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B.B. King『Live at the Regal』(1965)

アルバム情報

アーティスト: B.B.King
リリース日: 1965(月日不明)
レーベル: ABC-Paramount(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は299位でした。

メンバーの感想

The End End

 エレクトリック・ピアノのようにコードを奏でて、管楽器のように高らかに、そして繊細に歌い上げていて……ホロウボディのギター、歪ませ方、右手のタッチ、そのすべてがこの出音に貢献していて素晴らしい。映像を観なくても、顔で弾いているのが確かに感じられる。
 こんなに"ソウル"たっぷりなのに、過剰に暑苦しく感じないのはなぜなんだろう。メンバー全員の、圧倒的な地肩の強さの余裕というか、我を忘れていない感じがとってもセクシー。

コーメイ

 ギターのがなり立てとのびのびした声が、このアルバムを支えていた。この2つの軸に加えて、要所要所での激しいドラム演奏が、さらに勢いを増す装置として機能していたと思われる。
 しかし、最後の「Help the Poor」にて、減速して、ややおどろおどろしい演奏になった箇所でさらにこのアルバムの幅が広がったのではないか。このようなアルバムであった。

湘南ギャル

 ビートルズで進んだ時間がまた戻ったようだ。これは決して、悪い意味で言ってるのではない。ブルースを、昔流行ってた音楽ではなく今も輝き続けるものにしてくれたのは、間違いなくB.B.Kingをはじめとする先人たちのおかげだ。こんなイカしたもん見せられたら、そりゃブルースやりたくなるよね。
 それにしても、ブルースをやる人にこんな黄色い歓声が上がっているのは、2024年に聴いている私にとっては新鮮だ。そりゃ私は、ブルースできない人間よりブルースができる人間のが遥かに好みだけど。本当は、今のみんなもそうですか?

しろみけさん

 歌の渋さも去ることながら、必殺技みたいなタイミングで出すギターソロが詩情の延長線上で演奏されているのがわかる。この日この場にいたら"次は何やるんだろう?"ってドキドキしっぱなしだろうし、その昂ぶりを突いてソロでブッ刺されたら失神しちゃう。熟れた桃を搾り取るみたいに、甘くて丸い音をグシャって潰して弾くのはズルいわね。

談合坂

 ギターの音が良すぎる。流石に。プレイヤーによる鳴りのコントロールってどういう理屈があるのかよく理解できていないけど、私がルシールを手に入れたとしてこの音を出すことができないということだけはよくわかる。他のどのパートにも担当することのできない、エレクトリックギターにしか出せない音が最大限の輝きを放っていて感動。歌いながらは演奏をしないスタイルのおかげでヴォーカルのサウンドもギターのサウンドもさらに際立っていて、こんなライブだったらいつまでも飽きることなく聞いていられる気がする。

 観客の叫びでキングの一挙手一投足がわかる。強烈な存在感。ギターを弾いてる時の噛み締めるような顔が浮かぶ。音源だけで顔で弾くギタリストなんだろうとわかる。

みせざき

 今の世間での知名度は十分すぎると思うが、それでも尚過小評価されているとつくづく感じてしまうようなギタリスト。
 BBキングの凄いところはスケールを弾いているのではなく、トライアドを基調とした5音のみで的確且つ超人的なアドリブを表現する点だ。また本作を聴けば分かるが、バッキングはほぼ一切せず、曲の数小節を明確に空けて完璧なソロを決め込む。これは全ギタリストが絶対に模倣すべきスタイルであると思う。
 時代が進むにつれてギターは弾きまくる、音を埋め込むことに精力を尽くすギタリストが増えてくるが、一番重要なのは弾かないこと、音と音との間であると思う。それを一番高次元で実現しているのがBBキングであり本作であると思う。
 あとこれは語り尽くされているが、本当に歌が上手い。シンガーとしてのBBキングはもっと過小評価されている。「Help the poor」のような甘い囁きもできるし、「How blue can you get」のような会場を総なめするシャウトもできる。
 これからも、ジャンルレスに音楽リスナーの下敷きとしてずっと聴かれ続けて欲しい。

六月

 弾きながら高らかに歌うなんて、なんてターギがまいうー(ギターが上手い)なんだ。正直ギターボーカルでここまで両方が上手な人を聞いたことがなかったので、それだけでもすごいと思ったのだけれど、時々ギターでキャーキャー歓声が上がる瞬間があって、そんなことなんてあるのかと思った。男臭いウォー!!みたいな声は聞いたことがあるけれど、女性の嬌声のようなものがJames Brownの雄叫びでなく、しぶいブルースギターサウンドに対して発されることがあるのだなあと感心した。でもそれ以外、特に音楽性に関しては特に新しい発見がなくて、R&Bやなーくらいにしか思わなかった。もっと何度も聞いてみればその良い味に気がつくのかもしれない。

和田醉象

 ギターの名手として名を挙げられることの多い人だけど歌がすごかった。ギターと歌が一体になっている。原初音楽って口語伝承的も役割があったはずで、私の中でも歌は演奏に紐づくものという認識だけど、この人は一人で完璧に行っている。どっちかが強いとかじゃなく、セットなんだ。
 無論演奏の方が主体のアルバムだけど、ギターが歌っているようにもできている。流れる川を見ているような、スルスルとした淀みない演奏だった。演奏のうまいアーティストや、ブルースやフォークの名手は数あれど、これまで聞いてきた中で演奏と歌が密接になっている、境界が曖昧な人だと思った。(これを64年にやっているのはすごい。というか64年の演奏なのに録音すごい綺麗。)

渡田

 ブルースにまだ慣れていないので、特有のリズムルールに翻弄されないか不安だったけれど、聴いてみると意外にも耳に馴染みやすかった。
 確かに、音階を規則よく奏でるピアノや、弦を跳ねさせているような音のベースや、管楽器の音は初めて聴くものだったが、それらの間にあるギターのフレーズは"ロック"としても聴くことができ、それが親しみやすさを感じさせたのだと思う。

次回予告

次回は、Rolling Stones『Aftermath』を扱います。

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