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The Band『Music From Big Pink』(1968)

アルバム情報

アーティスト: The Band
リリース日: 1968/7/1
レーベル: Capitol(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は100位でした。

メンバーの感想

The End End

 メロディとリズムと音色の楽しさが全部ある。これをグッド・ミュージックと呼ばずしてどうするのかと言いたくなるほど、充実感が全体を包んだアルバムだ。ところどころに忍ばせてある一筋縄ではいかなそうな不穏な空気も、コントロールされた上で適切に出力されている感じがする。
 あと、何気に今まで気づいてなかったけど、エコーではなくリバーブによる空間の表現が導入されていますね!?いつから!?
 空間系のエフェクトは必ずしもリアリティを増強しない(音の反響をわかりやすく感じるシーンって、日常には少ないでしょ?)けれど、そこには"見立て"としての楽しさがありますよね。

桜子

 歌のメロディが、ホッとする感じで好きです。オケのトラックも地に足ついている感じが好きというか、突飛な事をやってないところが良いなあと思います。あといちいちオルガンの音が好きですね。

湘南ギャル

 バンドっていうと、ついギター・ベース・ドラム、みたいな編成を想像してしまうけど、こういうアルバムを聴くと、バンドってどんな音を出して何をしても良いんだって再確認できる。「Chest Fever」の、キモいホーンの音とボーカルだけで成り立たせてる瞬間とか度胸がすごい。バンドで何やってもいいなんて、いろんなバンドが気付かせてくれることだけど、この名前の人たちがそれを体現してるのはめちゃくちゃイカしてる。

しろみけさん

 本当にこの企画をやっててよかった。こういう作品をよくわかんないまんま飲み込むんじゃなくて、味のするところまでワシワシ噛めることが何よりの喜びだ。ブチブチ口の中で弾ける重さというか、カントリーやゴスペルをポスト化させるこの試みは相当先を行ってないか? 「Chest Fever」では既にハードロックっぽいフレーズが聞こえる。オルガンも鳴ってるし、ほぼディープ・パープルでは?

談合坂

 言葉通りの意味でデジタルな感じが他とは違う何かを生み出しているような気がする。鍵盤は言わずもがな、それ以外の要素も区切りのある塊として存在している。バンドサウンドらしさというものが、それぞれのチャンクがある程度判別できる状態で音が同時に在ることで形成されているのがよく理解できる。ひと塊にまとまってしまわないからこそ良い。
 スネアの音がめちゃくちゃ好きです。

 初めて聴いた時は、正直、平坦な音楽だなと思った。このがなりに込められた魂の爆発も、このオルガンの千年先を見通しているような響きも、まあ気づけなかった。聞き逃していた。それは悪しきことではない。即時的な効き目のある音楽もよいが、気付いたら体に馴染んでいて、気付いたら魂が茹で上がってるような効能の方が今の自分にはありがたい。the bandという、何万人もの子供達を別の道へ招いた"バンド"という言葉を冠しながらも"バンド"という存在の一種の閉鎖性は無く、"楽団"のようなアプローチで曲が作られていて、物凄く風通しが良い。そしてthe bandを聞くたびに北アメリカ大陸の乾いた風と大きな荒野への憧ればかりが募る。いつか行ってみたい。

みせざき

 歌物だけど、泥臭いギターとバンドで一体となって作ってる点に楽しさがある。バンドサウンドとしての面白さがしっかりある。こういう種類のバンド、ロックに新たな面白みを感じるきっかけとなった。
 ブルースを下敷きとしているけど、キーボードから主張したり、音作りに幅があったりと、90年代以降のロックにも通じる親近性を感じるのも新たな発見だった。
 兎に角良いソングライティングがもたらす良い音楽の代表格だと思う。

六月

 明らかにこれまでのカントリーやブルースとは違う、とはいわないまでも、そこから離れたところから突然変異のように出てきている(しいていうのならフォーク・ロックだろうけれど、でも彼らがバック・バンドを務めたBob Dylanの作り出したフォーク・ロックからはこのアルバムまで、だいぶと離れた地平に彼らはたどり着いている)音楽だと思った。なのに、アメリカの空気を纏った音が確かに鳴っていると思える。宇宙人が昔ながらのアメリカ人のふりをしているような感じだ。
 そうしてよく考えてみると、いままでこの企画を進め、様々な音楽を聴いてきた中で、このアルバムで鳴らされている音、いわゆるアメリカン・ロック的なメロディやら音像が、これ以前に全くなかったのに気がついて愕然とする。あんなに長く続いているような(実際50年くらい続いているけれど)ふりをしているのに、実際はここから急に生まれたものなのか? 

和田醉象

 すげー泥臭いわけでもなく、洗練されていて、ロックの文脈の中で輝いている理由がわかる。一度聴けば耳の中はすげープレーヤーたちの戦場と化し、荒波を注いでくる。
 彼らのイメージ通りの曲たちも非常に光を帯びていて、それも無駄に広がらず的確に心の中を照らしてくれる。面白いのが、アンセムになるような歌があり、黙って聴いているだけでは得られない高揚感を与えてくれることだ。
 それに、80sを先取りしたようなナンバーですらアルバムの中で共存していることだ。「Chest Fever」みたいなオルガンロックを1から作り上げてしまったことが興味深く、再生ボタンを何度も押す手を止めないのだ。

渡田

 いきなり自分の背後で音が鳴ったような感覚にさせられた。イヤホンで聴いたけど、ホールで聴いているような感覚。それぞれの音からオルガンが置いてある場所とボーカルがいる場所の間隔がなんとなく目に浮かぶ。
 少し意識しただけで、それぞれの楽器、音のどれか一つに注目することができる。曲の場面場面でお気に入りのパートを見つけることができた。

次回予告

次回は、Big Brother & the Holding Company『Cheap Thrills』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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