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Robert Johnson『King of Delta Blues Singers』(1961)

アルバム情報

アーティスト: Robert Johnson
リリース日: 1961(月日不明)
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は374位でした。

メンバーの感想

The End End

 ノイズまみれのモノラル録音なのに、なんだか不思議と古臭さを感じない。とても垢抜けて聴こえる。コードやオブリの、どこか一筋縄ではいかない感じ……もしかして、これがブルー・ノートというやつですか?
 歌いながらギターを弾くという行為は、その人の身体が持つリズムを存分に感じられてとても好きだ。一緒に走って一緒にモタる感じ、なんと言おうか、生き物が出す音だなと思う。めっちゃ上手いのが随所ににじみ出ているところも含めて、真似したくなる。この人のリズムになってみたい。

コーメイ

 ギター演奏の幅が格段に広いと思えた。というもの、エルヴィス時代におけるポップスのそれよりもさまざまな音を繰り出していたからだ。ロバート・ジョンソンが亡くなったのは、1938年である。しかし、先述したように、約20年後の演奏よりも緩急を付けた奏法を自家薬籠中としていたことに驚いた。
 のみならず、歌詞も自作で担当していた点も、時代を先取りしていたのではないか。あくまでイメージであるけれども、お付きの作詞家がいて、その人が歌手に歌詞提供する印象がある。が、ロバート・ジョンソンは、全曲自分で歌詞を捻り出していた。このやり方は、ビートルズをはじめとして、自分たちで歌詞を書いて、聴き手に届ける魁であったのではないかとの感想も抱いた。
 そのようなアルバムであった。

桜子

 ボトルネック奏法が大好きなのだけど、60年代のそれを聴いた事が無かったから、これを機会に聴けて嬉しいです。指板を縦横無尽に駆け回る音はどこか明るくコミカルな魅力がある!ビヨビヨする音が面白い。これからもこのアルバム聴くー!めっちゃ気に入った!

俊介

  "悪魔に魂を売り渡した引き換えに、ギターのテクニックを手に入れた男"伝説を知った上で聴いてもよくわからない。
 ドサ回りが活動の大半を占めてたロバート・ジョンソンに対する当時の評価は恐らく彼の演奏を生で聴いた上でのものだと考えると、スピーカーから流れる薄い音の前で、腕を組みつつそこにあったであろう当時その場の重厚感を想像で補完していくことしかできない。
 何周かしてこの音楽が部屋全体のBGMになり始めたとき、なんとなくだけどこの音楽がもつ心地良さが分かった。

湘南ギャル

 空白が多すぎて、イヤホンで聴いているとカフェのBGMが突き破ってきてしまう。そんなにも音数が少ないのに、物足りない印象はない。そしてグルーヴが途切れることもない。ギターからポコポコいろんな音出てきて飽きないし。本当に私が知っているあのアコギと同じ楽器?そんで、本当に歌いながら弾いてる?この渋い声は自分と同世代?何ひとつ信じられない。

しろみけさん

 全然ポップじゃない。というか、もうこの際、どの曲がいいとかもない。何をやっても全部一緒に聞こえるというか、何を歌っても一つのことにしか聞こえないのが、この人の美点なのだろう。私は寂しい。別にそれしかないから、それ以外は歌わない。寂しくなったら聴くが、今は寂しくないので、私は今は聴かない。

談合坂

 クリームの「Crossroads」からクラプトンに憧れ、映画『クロスロード』からスティーヴ・ヴァイを知った人間なので、間接的にではあるけどロバート・ジョンソンは私のギター趣味に多大なる影響を与えた存在。だからということもないだろうけど、このギター、ポンと前に出てくるかっこいいアコギの音が本当に好き。録音として世に出てきてくれたことがありがたい。

 録音のせいか、ノイズが耳に入る音の多くを占めている。もやがかかったかのように歌とギターが凄く遠くで鳴っている。おかげで、この簡素だけどリズミカルな歌が神の遊びのようにも達人の歩き姿のようにも見える。「20世紀少年」という漫画で主人公のケンジはロバート・ジョンソンのことを"悪魔に魂を売り、ブルースを手に入れた男"と形容している。10年越しくらいに彼の音楽を聴く機会が生まれて良かったです。

みせざき

 とにかく生音として聞こえてくる音圧が半端ない。単に技術が高いだけでなく、その音圧に魂が込められていると感じる。アンプもエフェクターも無い世界にいるギタリストは、実は現代のギタリストと比べ物にならない表現力を兼ね備えられる環境にいたのだろう。これらの曲がこのあとスタンダードナンバーとしてあらゆるアーティストに上書きされていくが、この作品と共にオンリーワンとしてロバート・ジョンソンの伝説は語り継がれていくのだろう。

六月

 ハウリン・ウルフによって開眼(開耳?)されたブルースですが、それを持ってしてもすごく聞きづらい。高音の部分が必ずビビって音割れする音源を聴けと言われましても。だから、ちゃんとした録音芸術というよりはフィールドレコーディングの類に近い、その場に起きた現象として捉える方がその凄みがわかりやすいような気がする。
 悪魔から魂と引き換えにギターの技術を手に入れたそうです。怖いですね。なんでそんなことをするんでしょう、絶対長生きした方がいいでしょ。そんな逸話を抜きにしても、なんかブードゥーとかシャーマンとかみたいな、何が人智を超えたようなものが彼の紡ぐ音の向こうには見える。気がする。

和田醉象

 ロバート・ジョンソンのCDが家にあって、長いこと知っていて、何なら年に一度挑むようにこれまで取り組んできた。これまで聴いてきて、どこがすごいのか未だにわからない。が、今回新たにギタリスト的な観点で見ると、手の動かし方がスムーズすぎる気がする。
 こういうブルースを弾きながら歌う人って、ちょっとどもりがあったり、感情の詰まりがあってペースが遅くなったり、早くなったり、他にも多少人柄なんかも入る余地があると思う。だけどこの人はスムーズすぎる。無駄な詰まりとかがなくスルッと聴ける。それが他の人と比べて評価される一因になるのではないだろうか、と思った。

渡田

 全体を通した印象は、古典アメリカの音楽といった感じなのだけれど、一つ一つのフレーズ、音に注目すると、それだけでは説明しきれない特徴的な音が入っていた。注意深く聴いていると、小気味よく響いていく音とか、ゆっくりなびいて消えていく音とか、綺麗に繊細にギターを弾けるからこそ入れられる印象的なフレーズがこまめにたくさん感じられ、ここがこのアルバムの他にない個性に思えた。
 こうした技術に基づいた個性的な音、実験的な音で、印象的なフレーズを産み出している特徴は、ビートルズやジミ•ヘンドリックスにも繋がる特徴だと思う。

次回予告

次回は、Ray Charles『Modern Sounds in Country and Western Music』を扱います。

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