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Flying Burrito Brothers『The Gilded Palace of Sin』(1969)

アルバム情報

アーティスト: Flying Burrito Brothers
リリース日: 1969/2/6
レーベル: A&M(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は462位でした。

メンバーの感想

The End End

 『Sweetheart of the Rodeo』よりはずっと面白い。カントリーに立脚しながらそこを逸脱して/超えていこうという志向が見られるので。ソングライティングも、ファズギターの採用も、なんだか、"ロックをカントリー側に取り込む"というよりは"カントリーから飛び出す"志向に感じた。
 でも、どうしても『三丁目の夕日』的なイデオロギーの匂いは感じてしまうな……。いわゆるZ世代的なノスタルジー消費って、これとはやっぱり形が違うような。彼ら(Z世代と呼ばれる人たち)のノスタルジーは"現実に対するオルタナティヴ"だと思うのだけど、こちらは"帰る場所"を提示しているように思う。

コーメイ

 ロックでありながら、カントリー調の曲が目立つように思われる。のみならず、カントリー調に加えて、ハワイアンの要素―鍵盤の音色―も、あり、さまざまな分野が組み合わさり、1枚のアルバムになったような気がした。

桜子

 テロテロした、丸みのある暖かいギターの音がとても印象的ですね。ホッとする。
 「愛を戻して」のアレンジは素晴らしい!それぞれの楽器がのびのびと歌っているけれど、それらはすべて過剰じゃないから、綺麗にまとまっている!

しろみけさん

 カラッとしてて、ルーツ特有の粘っこい滋味よりも今日的な快楽に迫っているような気概を感じる。ただ、自分がカントリーやブルースを聞く時に欲しいのはあの粘っこさであって、フライング・ブリトー・ブラザーズ(なんちゅう名前)を求めるシチュエーションは別に浮かばないなと思ってしまった。なんというか、塩コショウを別々で買わずに、一瓶になってるやつを衒いなく使いそうな人たちだと思った。そうじゃなくてぇ!

談合坂

 ずっと(これはなんなんだ……?)という気持ちが晴れぬまま聴いていた。カントリーの系譜に馴染みがないせいか、知らないところからやってきて、知らないところに行こうとしている人たちをただただ眺めているような体験になっている。いや確かにグッドバイブスらしきものが流れているんだけど、いざレビューを書くとなると困る。子守唄的な良い具合の落ち着きが好きだけど、もっと良い聞き方がありそうだよな……というモヤが晴れない。

 由緒正しいポップスのリードギターだ、という感触。前に出るのでも引っ込んでるのでも無く、コード感の担保とボーカルのメロディーの下支えを行いつつ、ソロや楽器のみのパートでは適度な自己主張を行う。少し調べたら特定のギタリストに依拠しない編成のようで、グッドなフィーリングを共有できている人たちによるコミュニティ感というか、和を作っていくという集合意識が表れているのだろう。

みせざき

 アコースティックでいなたいが、バッファロースプリングフィールドといったバンドとはまた違う雰囲気を感じた。それは音像がふんわりとした曖昧さを含んだものの為、またスライドギターが鋭角に攻めてくる感じによりもたらされている気がする。曲も良い曲が多く、味わい深さは聞くたびに増す音楽であると感じた。

六月

 The Byrdsから始まったであろう、カントリー・ロックが、一つのジャンルとして確立したような感がある。でも、うーん、やっぱり、だめだな……良さが分からない。
 少しだけこのアルバムのレビューから離れてカントリー・ロックという音楽そのものについて考えてみると、日本でいえば、太平洋戦争終戦以降の演歌に近いのではないか、と思う。どちらも、その国の土着の音楽である民謡の要素を、国民と選定された人々の心の中にあるナショナリズム的な情緒を煽るように増幅させ、そしてそれがまるでその国が生まれた時からあった伝統的な音楽であると"捏造"された音楽である、とまで言ってしまうのは少々口が悪すぎるだろうか。だけれども、そうも言いたくなるほどに、この音楽にはノーを突きつけたくなる。

和田醉象

 カントリーがロックに還元された瞬間を見た!だが、カントリー自体聞いたことないので良し悪しがわかんないな。まあでもいいんじゃないでしょうか。

渡田

 カントリー調の曲の中で、そのイメージを崩さずにギターは色々なメロディを使っている印象。
 特にギターソロは引き伸ばされた機械的な音で、カントリーでありながら他ジャンルとの繋がりも感じさせる瞬間がある。

次回予告

次回は、MC5『Kick Out The Jams』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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