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John Coltrane『Giant Steps』(1960)

アルバム情報

アーティスト: John Coltrane
リリース日: 1960/2(日付不明)
レーベル: Atlantic(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は232位でした。

メンバーの感想

The End End

 正直に言えば、ジャズの"お高くとまってる"イメージのお手本みたいなアルバムだな、と思ってしまった。現在でもこういう音はそこかしこで鳴らされている気がする。
 2000年代以降のエレクトロニック・ミュージックの類をしばらく聴いてきた後にエイフェックス・ツインに満を持して手を伸ばしてみたら肩透かしをくらった時のような気持ち。これが"新しい"だった時代に真っ直ぐ聴いてみたかった。

コーメイ

 ペース配分が自分好みであった。というもの、速さが感じられる6曲とゆったり出来る1曲であったからだ。1曲目のGiant Stepsから、ドラムが4百メートル走のペースのように、曲間を走り抜けているとき、サックスが自分のペースで別のルートを走っている。この2方向のコントラストが、私には、個々の頑張っている様子に映った。また、コントラバスとドラムのみになる箇所において、前者が、1歩ではなく、半歩ずれると感じた。これも予定調和ではなく、予測しがたい動きを予測する面白さがあり、飽きずに聴ける。さらに、Naimaにて、間延びせず、ゆったりとしたテンポでしっかり休憩が取れ、その後、万全の状態で、最後の1曲に向かって行けた。そのようなアルバムであった。

桜子

 色々リサーチするまで、コルトーレン・チェンジと呼ばれている、コード進行の技法に全く気がつけなかった。この時代にそんな発明をしつつセッションしているなんてすごいよ〜死ぬほど考えながら練習したんだろうな〜

俊介

 サックスの引き出しが多すぎる。全部アドリブなのに全部メロディアス。「Countdown」みたいなハイテンポから「Naima」みたいなスロウまで全部乗りこなしてるの、今までのジャズとちょっとちがう。
 んでもってビシビシしてて丁寧なかんじ。マイルスとかとはまた違う雰囲気で良きでした。

湘南ギャル

 指が素早く動いてすごいな〜〜。それ以上の感想が浮かばん。プレイヤー気質なアルバムというか、誰が演奏してるかが一番重要になってくるアルバムはなかなか肌に合わない。ジョン・コルトレーンともあろう人間が、プレイヤー気質じゃない作品を出す必要はまあないんだろうけど。

しろみけさん

 もたったりするようなルーズさが廃され、バンド全体がストイックに運動している様子が伺える。その中でもコルトレーンだけは馬力が違うというか、フィジカルモンスターが体躯を生かして広々と音を跳ね上げているよう。「Mr. P.C.」の大喜利千本ノックみたいなドラムソロなど、本当にストイックで研ぎ澄まされた演奏であるように感じた。これだったら和食屋のBGMよりもJBLのスピーカーの前で腕組んで聞いてみたいかも。

談合坂

 これはあまり良い表現ではないような気もするけど、圧倒的に洗練されているように感じる。優れた設計と高度な工作技術によって生み出される精度の高い工業製品と似ている。表現力とか技術とかのひとことで済ませてしまうのはもったいなくて、どこまでも細かく見ていけそう。
 音ゲーにしてプレイしたらすごい勉強になって楽しいかもしれない。

 “スウィング”してる……これが“スウィング”……?おれが今まで聴いてきたスウィングは“スウィング”じゃないのか……?なんだろう、物凄く前のめりに体がリズムを取る!心地の良さと身体性が同時に存在している。その上で自由に弾きまくるジョンコルトレーン、そしてやっぱりキメで合わせてくるシンバル……。“スウィング”って短く言うと“シング”になるわけですが、この演奏はまさに歌っているような、楽器が完全に身体の一部になっている人たちによるものです。

みせざき

 とにかく迅速に進んでいくバックバンドに、それを追従するように刻むサックスが良いバランスでした。通勤中によく鑑賞しましたが、あまりに展開とスピードが激しい音楽だった為、消費に難しさを覚える音楽でした。ただ随所に出てくるメロウなフレーズが好みで、聴くうちにもっと親近感が湧いてくる作品にも思えました。

六月

 「速い!マイルス・デイヴィスよりずっと速い!」と思った。すげえバカな感想だけど。ギターでもなんでも、『速弾き』ってなんでか凄く笑っちゃうんですよね。
 あるアーティストを初めて聴く時に、最後のアルバムをまず聴くという性癖がわけもなく自分の中にはあって、コルトレーンの場合それは『The Olatunji Concert: The Last Live Recording』なる、彼の死の三か月前に録音されたライブ・アルバムである。で、これがすっごい五月蝿い。なんかファズでもかけてるのってくらいにざらざらしたサクソフォンの音が一時間続いて、中学生の頃に聴いて何が何だかわからなかった記憶がある(子どもの象がずっと泣いてるみたいだと思った)。その記憶があるから、このアルバムを聴いた時に、こんなにしっかりした演奏をする人なんだ、と変に感心してしまった。思ったよりちゃんとした、イメージ通りのジャズというか。『Giant Steps』を聞いてみると、こんなに巧いジャズをする人が、なぜあんな気狂いじみた演奏をするようになったのかがわからない。ただ、今でも耳に残ってるのはその仔象に似た音だけれど。

和田醉象

 楽器の役割が分かりやすいアルバムだった。
 Rockはスネアドラムとバスドラムが大きいが、Jazzは金物が大きいという言説を目にしたのでそれに着目して聞いてみた。なるほど、聞いてみるとほとんどリズムの主体という軸、中心を担っているのはドラムではなくベースであり、金物はベースの間を埋めているような印象を受ける。スネアやバスドラムはあんまり聞こえない。
 むしろRockでバスドラムが担っていた役割がベースに与えられているような感触がする。音程や音価のあるバスドラムといえば分かりやすいか。
 聴いた音源だと右側にリズム隊がまとめられてるが、以上のような役割で音を分割しているのだとすると聴きやすさにも納得がいく。役割に集中することで楽器ごとが出張ってきているタイミングが分かりやすいし、そこに対して息を潜めて他の楽器が何をやっているのか注目して聴いてみることができる。会議の議事録や調書を取っている気分である。
 次は出張らないサックスを聴いてみたい。

渡田

 激しく展開し曲の印象を決定づけるリードの音と、物静かで繊細に刻まれるリズムの音との対比に、一曲一曲聴くたびに引き込まれる。
 特に、控えめな響きで細かく刻まれるドラムと、リズミカルに階段を降りるようなベースのテンポが好き。激しい展開はないけれど、淡々とした曲調の中に控えめな調子の変化が含まれているのを発見するのが面白い。

次回予告

次回は、Etta James『At Last!』を扱います。

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