![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/105163594/rectangle_large_type_2_eb66309bb1c59f3f7cf2ac523000f734.jpeg?width=800)
フリクション『軋轢』(1980)
アルバム情報
アーティスト: フリクション
リリース日: 1980/4/25
レーベル: パス・レコード(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は24位でした。
メンバーの感想
The End End
タイトルからして連想したけど、ナンバガってホントにめちゃくちゃこれなんだ!!ギャンギャンのギター、ルードかつ直線的なベース、アブストラクトなファズギター…ひたすらにヒリヒリしてる。最高。歌詞の言葉遣いも、歌い方も、これは確実に向井秀徳のリファレンスのひとつじゃないですか。“軋轢”もそうだけど、“ジャパニーズ・スタイル”とかさ。
ハタチとかの頃、Base Ball BearからXTCへと聴き繋げた時もそうだったけど、自分にとっての思春期の音の出どころに出会うとめちゃくちゃ興奮しませんか?私はします。
桜子
すみませんいきなり音楽の話じゃ無いんですけど、ジャケットカッコ良すぎますね。
やっぱり名盤と呼ばれるものはジャケットが(も)印象的。ジャケットにも言える事ですが、シンプルなものにしか作れないカッコ良さってあります。
湘南ギャル
カッケーー!メロメロになっちまう。楽器隊は人を殺すつもりの音をずっと出していて、一貫性がある。こんな切羽詰まった音、社会に鬱憤がない限り出せない。自分が鬱憤まみれサイドの人間なので、わかります。(座談会でヤマタツの話が出たけど、彼の陽キャ感は生活への不満なんてまるで一つも無さそうに見えるところからきてるのかもしれない)
そんな楽器隊に対し、ボーカルからは曲によって異なった印象を感じる。楽器隊と一緒に殺気立ってる時もあれば、次の曲では踊ってるみたいにゆらゆらしている。寝転がりながら歌ってるのが想像できるような曲もある。このいろんな味付けのおかげか、単に好みだっただけなのかはわからないけど、何回も聴いてしまう。この企画で扱う同年代のアルバムに比べると出てくる音の種類は圧倒的に少ないはずだし、音の種類が少ないとアルバムの曲が全部同じに聞こえることもあるけど、すべての曲が違う魅力をまとっていた。
しろみけさん
薄い。「オートマチック・フラ」のドラムの軽さだったり、エレキギターがずっと同じコードを鳴らしているだけの「I CAN FEEL」だったり、『No New York』らしきものがここで明確に輸入されたのがわかる。サックスが入った「OUT」なんて、ほぼSquidの1stでは。
ただそれよりも、個人的にはその軽薄な歌詞に惹かれた。この場合の「軽薄」とは単なる罵倒語ではなく、「こういうなビートに合流するならこういう歌詞がいいよね」といった具合に、作品全体に合わせたシニカルなパフォーマンスとしての重心の無さ、ということだ。発音される言葉の意味自体において、軽いドラムや冗長なギターと同じ地平の薄っぺらさを獲得している。
談合坂
ただ開放弦を鳴らし続けるとか、同じリズムを刻み続けるとか、単純だからこそそのストイックさみたいなものが差し迫ってくる。聴き手である自分も息遣いが荒くなって体温がじわじわと上がっていくのを知覚させられる。誉め言葉には到底聞こえないかもしれないのですが、「風邪ひいたときに見る夢」的な良さがあるなと思いました。
葱
録音の関係か勢いやダイナミズムが結果的に削がれていて、初期のゆらゆら帝国みたいな脱力パンクとして聴けてしまう。「踊り」に対する感覚も新鮮で、「CYCLE DANCE」におけるタムを用いた和太鼓のようなリズムの組み立て方はギターのポストパンクのような鋭いフレーズと組み合わさりここまでの邦楽史ではあまり聴いたことがない。というかラストトラックの「OUT」で顕著だけれど、最早Gang of Four、果てにはSquidとかとも並べることが出来そうなポストパンクなのでは。
みせざき
いや無茶苦茶にかっこいいです、これは。この企画始まってからの一番のフェイバリットかもしれないです。ポストパンクとパンクの間にあるようなサウンドにとれるような、アヴァンギャルドさがあるが、ドラムがとても軽快なのでめちゃくちゃ気持ち良いです。ボーカルもPilではなくピストルズのジョンライドンにどちらかというと近いような、豪快に吐き捨てるような感じの、特に語尾の残し方がカッコよかった。これからも是非聴き込んでいきたい。
和田はるくに
これまで聞いてきたものは割りと「足し算」思考な気がしてるんだが、これに関しては「引き算」ないし「余分なものが最初から入ってません。結果骨格見え見えです」的なソリッドさ。
全部の楽器に気を使って聞けるというか、どういうふうにできているのかが分かるのに、近寄りがたさがあって、それでもお近づきになりたい。でも突き放してくる。追っては逃げられる的な楽しみ方を自分でしている。
ニューヨークのノーウェーブ界隈直結の音像が突然変異的に歴史の系譜に身を連ねているので異質感がありつつ、日本語で歌っている、自分がほしいものが全部入っていてリピートをやめられない!!!
渡田
一見してみると雑で軽いパンクロックなのだけれど、よく聴いてみると意外と丁寧な一面が見られた。
どのパートもフレーズがシンプルで、出ている音の輪郭がはっきりしていて、間伸びする音が少ないからだと思う。フレーズはどれも短くて複雑なものはないのだけれど、気まぐれで音程を変えている感じがしない。そういったところも丁寧な印象を与える一因だと思う。
同じようなフレーズでも最後の音が上がったり下がったり、意図的に締まりのない音を出して演出すバンドも多いパンクバンドとは根本的に異なっているような気がした。
ただ、最初に抱いた「雑」という印象は間違いかもしれないが、「軽い」という印象は確かなものだと思う。
次回予告
次回は、プラスチックス『ウェルカム・プラスチックス』を扱います。
#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー
#フリクション
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?