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Jimi Hendrix Experience『Axis: Bold as Love』(1967)

アルバム情報

アーティスト: Jimi Hendrix Experience
リリース日: 1967/12/1
レーベル: Track(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は92位でした。

メンバーの感想

The End End

 単純にプロダクションとして質が高すぎる。タムの迫力やギターの録音の生っぽさ(自分でアンプを使ってギターを弾いている時とのギャップの無さ)、ここまでレビューしてきた作品たちと比べて明らかに抜きん出ている。
 楽曲については、セッションをベースにしているだろうことは変わらないけれど、より考えて作られたであろう構成やフレーズの比率が上がっているように感じた。
 ビートルズやはっぴいえんどにどうしても付き纏う昔っぽさ(これ自体が作品の価値を損なうものでは全くないが)が全くないのも不思議だ。"タイムレス"と形容するのに一切の躊躇が必要ない。

コーメイ

 攻撃的だけれども、土臭さ(もちろん良い意味で)が組み合わさっていて、聴き手を飽きさせないアルバムであった。ギターで攻勢をかければ、ドラムで援護射撃し、ボーカルで、新たな層を加えている。つまり、何層もの音で聴き手をぐっぐっと引き付けている。これが、一番印象に残った。

桜子

 あまり計算して無さそうで、身体から出てくるそのままを表現してそうなところが好きと思った!エフェクトやパンにもそれを感じて好きだった。少しの荒っぽさが、音が持つ激しさに良いシナジーをうみだしている作品。

湘南ギャル

 なんこれ。すご。こんなん経験だわな。上手く言えないけど、音楽版VRみたいな。聴覚以外も持っていかれる。侵略されてる。音が他の惑星からやって来てる。そんなんPファンクのロック版じゃん。順序逆だけど。(Apple Musicの“ジミ・ヘンドリックスに影響を受けたサウンド”プレイリストを覗きにいったらしっかりファンカがいた。そして、出てくるアーティストの幅がおもしろかった。スライとマイブラがいっしょくたになってるなんて、オタクが手癖で作ったプレイリストじゃん。)
 ジミヘンって3枚しかアルバム出してないのかよ。マジで最悪。悲しいことばっか。

しろみけさん

 「お、ブルース」とか「あ、カントリー」みたいな発見があった前作から、カテゴライズ不能なフレーズがグッと増加した。聴感の気持ちよさを先行させて、そこに実直なフレーズを最短距離で出しちゃうような荒技。菊地成孔が「ジミヘンはロックというよりジミヘン」と評していたのも頷ける、これなんて呼ぼうかね?

談合坂

 音が良すぎる。音源に組み込まれるそもそもの情報が多いのはもちろんなのだけど、そういうハイファイ的な質の意味だけではなく、快をもたらすように録音物をデザインする力がすごい。どうしたらこんなに音の良さに説得力を持たせることができるんだろうか。という具合に、今現在活躍しているエレクトロニックミュージックのプロデューサーたちに向けるのと同じ気持ちが湧いてくる。
 もちろんギター音楽としての良さが大きいのだけど、そこだけではない。高性能プロセッサの力を借りて膨大な可能性を広げながら音のデザインを追求し続ける時代にこそ、この作品は一層の輝きを放っているように思える。

 当時の人の反応を、後追いの我々は想像するしか無い。いくら今の耳で"ギター上手いな〜"と思っても、当時のリスナーたちのジミヘンから受けた衝撃は体感できない。ワウを長時間踏み続けることとか、音がブチブチのギターソロとか、今聴くと当たり前だけど、かつては革命だったはずだ。そんで歌が上手い、これは衝撃的とかではなく単純に歌が上手い。

みせざき

 『Are You Experienced?』と『Electric Ladyland』の間にあるからこそ、その二作よりも伸び伸びしている印象がある。伸び伸びしているからこそ、当たり前のようにかっこいい低音弦リフが炸裂している。「Spanish Castle Magik」、この曲を最初に聴いたときはすごい嬉しかった。「If 6 Was 9」もかっこいい。
 まさにストラト一本でグルーヴ感を全て表現している。その音はかすかにしか歪んでおらず、手先とタッチングでの表現力が存分に発揮されている。
 ものすごく聴いた作品だからこそ、改めて感想を探すことが難しいが、やはりソングライティングの面も本作は存分に発揮されているのではないか?「Castle Made of Sand」は言わずと知れた名曲だが、最後の「Bold as Love」も大好きだ。

六月

 サウンドとしては、怨念渦巻くような1stとは打って変わって歌ものというか商業的な音楽として圧倒的に聴きやすくなってはいるものの、ジャム・セッションで作ったんだろうなーっていう曲が続いて、カッコいいけど、依然としてつかみどころがないような気がするんだけれど、あるとき寝つきが良くなる薬を飲んでから睡眠用BGMとして聞いてみると、そのまどろむ感覚にピッタリになった。

和田醉象

 ジャケの印象に囚われ過ぎかもしれないけど、前作よりも、何もかもバリエーションが広くなったと思う。手を変え品を変え的な引き出しの多さがある。
 さらによりリズムが際立っていて楽しい。止め跳ね払いがよくできてて楽しい。「Little Miss Lover」なんかOasisの曲でドラムがサンプリングされているくらいである。ギターだけじゃなくて全部が粒ぞろい。どこのパートも力を持っていて、その均衡を楽しむのも乙である。

渡田

 初めのトラックのラジオアナウンスを聴いて、邦楽編で聴いたCorneliusを思い出した。
 ギターフレーズの展開が激しく、予め決められたもののように思えない。また、複雑で伸びのいいギターフレーズが続いているうちに曲がフェードアウトしてしまうことが多かった。最初は惜しく感じたけれどこれでいいのだと思う。続けようとするときっといくらでも続いてしまうと思うから。

次回予告

次回は、Beach Boys『Wild Honey』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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