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Jefferson Airplane『Surrealistic Pillow』(1967)

アルバム情報

アーティスト: Jefferson Airplane
リリース日: 1967/2/1
レーベル: RCA(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は471位でした。

メンバーの感想

The End End

 サイケデリックがカウンターカルチャーであって"サブ"カルチャーではなかったことが窺い知れるというか、お馴染みのグニャグニャした音像なのに風通しが良い。後ろ暗い雰囲気がほとんどない。これは道を外れることではなく本当に人類の新たな道を拓くことであると、少なくとも本人たちは思っていたんじゃないだろうか。
 全編通してアコギの音がめちゃくちゃ良かった。説明しづらいのだけど、私の好きなアコギの音は、金属とナイロンとガラスのちょうど中間の物質が振動しているようなイメージを抱かせてくれるものです。

コーメイ

 "サイケの色が、段々と現れる時期となってきたな"と思わせるアルバムであった。全体的に、ぐにゃぐにゃしているけれども、シャキッと決めるところは、決めるといった印象が強い楽曲が収録されていたと思われる。そろそろ、よりいい意味で歪み、直感が働く音楽が主な潮流になると予感させるアルバムであった。

湘南ギャル

 普通にめっちゃ好きだ。普通にめっちゃ好きで感想浮かばない。たとえ歴史的価値が無くったって、好んで聴くだろう。
 明るくないし爽やかでもない。でも、聴いてるうちに自分の中にエネルギーが満ちていく。テンションが上がるというより、基礎から底上げしてくれるような感覚がある。

しろみけさん

 これはウィキとか解説ブログを見る前に抱いた、霊感みたいなものなんだけれど、この作品は当時じゃなくて今の耳で聴いた評価だと思う。だってこんなにポストパンクみがあって、ピュアで、いつ何時聴いても違う場所で違うようにテンションがアガれるアルバムなんてそうそうないもん。こういうのをやりたい人たちの音楽を聴いた人たちのやる音楽を聴いた人のたちのやる音楽を聴いた人たちのやる音楽を聴いた……で、俺が生まれたってわけ。

談合坂

 聴いている間コメントを考えるのがけっこう難しいアルバムだった。ジャケットのぐにゃぐにゃしたフォントに身構えていると拍子抜けなくらいまっすぐで綺麗な音が聞こえてくる。同時代的な体験を得るのはいろいろな面でなかなか難しいけど、高級料理を何も知らずに普通に美味しいものとして一気喰いしてしまっているような惜しい気持ちが残る。

 5曲目、アコースティックギターの爪弾きの奥で聞こえてくるホーン楽器の静かなため息のような音に、エレキギターを用いるだけに収まらないこの時代のサイケデリック感覚の一端が垣間見える。冷静な頭を片隅に持ちながらも、頭を振ってそこから逃避していく。初めて聴いたんですが、こういった曲を挟んで緩急をつける作りが名盤然としている。

みせざき

 私の畑の音楽ではないが、心地いいし、素晴らしいと感じる。曲が上質で、ローファイながら凄く聴きやすい。しかもシンプルなサウンドでエフェクトもほとんど掛かっていないのに、ただのロックンロールナンバーでは無く、自然に異世界にトリップさせられるような幻想的な世界を描けているのが素晴らしい。
 4曲目くらいから急にアコースティックナンバーが増え、更に超現実的になり、かすかに足される、リバーブがかかったバスドラ?やフルートのような音もシンプルながら素晴らしい。でも「3/5 of a Mile in 10 Seconds」からまたギターが炸裂して畳みかけてくる感じがまた最高!

六月

 アングラな空気を感じる初めてのレコードかもしれない。なぜだろう、特にギターの音とそのボーカルの録音にその空気を強く感じる。とりわけ変なミックスでもなんでもないのに。なんだか、1960年代後半の音だなあって、その時代の雰囲気をこれまでで一番感じたアルバムで、それは決して悪いことじゃなくて、もうこの現代には失われてしまって二度とどこにも同じように生まれないものが持つ良さがあると思う。そういうもう人為的なものを超えた空気が備わっている作品だった。「Comin' Back to Me」が良き。

和田醉象

 なんかかわいい。ジャケを見ると髪型はまだまだなんだけど、格好とか現代に近づいてきたことを感じさせるし、肝心の演奏もなんかジェブナイルな感じ。
 だけど結構手広くやっている印象。バンドの主流はサイケなんだろうけど、The Miillenniumみたいな瞬間もあるし、秀逸なギターインスト、ガレージのはしりみたいなトラック、ブルージーなのまで取り揃えが多数だ。
 本人らのルーツが反映されたのか、バンドをする中で出会った人たちからの影響なのかは分からないけど、それも踏まえて虹色だと思いました。

渡田

 歌詞もリズムもポップなのだけれど、その上でどこか正気じゃないと感じる音楽。
 一定の拍だけ強調されるリズムに、楽器の音はどれも輪郭がぼやけて、音の尾を引いていた。
 外界から聞こえた音楽に思えない。考え事をしている時に頭の中で流れる音楽ように、大枠の形はあるけれど、その端々は変幻自在の曖昧さがある。こういう音楽は、夢見心地とか万能感とか、ハイな気分とか、神経レベルの京楽を訴えかけてくる。
 自分たちがやりたい事をやっているだけのようにも聞こえるけれど、人間の"京楽"というものに対しての解像度が高くて、繊細な造りが確かにある事を感じた。

次回予告

次回は、Aretha Franklin『I Never Loved a Man the Way I Love You』を扱います。

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#音楽
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