見出し画像

Led Zeppelin『Led Zeppelin』(1969)

アルバム情報

アーティスト: Led Zeppelin
リリース日: 1969/1/12
レーベル: Atlantic(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は101位でした。

メンバーの感想

The End End

 いわゆるハードロック的な歪みのサウンドやキメが耳につくけれど、ブルース、ロカビリー、フォーク/カントリーといった様々なルーツや、ビートルズ、ジミヘン、クラプトンら同時代から得たであろう刺激がところ狭しと並べられていて、よくもまあこれだけのことを一枚のレコードに詰め込んで散漫にならないものだなと。
 それから、平行五度が"悪魔を呼ぶ"みたいな理由で禁則とされていたのがよくわかる。周波数比がシンプルだから音色の含む倍音と区別がつきにくく、それによってひとつのまとまりある音に聴こえる……というのが五度を連続させた時の響きの正体らしいのだけど、確かに、そこで突然情報量が減るから耳が否応なしに持っていかれる感じがする。その引力が危険だと思われたのかな。

コーメイ

 "多分レコードで針を落としたら、音出た瞬間名盤と思うだろうな"というアルバムであった。1曲目から、どえらい飛ばしようで、とくにJohn Bonhamの緩急がついたドラムが、アルバムを引き締めていたと思われる。他の要素ももちろん上手いと思うけれども、彼のドラムの攻めるところは攻める、引くところは引くという姿勢が、印象に残った。

桜子

 私はあまり器楽に興味なくて、好きなギタリストとかはあまりいないのだけど、ジミー・ペイジはやっぱり特別だなぁ、調弦による特有の響きをハードロックに持ち込んだ事はすごくカッコいい。その妖艶さって、今では色んな音楽の根幹になっていると思うし。

しろみけさん

 おぉ、ロックで技術のための技術が始まったぞ。これまでにもジミヘンとかザ・フーとかいたけど、これはもっと見せプというか、ひけらかす美学が勃興している。「Good Times Bad Times」の3連バスドラとか、このテクさで笑わせる感じはどうなんだろう。ギターのリフやソロも歌えるポップさというか、一言で言えば"サービス精神"なのだろう。単に楽器が上手いんじゃなくて、上手いプレイのイデアっぽいことをしているみたい。

談合坂

 デビュー・アルバムの一曲目にあのバスドラ聞かされたらそらもうキッズどもヤングども大興奮だったろうなぁと想像する。一応ジミヘンあたりも近い軸にいたかもしれないけど、こんな強烈な即効性の快楽に覆いつくされている音楽が突然現れて大丈夫なのかとハラハラしてしまう。
 爆音で出力しなくてもやかましいサウンドが到来して、ここにまたひとつのシーンが始まろうとしているのだと感じられる。より直接的に私自身の”洋楽ロック”経験への道筋も見えてきた。

 画面いっぱいに斜め上を向いて昇っていく飛行船。これは、男性器の怒張だ。黒黒しく光っておるぞ。「You Shook Me」ではメロトロンのような音を使いながらも、その美しさをかき消すように音が割れる直前の音を出す。デカいし、雄々しい。

みせざき

 Led Zeppelinは私が中学にして本格的にロック音楽に没頭する直接のきっかけとなった、自分にとって重要な意味をもたらしたバンドだった。初めて音楽をアルバムという作品として鑑賞することの意味、曲一つ一つに散りばめられた展開、フレーズの意味を解釈し楽しむというきっかけを気づかせてくれた。多分ツェッペリンが居なかったらもっと平坦でつまらない人生だったんだろう。
 ジミー・ペイジは演奏家としてだけでなく作曲家としても大変偉大、いやむしろそっちの方が主力のミュージシャンだと考えている。ギターというものを、どのように曲に組み込んでいくのか、そこでリフレインというロックの根本的要素を築いてくれた。
 またこの時のテレキャスのジミー・ペイジは本当にギターが上手い。ピッキングのニュアンスの付け方が独特で大好き。
 後のアルバムに比べるとバラエティが多い方ではないが、「Black Mountain Side」など、後の音楽性の幅広さの片鱗を見せる場面が多々ある。

六月

 ジミヘンをある種の極点として、ブルースからロックが突然変異を繰り返しながら進化を続けてきたのなら、その変わりきった姿で祖先の元に帰ってきたような、そんなアルバムだと思った。でも、あんまりロックが商業となり始めた時代の始まりって感じもして、少し微妙な気持ちになる。
 それに何にしても、ドラムがやっぱすごい、名だたるドラマー達の頂点としてよく挙げられるJohn Bonhamの良さが昔はあまりわからなかったのだけれど、これまでの歴史を踏まえると、確かにこれはこれまでにはなかった音というか、リズムだなあって初めて気がついた。ていうかこのドラムがないとこの音楽が成り立たないという感じだ。「Dazed and Confused」が特に好きです。
 あと、大した話ではないが、地味に実際にあった飛行船の爆発事故をジャケにするって結構なことじゃないかと思う。

和田醉象

 俺たちが知るLed Zeppelinは本当に、ある時"知られているそのままの姿"で出現したのだなとつくづく感じる。音楽的成長はこのあともちろんあるけども、基礎的なところはもうカンストしてるし、ボーカルなんかは後期よりこの頃の方が良いと感じるところもある。
 彼らはハードロックバンドとして評価されることが多いと思うけど1stから多彩な音楽性を見せていて、どうにでも転がっていけるメンバーの素養の高さや、少しJimmy Pageの神秘主義的なところも微かに見えている。改めて聞いていて発見があった。もう、近寄りがたいくらいにビンビンだ。

渡田

 ハードロックの始祖だと聞いて、どんなに激しい音楽だろうかと覚悟していたら、良い意味で思っていたものじゃなかった。
 確かにギターはうなりをあげて、ボーカルのシャウトが目立つけれど、思っていたような体育会系のそれじゃない。妖艶さとか神聖さを感じさせるうなりとシャウトだ。
 濃いマジックの線で絵が描かれると身構えたら、情緒ある書道の墨の軌跡が現れたかんじ。緩急があって、太いところと細いところ加減が綺麗で、よろよろにもつれたり、急に力強くなったりする。

次回予告

次回は、Dusty Springfield『Dusty in Memphis』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?