品を支配している。正直「Lonely Woman」みたいなバラードはビリー・ホリデイとかの声でじっくり聞きたいんだけど、その後の「Eli's Comin′」みたいなアッパーチューンは唯一無二。これはこれでフィジカリティーの勝利!

談合坂

 音像がすごくJ-POPじゃないですか?NHKホールに中野サンプラザにZepp東京、そしてレンタルCDショップにウォークマンという感じがする。実際にはもう何段階か経るのだろうけど、いくつもの側面で時代を先取りしているのが一聴でわかるような。洗練されているけど深遠さを感じさせない。そういうわけで、これまで聴いてきた作品と比べて圧倒的に素直に自分のなかに入ってくる感覚がある。洋楽編でこれまで良い作品にいくつも出会ってきたけど、そのなかでも初めて日常のなかで聞きたいと思ってライブラリに追加した作品。

 2曲目から華麗にビートチェンジを決める段階でこの作品に惚れていたのかもしれない。演奏の組み立て方も、録音された音の立体感も、メロディラインをなぞる歌唱とミュージカルを思わすような演技が両立するような歌い方も、全てが「60年代の音楽」というフィルターなど存在していないかのようにストンと脳の中に立ち現れる。素晴らしい。

みせざき

 楽器のフレーズとしても、ボーカルとしても、歌物としても、全ての面で楽しむことができると感じた。全てのパートがバランス良く、ハイブリッドに聴こえ、ボーカルもクリアなので90年代以降の女性ボーカル物の音楽に聴こえるが、これが60年代というのはたまげました。アメリカの音楽でも限り無くそれまでの時代に出てきた音楽を融合し切っているものに感じる。

六月

 こういった女性SSW(シンガーソングライター)的な音楽が、1967年にあったなんて。なんだかオーパーツを見つけたような気分だ。そう思うくらいに、あまりにもCarole KingやらJudee Sill​​やら、Fiona Appleやら、僕が好き好んできた彼女たちの音楽の要素の全てが(雛形ではなく完全な形で)もうすでにここにある。なぜみんなこの人のことを口にし、話題にすることがないのだろう?今回の企画で初めて聞いた。
 聞いてみると、カントリー音楽、フォークやR&Bの折衷がとても自然な形で行われている。こういう言い方が合っているのかはわからないけれど、ポップ音楽の作り方の種明かしをしてもらった気分。

和田醉象

 何なんだ?急に時代とんだ?と言いたくなるぐらいジャケの絵力。
 それはさておき、大概Nyroの一人の力がすごいアルバムだと思う。特にM3『Sweet Blidness』はミュージシャンとしてまとめ上げる力ないと許されない内容だ。こんな無理やりなテンポチェンジが許されてたまるものか。よほど立派な軸が通ってないと許されない。ここを通ったことでアルバム全体への期待値が上がった。
 だがその期待に答えるように曲の強弱、アルバムの急上降下は続く。M5「Lonely Woman」などAretha FraklInやOtis Reddingに匹敵するほどの激情家ではないか。歌声は口ほどに物を言う。とても苛つく事があって、一通り人に当たったあとなどこのような心境じゃないか。てめえ俺をなぐさめものになんかにするじゃねえ、俺はここで終わりなんかじゃないぞとくすぶる心がまんまここにパッケージされている。その後立て続けに「Timer」が登り調子に始まるのもグッド。アルバム全体で見てもここが一番印象に残る。
 バックバンドの表情よりもシンガーの心模様や言いたいことが見える歌い手はやはりいいものだ。"お前はどうなんだ"と絶えず対決させられている気分になる。音楽に真剣に向えている気がしてとても良かった。時代を超えても、ライブを見れなくても、人の背筋をピンとさせる音楽とはこういうものじゃないのか。

渡田

 リビングで流して家事をしながら聴きました。それだけ不自然に意識させられるところがない音楽。邦楽を聴いている時にも近い感覚があった。
 ただ、この企画の中で、自分が音楽に対して緊張感とか不気味さを求めていることに気づきはじめていて、その自覚があった状態で聞いたからか、こうしたリラックスできる音楽については惹かれるところが少なかった。
 自分の好みはこういうものだ、と思い込んでしまうとついつい裾野を狭めてしまう。

次回予告

次回は、Zombies『Odessey and Oracle』を扱います。

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#音楽
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