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Rolling Stones『Beggars Banquet』(1968)

アルバム情報

アーティスト: Rolling Stones
リリース日: 1968/12/6
レーベル: Decca(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は185位でした。

メンバーの感想

The End End

 衒いがないというか、自分たちの憧れや好きなものにとにかく真っ直ぐな人たちなんだろうなと思った。『Aftermath』の時にも感じたけれど、あるメッセージを伝えようとか、より進歩した表現をしようとか、そんなことよりも、とにかく沢山の"あの人みたいにやりたい!"を追求し続けるアティテュードがあると思う。それが叶っている部分と、至っていない部分と、漏れ出てしまっている当人の性質とのバランスが、いつも楽しい。

コーメイ

 牧歌的な音楽が、アルバム全体を通じて確認された。サイケのようなおどろおどろしさや、ハードロックのごつさもなく、ただ時間が、ゆったりと経過していく様子が、ありありと耳にした。その点が、今回のアルバムを聴いた収穫であった。

桜子

 どこの枠にも留まろうとしていないところに壮大さを感じる。でも一番好きなところは、シンプルで、キャッチーな一面も見える瞬間かなぁ〜。口で歌いたくなるようなギターのリフとか、歌のメロディラインがたくさんあるのが良い。

しろみけさん

 バンドとしての成長度合いやイノベーション、という点においてビートルズは他の追随を許さない成果を上げてきた。しかし、音楽の未来とは別の、人間の土臭くて実直な面に目を向け、それを中毒的なポップに仕上げてきた腕利きの集団こそローリング・ストーンズなのだろう。このアルバムはその性格がその性格が最もよく表れている。悪魔崇拝的なオープニングの「Sympathy for the Devil」やその後のカントリー/ブルース調の「No Expectations」と「Dear Doctor」、あえてガシャガシャな音にしてデルタ感を強調した「Parachute Woman」、そして雄大さと荒さを絶妙の塩梅でミックスさせた「Street Fighting Man」。ジャケットも含め、ロックバンドとして最高の名刺だ。マジで単なる不良かと思ってたのに……。

談合坂

 決していかにもロックという感じではないし、素材もいたってプレーンなものばかりだけど、若者のロックンロールというエネルギーが構築されている。アルバムのなかでは「Salt of the Earth」のバランス感覚が好き。ドコドコと分け入ってくるドラムが一気に空気を引き締めている。アプローチが違っても最終的な色がしっかり揃っているのはデザイン・プロデュースの巧さなのかなと。

エヴァーグリーン。ロックの雑食性と拙さから来る泥臭さを、その勇ましい出立ちにより美しさとして確立させている。「Sympathy For The Devil」、小太鼓やマラカスを用いて作り上げたリズムの上をピアノが小気味よく跳ね、若者たちが肩を組んでフッフー!と歌い、踊る。青い草の上で風を感じながらその一瞬の生を全うする。一瞬の儚さと、その永遠性が詰まっている。いつしか彼らは肩で風を切りながら足を前に踏み出す。お前たちがStreet Fighting Manや!

みせざき

 私の一番か二番目に大好きなストーンズのアルバム。前作の『Their Satanic Majesties Request』も好きな曲は結構あるが、その後ストーンズは起死回生の一打となる「Jumpin' Jack Flash」を放った。そして本作である。完璧な蘇りだ。
 「悪魔を憐れむ歌」とかはもう説明不要の名曲だが、その余韻を残しながら嘆きと共に切り込んでいく「No Expectations」が至高だ。もう100回以上は聴いている。大好きな曲だ。
 その後も一見すると地味な曲が多いが、シンプルながらも味と成熟さと抜群のソングライディングでずっと魅了させてくれる。最後の「地の塩」もほんとにいい曲だ。
 王道というのは、今だと逆にネガティブに捉えられたり、標的になったりする気がする。でもこうした素晴らしい曲とロックと疾走感で世界を魅了させるバンドというのは本当にカッコいいと改めて私は思う。そのイズムをこの後AerosmithやACDCやGuns n rosesといった素晴らしいバンドが引き継いでいくのを想像すると更にワクワクするのだ。

六月

 へー、ブルースのカバーしてたのに、暫く見ないうちにこんなことになってたのね、このバンド。という冗談?はさておき、一応迷走していたと言われるサイケデリックにかぶれてた時代も聴いてみたけど、その時期の音から伝わってくる、"みんながやってるからやってみてるけど、俺ってこんなんしたいんだっけ……?"感に比べると、はるかに確信や自信に溢れた音が鳴らされていて、それだけでもう万事オッケーに思えてしまう。
 みんなが、少なくとも僕自身が思う、"いわゆる"ブルースのパブリック・イメージその通りの音が鳴っていると、これまでこの企画で聴いてきた、彼らが参照した1950年代くらいまでの"本物の"ブルースより感じてしまった。音楽に限らずあらゆる表現におけるあるジャンルの中で「いわゆる」感を持った、そのジャンルの定義となりえるような作品は、そのジャンルが多くの受け手に膾炙したのちに生まれるものであるが(逆にそのジャンルが生まれた瞬間の作品にはあまり「いわゆる」感はそこまで感じられない)、Rolling Stonesはこの作品において"いわゆる"ブルースをそしてロックを、完璧に捉え、そして定義してしまった。そして水槽に入れられた魚のように、それはとらえてしまった途端に野生を失い、決まりきった餌を食べ続けてまるまると肥えてゆきながら、徐々に衰えて死を迎えるのを待つだけだ。ロックという音楽に生命維持装置が付けられた瞬間と言えるアルバムかもなあと思った。

和田醉象

色々模索した結果、たどり着いたのがここだというのならRolling Stonesは本物のロックンロールバンドだ、と言わざるを得ない。
彼らが好みそうなロックンロールレパートリーに包まれて、熱量が飛び出してくる。Beatlesは変容を願ったが、彼らはただひたすらに一点を突き詰めることを願った。それで何枚も傑作を作れていると言うならば彼らには才能と、それを発揮するための途方もない時間があって、見事に結実されたのだ。聞いていて気持ちがいい。
サイケやヒッピームーブメントから抜け出し、独自の道を走り始めたが、一方で少し危うさも感じる。今にも爆発しちまいそうな、砕け散りそうな硝子の玉のように、安全な位置で眺めているしかない近寄りがたさを少し感じる。"ハイ"になっちゃってるというか。少し怖い。

渡田

 民族音楽じみた乾いた太鼓の向こうからロックの音が近づいてくる始まり方に引き込まれた。
 正直個人的には得意じゃないジャンルの曲もあったけれど(アコースティックギターとのんびりしたハーモニカによるカントリー感じる曲とか)どの曲も歌詞とフレーズが淡々としていて、感情に直接的に訴えてくる感じがなく聴きやすかった。

次回予告

次回は、Led Zeppelin『Led Zeppelin』を扱います。

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